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勇者は転生者らしい

「ノアルス殿下」

「……何か用ですか?ミカエラ?」

「少々お戯れがすぎるかと」

「そんなことはありませんわ。姉妹がスキンシップを取るのは自然の事ですし」

 

 姉妹じゃないです。全然血縁者じゃないです。普通に部外者です。


「ノアルス殿下。ぶしつけな事を申しあげますが、ユーリ様とノアルス殿下との間に血は通っておりませんよ」

「血は繋がっていなくても心は繋がっております」

「初対面で心が通じるとは到底思えませんが」

「私とユーリお姉様は運命に導かれた存在ですので」


 にこやかに会話している様に見えるが、互いに目が全く笑っていない。というか火花がバチバチに散っている。正直めっちゃ怖い。お願いだから俺を間に挟んで言い争いをするのはやめて欲しいんですけどっ!お願いだから私のために争わないでっ!


 恐怖に震えているとパーティ会場がざわめく。一体何事かと皆が向いている方向へ顔をやると、そこには明らかに纏っている雰囲気が違うグループが居た。

 

「……勇者様がいらっしゃったことですし、今回の無礼は水に流してあげますよミカエラ」

「ありがとうございます。こちらもユーリ様への失礼な態度は水に流すとしましょう」


 どうやらノアちゃんとミカエラは一時休戦協定を結ぶらしい。こちらとしては休戦ではなくて平和条約を結んで欲しいところだが、2人のバチバチな雰囲気から察するに不可能だろう。せめて俺を巻き込まないで欲しいところだ。


「ミカエラ」

「はい、どうなさいましたか?」

「あの4人組が勇者パーティーなんだよね?」

「さようでございます」


 色鮮やかな赤色のドレスに身を包んだ黒髪の少女と、水色のドレスを着た紫がかった長髪が特徴的な落ち着きのある少女。そして見るからに不満げな表情を浮かべ、ドレスを鬱陶しそうにしている獣人の女性と、タキシードがぱっつぱつで、いつボタンが弾け飛んでもおかしくないムキムキマッチョのスキンヘッドおじ。


 会場へ入るや否や皆の視線を集め、場の空気を一気に変えた4人組。あれが人類の最終兵器とその一味か……なんだか癖がすごいメンバーばかりだな。


「間違ってたらごめんだけど、あの黒髪の子が勇者?」

「はい。彼女が勇者リサ・クドウです」

「……ん?」


 リサ・クドウ……クドウリサ!?え、滅茶苦茶日本人ネームじゃん。


「よくぞ戻られた我らが英雄よ!」

「ね、ねぇミカエラ」

「ユーリ様の声が耳元に……み、耳が孕むっ!」

「今はそういうの良いから」

「あ、はい。申し訳ございません」


 国王陛下が勇者に対して挨拶を始めたが、頭の整理が追い付かなかった俺は耳打ちでミカエラとの話を続ける。


「あのリサ・クドウって人、もしかして異世界から召喚された人?」

「いえ召喚はされておりません。ですが異世界からの漂流者という話は耳にしております」

「……なるほど」


 つまり勇者は日本人で間違いないって事か。同郷の人間はいるだろうなぁとは思ってたけど、まさかこんなに早くエンカウントするとは……。まぁでも勇者が男じゃなかったのは案外いいことかもしれない。俺が読んできたラノベだと男の勇者に碌な奴は居ないからな。勇者パーティーのメンバー、特に聖女とかに惚れて問題ごとを引き起こすなんて話は何十作品も読んできたし。


 というかすごい今更だけどあの筋肉スキンヘッド滅茶苦茶ハーレムじゃん。勇者パーティーの女性陣は癖こそありそうだけど、全員が意見は整ってるし。ずっと近くに居るからちょっとエッチな現場を目撃したりとか、可愛い寝顔を堪能したりとかできちゃうわけでしょ?……転生先、あいつが良かったなぁ。


「陛下、我ら勇者パーティー、ただ今帰還いたしました」

「頭を上げてくれ我らが英雄よ。貴殿らに頭を下げさせては面目が立たん」

「分かりました」


 フォーマルな場だからか、深々と頭を下げてはいるものの、勇者と国王にはそこまでの上下関係はない。むしろ上下関係がある方が国際問題だろう。


「詳しい話はまた後日するとして、今日は君たちのためにささやかながらパーティーを用意した。是非とも楽しんでいってほしい」

「多大なるご配慮感謝申し上げます陛下」

「なぁなぁ?堅苦しい挨拶はもう終わったのか?じゃあ飯食いに行ってきてもいいか!?」


 獣人族の女性が身体をうずうずとさせながら勇者に許可を求める。


「マール、国王陛下の前で失礼」


 そう淡々と告げたのは水色のドレスを着ている少女。俺の今までの知識から照合すると獣っ子は脳筋アタッカー、あの無表情な女の子が魔法使いだろうか?

 

「いちいちこまけぇなぁティアは。あたしたちは勇者パーティーなんだから多少の無礼は許されるんだから良いだろ」

「そういう問題じゃない」

「こら。陛下の御前で言い争いはやめなさい。陛下、うちのメンバーが大変失礼しました」


 言い争いを始めた二人を叱ったのは筋肉ムキムキ(ryの男。どう考えてもこいつがタンクだろう。それにチームの中で一番最年長っぽいし、皆のまとめ役も担っていそうだ。 


「気にしておらぬよガーゼナル殿。それに堅苦しいやり取りは私も好きではないからな。ここらで終わりにしよう……と、言いたいところだが、もう少しだけお待ちください。……ユーリ様、こちらへ」

「えっ」


 えっ。

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