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王女殿下は圧がすごい

 豪華絢爛な装飾、華やかな衣装と彩り豊かな食事。お金持ち、国の有力者や権力者が集まるパーティー会場が、一人の少女が現れると同時に静寂に包まれる。


 純白のドレスを身に纏ったプラチナブロンドの髪の美少女。日焼けを知らない白い肌には程よく化粧が乗っており、宝石が散りばめられた髪飾りやネックレスが清楚さを損なわず、それでいて彼女の持つ可憐さを上手く助長している。


 ある者は展開から舞い降りた天使と。またある者は社交界に迷い込んだ妖精と、口々に誉め言葉を並べていく。

 

 間違いなくこのパーティー会場で一番の輝きを放つ美少女、その正体は……この俺、ユーリ・ラファルトちゃんです!いええええええい!


 周りの視線を浴びながら、俺はミカエラと共に堂々とパーティ会場を闊歩闊歩する。ふはは、俺の可憐さに見惚れるが良い貴族共!そしてたくさん俺に貢ぎたまえ貴族共!あと求婚だけは絶対にしてくんじゃねぇぞ貴族共ぉ!


「ヴィーノ陛下、今宵はこのような素晴らしいパーティに招待していただき、誠にありがとうございます」

「これはこれはユーリ様。あまりの美しさにまるで天使が現れたかと勘違いしてしまいましたよ」

「ふふ、ありがとうございます」

「今日は勇者様の帰還を祝うと同時に、ユーリ様の献身に感謝を示す場でもあります。どうぞ心行くまでお楽しみください」

「私は聖女として当然のことをしただけです。ですが、私のために準備してくださったことに最大級の感謝を申し上げます」


 陛下との堅苦しい挨拶をし、二言三言会話をした俺はこの場を離れようとする。が、その時である。


「あ、あのっ!」


 陛下の後方からひょこりと顔を出した女の子に呼び止められる。自分の髪よりも色味が強い鮮やかな金色の髪と、翡翠色の瞳が特徴的な女の子。確かこの子は───。


「は、初めまして聖女様っ!私はワーデン王国第二王女ノアルス・ライカ・ワーデンと申します」


 ノアルス・ライカ・ワーデン、12歳。ワーデン王国の第二王女で、周囲の評判は非常に良い。様々な分野で才能を発揮しているが、中でも魔法の才能はずば抜けているとかなんとか。才能があって見た目もめちゃくちゃ可愛い。あぁ、俺が男だったらこの子とイチャイチャしてあんなことやこんなことが出来ただろうに……。おのれラーファめ、許さんぞ。

 

「初めましてノアルス殿下。今代の聖女を務めております、ユーリ・ラファルトと申します。どうぞ私のことはユーリとお呼びください」

「……はっ!わ、分かりましたユーリお姉様っ!どうか私のことはノアとお呼びくださいませっ!」

「それではノア様とお呼びしま───ん?今何とおっしゃいましたか?」

「様付けは必要ありません!呼び捨てで結構ですのでっ!」

「い、いやあの、その前に私のことを何て呼びました?」

「ユーリお姉様です」


 いやどうしてそうなった。なんで俺は王女様にお姉様呼びされているんだ。いやまぁ確かに俺は一応16歳という設定で通しているからお姉様ではあるのだが、この子と血は繋がっていないはず。……え?もしかしてこの体には王族の血が紛れ込んでいたりするの?


「えーっとぉ……ノア様」

「様は必要ありません。ノアとお呼びください」

「……」

「どうか、ノアと、お呼びください」

 

 あ、圧が!圧がすごいよこの子!


 一歩、また一歩と近づきながら呼び捨てをせがんでくる王女様。お人形の様に整った顔立ちの女の子に迫られるのは、本来嬉しい事のはず。なのに何でだろう、嬉しさよりも恐怖が勝ってしまう。


「あぁ……近くで見ると本当に綺麗で可愛いですユーリお姉様。その綺麗な金色の髪も神秘的な瞳も、汚れ一つない真っ白な肌も。うふ、うふふふ」


 ねっとりとした視線が身体全体に纏わりつく。気持ち悪いと拒みたい気持ちが大きくなるが、相手は一国の王女様。いくら俺が聖女だからと言っても失礼な対応をすることは出来ない。い、一体どうしたら良いんだぁ!


「ノアルス殿下」


 俺の視界に綺麗にまとめられた赤い髪と、頼りがいのある背中が割り込んでくる。


 み、ミカエラ!マジ神!


「……何?ミカエラ?私は今ユーリ様とお話をしているのですけれど?」

「存じ上げております。そのうえで申し上げますが、今すぐ離れてください殿下。ユーリ様が怖がっています」

「別に怖がっていませんよ?ですよね?ユーリお姉様?」

「いえ。誰がどう見てもノアルス殿下に怯えています。ですよね?ユーリ様?」


 パーティ会場、それも国王陛下の前でどうして修羅場が起きているのだろう。そしてどうして俺はその修羅場に巻き込まれているのだろう。俺はただの聖女の皮を被った引きこもりのおっさんなのに。


「ノア、聖女様が困っているだろう。そのくらいにしておきなさい」


 流石にこの状況はまずいと感じたのか、国王陛下が直々に仲裁に入る。やれやれと言った表情と自然と漏れ出た大きなため息から、国王陛下が常日頃からノアルス殿下に頭を悩ませていることが伝わって来た。いつもお疲れ様です……。

 

「……はーい。ユーリお姉様、大変失礼いたしました」

「あ、うん。全然気にしてないから大丈夫です。それとその……呼び捨てはあれなので、ノアちゃんと呼んでも───」

「はいっ!是非に!」


 俺が言いきる前にノアちゃんが俺の手を取りながら顔を寄せてくる。


「ユーリお姉様っ!」

「な、何?ノアちゃん?」

「んふ、んっふふふふ……もう一度呼んでくださいませんか?」

「えっと……ノアちゃん」

 

 ふわりと漂う花のような甘い香りに脳が痺れる。俺を真っ直ぐに見つめるノアちゃんの顔は徐々に熱を帯び、そしてノアちゃんの手が俺の手の甲をすりすりとなぞり始め───ちょっ!な、何か危ない空気が漂い始めたんですけどっ!?

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