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これで万事解決……?

 翌日、早速俺は思いついたアイデアを実行に移してみることにした。


 ラーファ曰く魔法を行使する上で重要なのは想像力とのこと。言い換えれば想像力さえあれば望む魔法を行使することが出来るということだ。言うは易く行うは難しという言葉はあるが、俺は異世界からやって来たチート持ち。ラーファの言葉を信じるなら俺の魔力量は魔王と並ぶほど膨大らしい。


 その大量の魔力と、引きこもり時代に培った想像(妄想)力を組み合わせれば唯一無二のオリジナル魔法をバンバン作り上げることが出来ちゃうって訳だ。そして今回俺が考えた魔法は流行り病の原因を可視化する通称病原菌ミエール君だ。


 王都全体を俺の病原菌ミエール君で包み込むことによって、何が原因なのか、どこから発生しているのかを特定し根元を叩く。そうすればこのクソ忙しい毎日からもおさらばできちゃうって訳。ふふふ、俺ってば天才か?


「ゆ、ユーリ様……本当にやるのですか?」

「大丈夫大丈夫、私魔力の量めっちゃ多いからへーきだって」


 不安げな眼差しを向けてくるミカエラに問題ないと伝える。


 本来王都を結界で覆うというのは何百、何千もの魔法使いを動員して行うものらしく、それを一人で行うのはあまりにも無謀すぎるとミカエラに止められたのだ。一応攻撃を防ぐ能力は一切ないという事、俺の魔力量が馬鹿みたいに多い事、通常の結界と比べたら多少は魔力消費量が少ない事など長時間に渡る説得の末、実行の許可を貰った。


「もし身体に不調が出た場合はすぐに中止してくださいねっ!?約束ですからね!?」

「分かってるって」


 心配されるのは嬉しいが過保護すぎると面倒臭いという気持ちが勝つな……。うん、手早く終わらせちゃおう。


 俺は何もない所へと手をかざす。すると神々しい光と共に1本の杖が現れる。俺はその杖を握りしめ、先端部分を青空へと向ける。

 

「主よ、我らを脅かす邪悪の源を神の威光で照らしたまえ───ファインド」


 淡い光が上空へと舞い、その光は王都を包み込むようにドーム状に広がっていく。


「……おお」


 程なくして俺の視界に変化が訪れる。俺の視界の中に黒い靄の様なものが現れた。その黒い靄は場所によって濃淡が異なり、忙しなく動き回っていたり、一カ所に固まっていたりする。おそらくこれが俺の魔法で可視化した流行り病の病原菌だろう。


 ふふふ、やはり聖女としての才能はずば抜けてるな俺。ぱっと見空気感染するようなものではないらしいし、後はこの黒い靄が一番濃い所に行けばこの鬱陶しい流行り病を解決することができ……る……。


「んん?」

「どうされました?」


 俺の視界にはおそらく発生源とされる大きく、そしてどす黒い靄が映し出されている。ここまでは良い、良いのだが……発生源と思われる場所が複数カ所あるのだ。


「ミカエラ、街に行きたい。すぐに準備して」

「ただちに」


 ミカエラにそう指示を出し、急いで支度をした俺は急いで城を駆け下り、街へと向かった。


「これは……井戸?」


 発生源と思われる場所はなんと共用の井戸だった。


「なるほど……だから複数個所あって、すごい勢いで病気が広がったのか」


 人間が生きていくのに水は必要不可欠だ。水魔法で飲料水を生み出すことはもちろんできるが、この世界がいくら剣と魔法のファンタジー世界だとしても、全員が全員魔法を使えるわけではないし、人によって魔法の適正がある。そのため、多くの村や街では前世と同じように井戸や川の水を利用している。


 そこで大勢の人が、必ず毎日使う井戸へと病原菌をぶち込むことで、最高効率で人を病気にすることが出来るという訳だが───。


「流石に条約違反だろこれは」

「ユーリ様、井戸に病気の原因があるのですか?」

「うん、王都中の井戸に原因がある。それも自然発生的なやつじゃなくておそらく人為的なやつね」

「なっ!?」

 

 ミカエラが驚きの声をあげる。その後すぐ、誰が見ても分かる程怒りのボルテージが上がっていく。ミカエラはこの国を守る近衛騎士だ、そこらの人間よりも怒るのは当然の事だろう。


 俺は怒りで小さく震えるミカエラをよそに、井戸から水を汲み上げる。ぱっと見では何も問題が無い透明感のある水だが……うん、真っ黒です。俺の魔法がビンビンに反応してますねこれ。

 

「さて、原因も見つかった訳だし、ぱぱっと取り除いちゃいますか」 


 俺は杖を呼び出し、詠唱を始める。


「主よ、その聖なる光で以て邪悪の源を滅ぼしたまえ───ピュリフィケイション」


 淡く光る杖の先端から、一つの白い光が生まれる。その白い光は一定の速度で井戸の中へと落ちていく。


「この光はっ!?」

「ちょっ、まぶしっ!」


 目を開けていられない程の光が井戸の中から放出される。対向車線に居る車からハイビームを当てられてるのを思い出しました。あれ本当にやめてほしいですよね。

 

「……ゆ、ユーリ様。井戸は大丈夫なのでしょうか?」


 とてつもない光量だったからか、ミカエラが心配そうに俺に訪ねてくる。うん、あれは俺も想定外だったよね。俺もびっくりしたもん。


「うん、もう大丈夫みたい」

「そうですか……ありがとうございますユーリ様。ユーリ様が居なければきっとこの国は数週間……いや、最悪の場合数日以内に滅んでいたかもしれません」

「いやいや、大袈裟……ではないか。うん、どういたしまして」


 放置してたら本当に機能不全に陥ってただろうし、解決出来て良かった。


「後で陛下に報告と今回の件の調査を進言しなければ……他国からの間諜、いや違うな。これはおそらく───」 

「よしっ、他の井戸もじゃんじゃん浄化しに行こう!今日でこの診察地獄とはおさらばだっ!」

「あ、はいっ!最後までしっかりお守りしますねユーリ様っ!」


 何か考え込んでいる様子だったが、のんびりとはしていられない。俺は今日中に王都中の井戸を浄化してこの診察地獄から解放されたいんだ。くふふふ、これで明日からはのんびりできるぞ~。




 

 

「ふっふっふ……これで勇者を抱えるワーデン王国は機能しなくなる。国の支援が無くなれば勇者の活動も鈍化し、我ら魔王軍は自由に行動することが出来る」


 王都から少し離れた所にあるスレイノ森林の中で、一人の女性の声が響く。その女性は身長こそ普通の人間と変わらないが、人目を惹く銀色の髪と山羊の様な角、そして魔族特有の紋章が刻まれた瞳が彼女が人間ではないことを物語っている。


「あぁ……今から魔王様に褒められるのが楽しみで仕方ないわぁ……ぐふ、ぐふふ」


 魔族の女は恍惚とした表情を浮かべ、身体をくねくねとよじらせ、気持ちの悪い動きをする。周りに人が居たら「うわきも」と声が漏れてしまうことだろう。


「そういえば……アンナの報告によると近々勇者が王都に戻ってくるんだったかしら……良い事を思いついたわ」


 魔族の女は指を鳴らし、ニヤリと悪い笑みを笑みを浮かべる。


「ボロボロになった王都を見た勇者はきっと怒り狂う。そんな中冷静さを失った勇者の前に現れたら、きっとあの子は私のことを殺そうとする。考えも無しに突っ込んでくる勇者を私が……ふふ、んふふふ……あ、よだれが」


 肩を震わせ、笑い声を溢す魔族の女。周りに誰もいないから良かったものの、彼女の顔ははっきり言いて他人にお見せ出来ないような顔になっている。


「魔王様……このサテラが必ずや勇者を討ち取って見せます。だからどうか、どうか───」


 ぎゅっと自分の身体を抱きしめたままサテラが天を仰ぐ。


「勇者を倒した暁には、どうか私と結婚してくださああああああああい!!」


 数日後───。


「な、なんで私の呪いが全部解除されてるのよおおおおおおお!!」

  

 普段は静かなスレイノ森林がその日は騒がしかったそうな。

 


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