↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無才の剣士 ~もう一度キミに好きと言うため、才能を捨てて記憶を選ぶ~  作者: 塚丸水産
白影編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/65

Ep.41 知識の守り人






「ここが――黎明図書館」




 眼前に広がる光景に、アルは目を見開いた。


 見渡す限り本、本、本、本、本、本――まるで本でできた海を見ているかのような気分になって、アルは圧倒される。


 広く、それ以上に高い。

 全ての階が吹き抜けになっており、入ってすぐにその全容を拝むことができる。天井には巨大なシャンデリアが吊るされており、その光に照らされる全てが本で埋め尽くされている。


「……すごい」


 あまりに壮大な光景に、さしものエルトも圧倒されているようで、いつもは眠た気に細められている瞳が見開かれている。繋がれた右手にぎゅっと力が込められ、驚きの感情が伝わってくる。


 ――コツ、コツ、コツ。


 そうして図書館を見渡す二人の前に、一人の少年が姿を見せた。


 ゆるくウェーブのかかったミント色の髪に、同色の瞳。優し気に目尻が下がった目や、弧を描く眉からは柔和な印象を覚える。背格好はアルよりも少し華奢で、中性的な顔立ちも相まって女性のようにも見えた。

 しかし、直後に発せられた声は高くも男性のそれで――、




「――ようこそ、黎明図書館へ。僕は司書を務めるルカ・アスタロトと申します。気になること、知りたいこと、不思議なこと、何でもお聞きください。ここにはそれらすべて――とは言いませんが、それなりに答えが収められていますよ」




 にっこりと笑みを浮かべるその姿は、クローリー軍の参謀兼秘書――セラ・アスタロトに酷似していた。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆









「――なるほど。では、アルさんたちはそちらの本を返却しに来たのですね」


 優雅な所作で紅茶を啜りながら、ルカと名乗った少年は言った。


 アルたちは現在、図書館の奥にある司書室と呼ばれる部屋にお邪魔していた。そこには上品なソファと机があり、更にはルカが直々に紅茶を淹れてくれるということで、大した用事もないのに好待遇を受けてしまいアルはやや居心地が悪かった。


「あぁ、あの阿呆――ミーシャが借りっぱなしで返しに行くのが面倒とかほざいたもんでな……仕方がなく俺が」


 深いため息をつきながらアルが視線を向けるのは、机の上に置かれた一冊の本。


 そう、アルがこの図書館に訪れたのは、ミーシャが借りた本を代わりに返却するためだ。

 今となっては想像するまでもないことだが、本が好きなミーシャは度々図書館から本を借りるものの、返しに行くのが面倒になって放置し散らかしている。


 今までは気づかなかったアルだが、何やら最近やけに部屋が本だらけだと思い、どこから湧いて出てくるのか不思議になって尋ねたところ発覚したのだ。

 正確には借りていた本は一冊だけではないのだが、一度に運ぶのは不可能な量だったので、とりあえずミーシャに代わって謝罪するために一冊だけ持って訪れたわけだ。


「そういうわけで、すまん。あの阿呆にはキツく言っとくから」


 本を手渡しながら、アルはルカに頭を下げる。

 なぜミーシャの不始末をアルが尻拭いしなければいけないのか不思議で仕方がないが、そんな理不尽はこの数ヵ月で慣れたもの。それはそうと後でキツく叱るが。


 そんなアルを見て、ルカは苦笑を溢しながら手を振った。


「いえいえ、気にしないでください。ミーシャさんの件は、まぁ、はい。今更なので」

「……ホントすまん」

「ちゃんと返却してもらえれば大丈夫ですよ……たまに持ち出し厳禁の禁書まで持っていくのはやめてほしいですけどね」

「…………ホントすまん」


 どうやら想像以上にミーシャは迷惑をかけていたようで、アルはいたたまれない気持ちになりながらただただ頭を下げ続けた。


 それから少しして。


 謝罪を終えたアルたちは、せっかくということで雑談に興じていた。

 どうやらルカはアルやガレオンと同じような年代のようで、クローリー軍の中でもかなり若い部類だった。そのため『輝剣』の剣士(クソジジイ)たちよりも余程話が合う、アルにとって貴重な同年代の同性だった。


 そして意外なところでも関わりはあったようで、


「やっぱりセラの家族だったのか」

「はい……まぁ、そうですね。セラは僕の……妹、です」


 セラそっくりの容姿やアスタロトという姓から想像はできていたが、ルカはセラの兄らしい。


 しかし――そう言うルカの表情はどこか憂いを帯びており、言葉も歯切れが悪かった。


 思わず何かあったのか尋ねようと口を開くアルだったが、すんでのところで踏みとどまる。たった数十分前に会ったばかりの他人の事情に、おいそれと踏み込んでもいいものだろうか。


「……」


 数秒悩んだアルだったが、結局ルカの様子を深堀りすることはせず、半ば無理やり話題を変えるような言葉を発した。


「そういえば、ルカってここの司書なんだよな?」

「はい、そうですが……?」

「いや、ルカの前の司書とかいなかったのかなーって。ルカって俺と同い年くらいって言ってたし、クローリー軍に来たのも、そんなに前じゃないんだろ?」


 それは、アルがここに来てから――否、黎明図書館の存在を聞いてから、ずっと気になっていたことであった。


 黎明図書館――そんな大層な名前を、アルは百年前に聞いたことがあった。


 あの頃はほんの小さな図書室程度の、明らかに名前負けしている図書館ではあったが、アルフレッドがいた時代にも存在自体はしていたのだ。


 そしてその時代に司書を自称していたアルの友人がいたのだが……、


「(あの引きこもり……前もずっと図書館に籠って出てこなかったからな。今も籠ってるのかと思ったけど……)」


 てっきり図書館に引きこもっているからこれまで会わなかったのだと思ったのだが、ルカが司書を名乗った時点で既にここにはいないことをアルは悟っていた。今もクローリー軍にいるのだとしたら、あの本の虫が図書館にいないわけがないのだから。


 そしてアルの予想は正しかったようで、ルカは少しばかり難しい顔をしながら答えた。


「僕は直接見たことはないですが……前任の司書がいたという話は聞いたことがあります。僕がクローリー軍に来るよりも前に去ったと。確か……『ここに留まっていては、今以上に知識を得ることはできない。儂は更なる知識を求めて旅に出ることにする』とかなんとか言ってたみたいです」

「……ははっ」


 アルは脳裏にかつての友人を思い浮かべ、思わず笑みをこぼした。


「(あの偏屈ロリの言いそうなことだな、まったく)」


 小さい体躯に似合わない丸メガネと理屈っぽい言葉遣いで、小難しいことばかりを言っていた友人(引きこもり)。彼女は、誰よりも何よりも知識を求める変人だった。知識の権化と言ったほうが良いだろうか。


 昔馴染みに会えないのは些か残念ではあるものの、それ以上に変わっていない気質を聞いて安堵と嬉しさと、若干の呆れがこみ上げてきたアル。きっと今でも、世界のどこかで知らない本を読みふけっているのだろう。


 何となく懐かしい気持ちになったアルは、ふと思いついたことを口にした。


「そうだ。ついでだし、どうせなら本でも借りていこうかなって思ってるんだけど」

「もちろん歓迎しますよ。どんな本をお探しか教えていただけたら、案内もしますが……」

「ホントか? 助かるよ、こんなに広い図書館じゃ迷いそうだったし。それじゃあ……地理とか情勢とか、そういうのが分かる本とかないか? できれば最近のやつで」


 軽い気持ちで申し出たアルは具体的にどんな本を借りたいかまでは考えていなかったが……ルカの問いに対し、少し考えた末に地理や情勢について知れる本を欲した。


 アルファストとして転生して以降、白華村とアルメアでしかまともに生活していないアルは、それはもう俗世に疎かった。アルの頭の中にある知識は百年前のものとなっており、それだけの時間があれば当然世界は変化していくだろう。メアが魔帝になって、クローリー領が誕生したように。


 今後はクローリー軍の兵士として、アルメアの外に出る機会も増えるであろうアルからすれば、一般常識程度の知識を蓄えておくのは必要なこと。以前からそう思ってはいたのだが……これまでは鍛錬を優先して知識面は疎かになっていたのだ。


「はい、そういった本はいくらかありますが……失礼ですが、アルファストさんは俗世に疎いのですか?」

「まぁ、な。今まで辺鄙なところにある田舎村に住んでたから」


 一般常識を求めるアルに対し、当然の疑問を浮かべるルカ。アルは白華村のことは語らず、とりあえず当たり障りのない言い訳を並べた。

 ルカは納得したようで「なるほど」と溢すと、立ち上がった。


「では、案内しましょう。せっかくですし、歩きながらクローリー領の話でもしましょうか。ここの図書館は広いので、クローリー領くらいの解説ならできると思いますよ」

「ホントか? ありがとう、助かるよ」


 にこやかな笑顔を浮かべながらそう言うルカに促され、アルは膝の上に座っていたエルトを立ち上がらせる。そして当然のようにその小さな手を取り、ルカについていった。


「ここ、クローリー領は元々別の権力者の領地だったんです。その権力者がなくなったのが数百年前。それから長い間放置されてきた土地を、メア様が魔帝になったことをきっかけに与えられた形になりますね」


 司書室を出て、無数の本の間を歩きながらルカが言った。


「それは大魔総会(パンデモニウム)からってことだよな?」

「はい。権力者が亡くなって以降は大魔総会が管理していたので、そこまで酷いことにはなっていなかったのですが……大魔総会の管理範囲は魔界全体。一つの領地に注力することはできないので、どうしても統治はおざなりになってしまいます」


 魔界全体を統括する組織、大魔総会(パンデモニウム)。

 その全容をアルは知らないが、広大すぎる魔界を統治するというのは非常に難しいことなのだろう。故に魔帝や一部の魔王に領地を与え管理させているが、それでも魔界の半分ほど。もう半分はそのまま大魔総会が統治しているので、一つの領地に注力できないという言い分も納得できる。


 かといって次から次に称号を配ったり、統治者として相応しくない魔王に領地を与えたりしても、まともな運営が成されないのは明らか。できるだけ有能な人材を育成したいというのが本音だろうが、元来群れることを好まない気質の魔族に、魔界一丸となって人材育成に注力しようと言っても無駄なのは言うまでもない。


 結局は大魔総会の管理下でそれなりの統治を行い、与えるに相応しい者が誕生したら領地を与えて運営させるのがベストなのだろう。


「実際メア様がクローリー領として統治を初めて以降は、かなり風土が改善されましたね。城下町であるアルメアを筆頭に、いくつかの都市や街、村を再興して活気が生まれました。治安維持もリーシャさんたちがかなり力を入れていまして、今では魔界全体で見ても、住みやすい領地になっています」


 アルの知るメアに統治なんてできるだろうか……と少しばかり失礼なことを考えていたが、どうやら周りの力を借りながら巧いことやっているみたいだ。思えば彼女は昔からそうで、周囲の人たちに恵まれ、助けられながら魔王として振る舞っていた。


 何より、良き隣人が集うのも、助けたいと思わせるのも、メアの魅力そのものなのだろう。

 アルだってそのうちの一人なのだから。


「クローリー領の中心は言わずもがな、ここアルメアです。メア様を筆頭にクローリー軍の主力が集うアルメア城がありますし、その膝元である盟黒都市もあります。クローリー領で最も発展している都市ですね」


 一階を踏破し、巨大な螺旋階段を昇りながらルカは言った。


「それ以外には鉱山都市のスパースや港町のマーチェスといった都市もありますが、そこまで規模は大きくないですね。スパースはサンゲツ山脈、マーチェスはチェル海の近くにあります」

「サンゲツ山脈やチェル海は聞いたことあるな」

「流石に山脈や海はずっと昔からありますからね。聞いたことがあったのでしょう」

「そういえばアルメア城から見える黒い森があるだろ? あれは?」


 アルは以前城を歩いている時に見かけた森について尋ねた。

 アルメアのすぐ近くにある森で、見る限り木々の葉が黒色なのだ。遠くからでも見えるその異様な景観は、アルの脳裏に残っていた。


「あれは黒葉の森(こくようのもり)ですね。見たまま、黒い葉が生えた木々が特徴の森です。見た目が変わっているだけで特に普通の森と変わらないのですが……一つ変わったところがあるとすれば、『黒葉の迷宮』があることですかね」

「『黒葉の迷宮』……ダンジョンか?」

「はい」


 名前からしてダンジョンだと当たりをつけたアルの言葉に、ルカが肯定する。すると、エルトの手を握るアルの腕がくいくいと揺すられた。


「どうしたエルト?」

「……だんじょんってなに?」

「あぁ、そうか。エルトは見たことないのか。そうだな……ダンジョンっていうのは、簡単に言えば特殊な空間の総称だ。世界中の各地にダンジョンと呼ばれる空間があって、そこでは魔物や財宝が無から生まれるんだよ」


 記憶喪失のエルトは当然ダンジョンなど行ったことがないだろうし、アルはできるだけ嚙み砕いて説明した。


「……いっぱい生まれたら大変?」

「いや、不思議なことに、魔物も財宝も一定数以上には増えないんだ。だから溢れることもないし、ダンジョンの魔物が外に出てくることも滅多にない。とはいえ稀にダンジョンの魔物が出てくることもあるからな、そこを統治する者の義務として、定期的に監査を行ったり、魔物を間引く必要はある」

「……お宝も生まれるの、凄い」

「そうだな。強いて言えば、その財宝を一定周期で手に入れられるのが統治者のメリットだ。ダンジョンには攻略っていう概念があって、攻略されたダンジョンは一定期間を過ぎると勝手に魔物と財宝を生み出すんだよ。つまり攻略し続ければ、一定間隔で財宝を入手できるってわけ」


 エルトはダンジョンという神秘を聞いて、感心するように声を漏らしていた。実際ダンジョンの仕組みは未だに解明されておらず、謎が多い。


 なぜ攻略されたダンジョンは一定周期で魔物と財宝をリポップさせるのか。

 なぜ一定数以上には増えないのか。

 なぜ攻略されなければリポップは起きないのか。

 なぜ狙いすましたかのように、奥に行くほど財宝の価値が上がるのか。


 多くの学者が研究をしていたが、いずれも解明することは叶わなかった。

 結局アルたちにとっては、定期的に財宝が手に入れられる狩場という認識しか持つことはなかった。


 そんなアルとエルトのやり取りを微笑ましそうに眺めていたルカは、クローリー領の解説を続けた。


「森といえば、クローリー領で有名なのはエルバンの森ですかね」

「エルバンの森?」

「はい。エルバンの森にはエルフの里とダークエルフの里があるのです」

「へぇ、そりゃ凄いな。エルフが自分たちの棲家を公表してるなんて……」


 元来エルフというのは種族意識が強く、他の種族に隠れながら森に潜んでいることが多い。それが大々的に里の場所を公表しているというのは、アルの認識からすれば珍しかった。


「色々事情があるのでしょうが……一番大きいのは、その里出身の方がクローリー軍にいるからですかね」

「クローリー軍のエルフ? ……見たことないな」

「無理もありません。ここ半年ほどは警邏として他の都市を回っているので。ですが、もう時期帰ってくると思いますよ」

「誰なんだ?」


 既にアルメアで半年以上過ごしているアルだったが、エルフといわれて思い当たる節はなかった。エルフの最大の特徴はとがった耳であり、一目瞭然だ。しかし魔族の特徴としてとがった耳を持つ種族はいても、エルフのような長く緩やかなとがり方をした耳はなかったはず。


 アルが記憶をさかのぼっていると、ルカが無理もないと言った。どうやら治安維持のために他の都市や街を回っているようで、アルとは入れ違いのような形で出立したらしい。


 そして肝心の名前を聞いたアルに対し、ルカは一拍おいて、


「クローリー軍魔術大隊『紅蓮の牙』隊長――リズリット・ファン・リースフェルトさんです」


 それは、未だアルが出会ったことのない最後の大隊長だった。


「魔術大隊……」


 思えば、アルはアルメアに来てから魔術大隊に所属する者とはほとんど会ったことがなかった。稀に練兵場で魔法の特訓をしている魔術大隊の隊士らしき者は見かけるが、それにしても数が少ないとは思っていた。


 しかし、隊長が警邏に出ているのであれば納得だ。

 当然ながら隊長が一人で警邏に回ることはないため、隊長を筆頭に『紅蓮の牙』の多くが警邏のため城にいなかったのだろう。


「なるほどな……大隊長がそのエルフの里出身なら、公表するのも分からなくはない……いや、隠そうとしても隠せなかったのか? 大隊長ともなればどうしても目立つだろうし」

「僕もそこまで詳しい事情を知っているわけではないですが、メア様の後ろ盾を得るという意味もあると思いますよ。大隊長クラスの出身地ともなれば、是が非でも守護しなければならないでしょうし。下手に身を隠して、領主の存ぜぬ間に襲撃でもされるほうが厄介でしょうし」

「なるほどなぁ」


 そこらへんの政治的駆け引きはアルには分からなかったが、とにもかくにも大々的にエルフの里を保持している領主というのは珍しいものだ。気難しいが優れた魔力技術を誇るエルフと交流があるということは、それだけでメアの魔帝としての評価を高めるだろう。


 そうこう話している間にも目的の階に着いたようで、ようやく階段から解放された。


「そうですね……もう少しですし、最後に隣接する領地の話でもしますか」


 普段から過酷な訓練をしているアルですら、少しばかり脚が疲労を訴えてくるほどの階段だったが、ルカは気にしていないようで相変わらず優雅に歩いていた。ちなみにエルトは途中からアルに背負われている。


「ここ、クローリー領と隣接している領地は三つ。一つは第二十八魔王ミュウ・ニーリッヒが支配するニーリッヒ領。こことはかなり親交が深く、お互いに友好的な関係を築いています」


 アルは吹き抜けから階下を眺めつつ、ルカの話を聞いていた。どうやら話を聞いている間に相当階段を昇っていたようで、一階の床が遥か下に見える。距離にして30mはあるだろうか。


「次に、第五魔王インフェル・ノクターンが支配するノクターン領。領主のインフェルがかなり厄介な性質で、メア様を目の敵にしていますね。表立って敵対はしていませんが、何かとやっかみを投げてきます。当然関係は良好ではありません」


 あまりに高い場所だからだろう。アルと一緒に階下を覗き込んだエルトの体が、ビクッと震えた。


「最後に――第二魔帝クファ・エルメロイが支配するエルメロイ領。幸い領主のクファ様はかなり温厚な気質の持ち主なので、ニーリッヒ領ほどではありませんが、それなりに友好的な関係を築けていますね」

「第二魔帝、か」


 ルカの言葉に、アルは無意識のうちに生唾を呑み込んだ。


 メアと同じ魔帝の称号を持つ魔族。しかも第二魔帝の名を冠しているということは、相当に古株なはずだ。当然それに相応しい力を持っている可能性が高く、敵対すればクローリー軍とてただでは済まないだろう。


 幸いなのは、クローリー軍とは良好な関係を築けていることか。

 第二魔帝のクファ・エルメロイという人物のことは知らないが、ルカ曰く温厚な気質のようなので、それほど警戒はいらないらしい。当然油断はできないが、メアと友好的ということは、いつか会う機会もあるだろう。その時にでも、自分の目で確かめてみたいとアルは思った。


「さて、ようやく着きましたね。広すぎるのも考えものです」


 そう言ってルカは一つの本棚の前で止まり、やや悩んだ後、一冊の本を手に取った。


「これが僕のおすすめですね。現在の情勢を交えながら、魔界の地理を解説してくれています」

「おっ、助かる」


 アルは自分に差し出された本を受け取り、ペラペラとめくって見た。


「返却はいつでも構いませんから。気が向いたらまたお越しください」

「ありがとう。本とは関係なく雑談しにきてもいいのか?」

「はは、もちろんです。こう見えて僕、結構暇なので。いつでも歓迎しますよ」


 やや冗談交じりのアルの言葉に、ルカもおどけたように返した。





 こうしてアルはまた一人、ルカという友人を得たのだった。



 ちなみに長すぎる螺旋階段は、下りもそれなりに辛かった。








早めに出そうと思って全然出せなかった結果、先に名前だけ出てしまった女。

それがリズリット・ファン・リースフェルトです。

気づいたら警邏に出てしまいました……なぜ……。





☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



感想・誤字報告、お待ちしております。

少しでも面白い、気になると思っていただけたら登録お願いします。でも読んでくれるだけでありがたいので最悪しなくても良いです()。

嘘です、シテクダサイ。泣いて喜びます。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。