クドウリサ
「あの……ユーリ様、今俺って」
「うん、実は俺日本居た時は男だったんだよね」
「えっ……えぇ!?おと……ちん……えぇ!?」
俺の告白に驚きを隠せないのか、リサはぎょっと目を見開きながら俺の顔と下半身をを交互に見つめる。そんなあからさまに視線を向けられると少しばかり恥ずかしい。これが男に見られる女の子の気持ちか……。
「えっと……その、い、今はついてないんですよね?」
「ないよ。心は男でも体はちゃんと女の子だよ」
「あ、そうなんですね……てっきりふた〇りなのかと」
「おい」
公共の場で何を言い出すんだこの子は。
「あっ、すみません……その、私こう見えて結構オタクというか、ネットに毒されてたのでつい」
「まぁうん。何となくそんな気はしてたよ」
「えっ……私そんな陰キャオーラ出てました?見た目美少女だし、結構隠す努力はしてたつもりなんですけど……」
「俺も元陰キャだからな。似た雰囲気の奴を探し出すのは得意なんだよ」
「なるほど」
陰キャは基本的に隅っこで、そしてボッチで過ごすことが多い。しかし人間と言うのは社会的動物であり、一人で生きていくことに耐えられない人間の方が多い。そのため陰キャには自分と似たような雰囲気を放つ陰キャを見つけるセンサー的な物が備わっている。このセンサーを駆使することで、陰キャは自分と趣味が合いそうな人間と少しずつ距離を詰め、ぼっちを卒業することが出来るのだ。まぁセンサーが備わっていても話しかけられる勇気が備わっているかは別問題なんですけどね。
「それにしても……こんな美少女の中身が男かぁ……ん~あり?私的には付いてた方がお得な感じして嬉しかったけど」
「……」
人の下半身をジーっと見つめながらぶつぶつと一人議論を展開するリサに思わず頬が引き攣る。高校時代、クラスの腐女子のBL創作に巻き込まれた時の事を思いだした。ナマモノは良くないよナマモノは。
「で、リサさんはラーファにこの世界に転生させられたのか?」
「あ、はい!ラファルネーベ様に勇者の適性があるから、魔王を倒して欲しいとお願いされました」
「やっぱりか」
「はい。ラファルネーベ様にはすごく感謝してます!なにせこんな美少女の身体を手に入れることが出来たので!」
「あ、うん。それは良かったね」
普通こういう時って戦いたくないとか、怖い思いをしたくないみたいな気持ちの方が優先されると思うのだが、リサは全く気にしていないらしい。それどころか自分が美少女になったことにしか焦点が当たっていない様にも見受けられる。これが二次元に憧れたオタクの性か。
「……私高校生だったんですけど、毎日灰色の時間を送ってたんです」
物憂げな表情のままリサは言葉を続ける。
「友達はできないし、勉強も運動も好きじゃないし、何のために学校に行っているのか分からなくなって、つまらなくてしょうがない時間を過ごしてました。そんなある日、私は事故に遭ったんです。つまらない一生だったなぁと思っていました。そんな時、ラファルネーベ様が私にチャンスをくれたんです」
その時の情景を思い出しているのか、嬉しそうにはにかむ。
「あなたには勇者としての適性があります。あなた自身の手で、退屈な毎日を壊してみませんか?って。あの方のおかげで私は退屈な時間から抜け出せました。怖い事も、辛い事もいっぱいあるけど、それ以上に楽しくて、毎日が色鮮やかになったんです……あっ、ごめんなさい自分の事ばっかり」
「いやいいよ。むしろリサさんの事を知れて良かったよ」
「そ、そう言ってもらえると助かります……それでその、ユーリ様はラファルネーベ様と一体どのようなお話を?」
「えっとぉ……それはぁ……」
童貞どころかキスすらしたことが無いレベルで体が穢れてなくて、聖女としての適性が滅茶苦茶あったからとか口が裂けても言えないんですけど。
「俺も似たような感じだよ。知らない人が車に轢かれそうだったから、その人を助けて代わりに俺が死んだ。それで気が付いたらラーファに聖女になれって半ば強制的にこっちに飛ばされたんだよ」
嘘を通すには本当の事の中に嘘を紛れ込ませるのが良い。俺はネットで見かけた情報を駆使し、自分が無職童貞のおっさんであることを隠しつつ、身の上話を語る。
「そうだったんですね……あの、ちなみになんですけどユーリ様も高校生だったんですか?」
「いや、俺は社会人だったよ」
まぁ社会に出たことは一度も無いんですけどね。
「そうなんですね……じゃあユーリ先輩ですねっ!私のことは呼び捨てで呼んでくださいっ!」
「いやいや。この世界に来たのはリサさんの方が先だよ?」
「でも日本だとユーリ先輩の方が長く生きてましたしっ!だから呼び捨てで呼んでくださいっ!ユーリ先輩っ!」
「……分かったよリサ」
断り切れない圧の様なものを感じた俺は、大人しく彼女の事をリサと呼ぶことにした。ミカエラ然り、ノアちゃん然り、この世界で関わった女性は癖が強い人が多すぎる気がする。日本と比べて我が強い人が多いって表現の方が適切かもしれない。まぁでも、美少女から先輩と慕われること自体は憧れだったし、悪い気はしない。
それから俺は日本での話や、この世界に来てからの事を話など、懐かしさとどこか落ち着きのある時間を過ごした。




