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06 フルルの仲間

「そういえば、さっきの店はそれなりに行くの?」

 これまでの旅路を話しながら、複雑な道を迷わず歩いて行くフルルの横に並んで話しかける。

「んー、たまにってとこかな。ああやって何人か呼び込みに積極的な人いてさ、あの人達はこの町でも結構有名で、私も来てすぐに一通り話しかけられて、大体顔覚えちゃった」

「知ってる店だと何となく入りやすくなるよね」

「スイさんは私の時はたまたま青の大樹側の入り口で呼び込みしてて、最後の大樹を訪れた私に一番最初に話しかけてきた人だから結構印象に残ってたんだ。あの人の話が私がここに留まる一番のきっかけだったかもしれない」

「憧れなの?」

「んー、ちょっと違うかな。影響を受けたって感じ」

 言葉に迷いながらも、フルルはまっすぐ前を向いているようだった。

「そういえば、他の仲間はどうしたの?」

「ああ、別れちゃった」

「え!?」

 衝撃的な発言に三人の声が被る。言葉が足りなかったことに気付いたフルルは目の前で手を振って言葉を付け足す。

「あ、そんな心配するような理由じゃないの! でも、私はもう魔物を倒したりはしないから」

 一度言葉を切ると、フルルは街を見渡す。

「この町を見たでしょ? 昔からある赤の大樹とかと違って、紫の大樹とか外側の大樹では戦闘以外の物が盛んなの。歌や絵なんかは昔は中心にある世界樹の方が盛んだったみたいだけど、今ではこっちの方がずっとたくさん作られてるのよ」

「ああ、確かに」

 いつか聞いた話によると、それぞれの大樹の人口差はそれほど大きくはないらしい。しかし、この街の人通りは赤の大樹を大きく上回る。人通り以外にも中に人がいる様子のある家や店が多く、これはそのままダンジョンなどへ行く人の少なさを表している。

「たまに他の大樹の人に護衛を頼んで景色を見に行ったりする事はあるけど、基本外への用事は他人任せで自分で戦う事はあまりないし、戦わなくても十分やれる事があって生活が回っていく。もともと前に出て行く事が苦手だった私には、こういうのも合ってるんじゃないかなって思うの」

「楽しそうね」

 小さい頃、フルルは、アカネがいつか外へ出るためにとやっていたかけっこやチャンバラごっこより、母に勧められたお絵かきやおままごとを楽しんでいた事を思い出す。今思えば、アカネが他の子達とかけっこ等をやっている間、混ざらずに横で楽しそうにただ見ているだけだったときも多かったのはそういう理由もあったのだろう。

「うん、楽しいよ。でも」

「おーい! フルルー!」

 突然、ばさりという音と共に上空から慌てたような声が降ってきた。

「リアンとディクス!?」

「お、アカネさん達じゃん。元気してた?」

 さっきまで慌てていたと言うのに、礼儀正しさゆえか、ただの癖か、リアンが挨拶をし、ディクスもそれに続いた。

 アスターに似たやや小さな、と言っても通常サイズよりは多少大きな模様の異なるファードラゴン。その上に長く真っ直ぐな土色の髪に燃えるような赤い目の魔術師の少女リアンと、短く暗い赤の髪に土色の目の盾役の少年ディクスの二人が乗っていた。ちなみに、どちらも気の強そうな外見をしているが、実際に気が強いのはリアンだけというギャップがあったりする。

「今別れたって……!」

「パーティは解散したけど、別に絶交したって訳じゃないしね。この辺りのダンジョンもまだ探索し尽してないからって、写真や素材をくれたり、時々面白い魔物を生け捕りにしてきてくれたりするの」

「じゃなくて! カズト見なかったか!?」

「え、見てないけど……」

 完全に話がそれていたのに気付いて、リアンは首を振って聞き直した。

「カズト?」

「こっちで会ったリアン達の新しいパーティメンバー。私と入れ替わりで入ったからあんまり交流は無いんだけどね」

「大樹に戻された時にはぐれたんだ!」

「戻された? 戦闘不能になったって事か?」

 戦闘に限らず、何かしらの理由でダメージを受けすぎると、最寄りの大樹によって強制的に引き戻される。単純なデメリットはほぼないが、そこのマザーによって説教されるため、基本的には避ける事だとされている。

「分からない。でも、その直前に真っ黒な化け物を見たんだ」

「化け物?」

 コガネは二人を落ち着かせようと、努めて冷静な口調で状況を尋ねる。アカネが深呼吸を促せば、二人は少しだけ落ち着いて、当時の状況を順に話し始めた。


 今日行ったのは初めて探索するダンジョンで、新しい魔物などがいても全くおかしくない場所ではあった。辺りをきょろきょろと見回していると、少し離れた茂みの上に黒いものが見えた。

「なんだか魔物らしくないっつーか、動きが全然生き物らしくなくて、空間が歪んでるとか言われても納得しそうな見かけだったんだ」

 並んだライトが消えかかっているかのように真っ黒なものがゆらゆらしていた。

「明らかにこれまでと違う雰囲気だったし、とにかく距離を持って身構えた」

「でも、次の瞬間にはカズトが消えて、どっちが前かも分からない奴だったけど、なんとなくこっちを向いたような気がした……と思ったら戻されてたんだ」

 立ち位置の都合で正確には分からないが、多分先に戻されたのはリアンで、続いてディクスも戻された。しかし、戻ってみれば先に戻っているはずのカズトの姿が見当たらなかった。

「それで、説教を振り切って元の場所を目指して飛んでいたって事か」

「説教を受ける時間も惜しかったからな。後でさらに大目玉を食らうとしても、立ち止まってはいられなかったんだ」

「リアン! ディクス!」

「……マザー」

 紫のメッシュの深緑の髪。中性的な外見の紫の大樹のマザーがすぐそこにいた。リアン達は恐る恐る振り返ったが、真っ黒な瞳は予想よりもずっと柔らかい表情をしていた。

「説教ではないけれど、話があるから大樹まで来なさい。お友達も興味があるなら来ても構わないよ」

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