↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/23

ルート分岐

「……勇者リサ様。ご挨拶が遅れてしまい大変申し訳ございません。此度の遠征も怪我無く無事に終えることが出来たことを心からお慶び申し上げます。また、人類のために命を賭して戦ってくださっている皆様に心からの感謝を」

「あ、ありがとうございますノアルス殿下」


 俺から腕を離し、勇者に挨拶をするノアちゃんの姿はまさに王女そのもの。先ほどまでのエッな雰囲気はどこへやら、今のノアちゃんはどこへ出しても恥ずかしくない立派な王女様だ。


「それで、何か御用でしょうか?詳しい報告や必要な物資に関してのお話は後日父からされると思いますが……」

「あ、えっと支援の話ではなくて、そちらの聖女様とお話がしたくて」


 勇者の言葉にぴくっとノアちゃんの肩が揺れる。これは俺の憶測でしかないが、きっと心の中では「今いいとこなんだからじゃますんじゃねぇよ」とか思ってるんだろうなぁ……。

 

「ええ、もちろんですわ。勇者様と聖女様との交流は人類にとって非常に有益なことですし」

「ありがとうございますっ!」

「それでは私は挨拶周りがありますのでこれにて失礼いたします」


 にこやかな笑みを湛えたままノアちゃんは俺達から離れていく。口元は笑っていたが目元が全く笑っているように見えなかったのはきっと気のせいではないだろう。ああいうタイプの人間は溜め込むと大爆発を引き起こす可能性があるから、後でこちらからアクションをかけて機嫌を取った方が良さそうだな。悩みの種を増やしやがって……おのれ勇者め、許さんぞ。

 

「えっと……は、初めましてっ!私今代勇者のリサ・クドウです」

「お初にお目にかかりますクドウ様。私は今代の聖女を務めております、ユーリ・ラファルトと申します」


 肩あたりまで伸びた黒髪とオニキスの様な黒目。そして人類の英雄とは似ても似つかない物腰柔らかな喋り方と、自己主張が如何にも苦手そうなおどおどとした態度。クドウリサ、こいつは間違いなく日本人で間違いないだろう。ど、同郷の人間だからって俺の恨みがそんな簡単に晴れると思ったら大間違いなんだからねっ!別に日本人と会えて嬉しいとか微塵も思ってないんだからねっ!


「肌きれぇ……じゃなくて!わ、私のことはどうぞリサとお呼びくださいっ!」

「分かりましたリサさん。私のこともどうぞユーリとお呼びください」

「は、はいっ!」

 

 それにしても……俺、日本人出身の女の子と普通に話せてるとかすごくないか?


 前世では家族や親族以外の女性とはまともに会話した記憶が無いし、何か買い物をする時も女性の店員とは全く目を合わせることが出来なかった。そんな俺が目と目を合わせ、ニコニコと笑顔を浮かべ、どもることなくすらすらと会話をすることが出来ている。魔法の才能だけでなくコミュニケーション能力も備わっているとは……これが俗に言う聖女の力は万能ですっ!という奴だろうか。


 さて、俺のコミュ力が大幅改善されたことへの喜びは一度隅へ置いておくとして……これから勇者とはどのように接していくのが良いだろうか。


 今後の勇者との関わり方には二つのルートがある。まず一つ目は自分が日本人であることを隠すルート。この世界に生まれ、この世界で育ったかのように振舞い、聖女と勇者という立場の下、深すぎず、それでいて浅すぎない丁度良い関係を模索していく。メリットは自分の素性を知られなくて済むと同時に、余計な感情や話を持ちこまれないこと。そしてデメリットとしては同郷の人間に対して見て見ぬ振りをする良心の呵責とバレた時の気まずさがある。

 

 二つ目は自分が日本出身であることをばらすルート。ラーファのお願いで聖女として転生したことを話すことで、同郷のよしみとして一気に心の距離感を縮めることが出来る。メリットは同郷出身という強いつながりができ、何か困ったら互いに助け合うことが出来るという事。デメリットは俺の中身が元30代のおっさんであることを知られ、周囲にばらされること。もしそんなことが起きたら俺の異世界生活は一気に地獄溶かすだろう。


 ローリスクローリターンの選択肢を取るか、それともハイリスクハイリターンの選択肢を取るか。非常に悩ましいが……俺は可能であれば厄介ごとには巻き込まれたくない性分だ。日本人同士仲良くしたい気持ちはやまやまだが、日本人であることがバレたら面倒なことが発生する予感がする。つまり俺が取るべき選択肢は前者の方だ。彼女には悪いが、日本人であることは隠させてもらおう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。