と思っていた時期が私にもありました
「聖女様ありがとー!!」
「どういたしまして」
「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
「お気になさらず」
「聖女様万歳!聖女様万歳!!」
「あ、ありがとうございます~……はぁ……」
治療を終え、元気になった人たちを見送りながら大きく息を吐く。聖女として生まれ変わり、聖女の力を使って人のために働いてみよう……そう思っていた時期が俺にもありました。
前言撤回。俺はもう働きたくありません。何なんですか?聖女って汚れ一つない白がイメージカラーなのに労働環境が超絶ブラックなんですけど?
ライファル大聖堂で治療を終えた次の日から、王都内の教会、病院、その他色々な所を回り、流行り病に罹っている人達を治療する日々が始まった。朝起きて、ご飯を食べたら即仕事。右へ左へ王都中を駆け巡り、回復魔法をかけ続けるという江戸時代の医者を思わせる程あっちこっちへ飛び回っている。
前世が引きニートである俺にとってこの日々は地獄以外の何物でもなく、自分でも分かる程に精神が摩耗している。正直今すぐ部屋に引き籠ってそのまま1週間は何もせずダラダラと過ごしたいが……残念ながらそうはいかない。
「お疲れ様ですユーリ様」
「ミカエラ~……まだ患者いるの~?」
「残念ながらまだ大勢おります」
「はぁ……聖女だからって馬車馬のように使って良い訳じゃないと思うんですけど~」
「そ、それはおっしゃる通りなのですが、ユーリ様以外に治療できる方がいらっしゃらないのが現実でして……」
「知ってる知ってる。じゃなかったら毎日毎日こんな王都中を走り回る必要ないからね。アハハ、アハハハハハ」
「ゆ、ユーリ様お気を確かに」
毎日の苛酷な労働で精神が擦り減っていくが、その代償なのか護衛であるミカエラとはかなり距離が近付いた。普段は聖女として愛想笑いをしたり、丁寧な口調を心掛けたりしているが、ミカエラの前では限りなく素に近い状態で過ごしている。
「そんなに気を確かにしてほしいなら何かすることがあると思いませんかミカエラさ~ん?」
「ひ、人が来たらどうするんですか!?」
「大丈夫大丈夫!どうせこないって!ほらほら、護衛対象である聖女様からのお願いだよ?」
「……わかりました」
一度周囲を見回したミカエラは俺にゆっくりと近づき、俺の事を優しく抱きしめ、頭を撫でる。
「よ、よく頑張りましたねユーリ様。今日もユーリ様のおかげでたくさんの人が救われました」
「うむ、くるしゅうない」
これが最近の日課、ミカエラのよしよしである。俺はこの世界では紛うことなき美少女だ。ハーレムを形成するという男のロマンは絶望的と言える。だがしかぁし!外見は女の子だが中身は立派な男の子、己の欲望には抗う事などどうして出来ようか、出来るはずがない!
それに周りから見れば女の子と女の子が仲睦まじくしているだけ。同性同士のスキンシップはごくごく普通のことである。つまりこれは合法!合法的に美女からハグされ、よしよしされているのだ!女の子の身体最高!ビバ、美少女!ビバ、異世界!
「それにしても毎日治療してるのに患者の数が減らないのは何でなんだろうね」
「現在も調査しているのですが……残念ながら原因は見つかっておりません。治療をした方々に事情を聞いたのですが、特におかしなものを食べたという話は聞いておりません」
「むぅ~……原因さえ取り除ければこんな毎日とはおさらばできるのになぁ」
毎日ミカエラに労ってもらえるのはとても嬉しい事なのだが、それはそれとしてこの忙しさには参っている。流行り病というからには何かしら原因があるはずなのだが、地球でも黒死病が猛威を振るったようにそう簡単に原因は見つかってはくれない。
とはいえこのまま治療を続けていても解決の糸口が見つかるわけではない。何かしら良い方法があればいいのだが……。
「あっ、そうだ」
「どうかされましたか?」
「いや、実は流行り病の原因を見つけるための良いアイデアが浮かんだんだ」




