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 オリヴァーが与えられている部屋より、少し広いくらいか。

 そんな大きさの部屋に大小さまざまな棚が並べられ、宝石が溢れんばかりに詰め込まれていた。壁にも小さな板が取り付けられていて、針や糸、その他裁縫道具が綺麗に整列している。

 決して掃除が行き届いているわけではないが、持ち主の愛情が感じられる空気が満ちていた。


 オリヴァーに宝石の良し悪しは分からないが、その辺に無造作に転がっているダイヤモンドが、正規の手段で手に入れればかなりの額になるであろうことは容易に想像できた。


 一粒一粒の宝石が発光していた。複雑な光の帯が、宝石の中を縦横無尽に走っていた。のみならず部屋そのものも、空気の粒子が輝いているかのように明るかった。


 オリヴァーは唾を呑み込んだ。


 ここにある宝石一つだけでも、売ればどれくらいの額になるだろう。

 アイラの靴は確実に買えるな。パンも買える。もう「汚れ落とし」探しはしなくていい。綺麗な水だって飲める。もしかしたら野菜や肉だって買えるかもしれない……。


 いや、駄目だ。

 頭を振り、不埒な想像を払い落とす。

 こんな宝石を俺が持ってたら、どこからか盗んできたのだと思われて終わりだ。そうなればマックスさんにも迷惑がかかる。


 部屋を出ようとしたところで、ドア近くの棚の上に置かれている一冊のノートが目に入った。かなり使い込まれている。

 好奇心には抗えず、ページを捲った。


 小さくて几帳面な文字がびっしりと並んでいた。

 オリヴァーは文字が読めない。文字の読み書きができなくとも、肉体労働に耐えうる屈強な肉体を持っていれば、スラムでは生き残れる。

 何が書かれているのか皆目見当がつかなかったが、イラストもいくつか描かれていた。


 一人の人間が描かれていた。

 恐らく男、しかも少年だ。優し気な笑みを浮かべて正面を見つめている少年の腕には、何かが乗っていた。四角形を幾何学的に組み合わせたような複雑な形をしている。

 オリヴァーはイラストをまじまじと見つめた。

 これは……宝石? 

 部屋の中に積み重なっている宝石と形がよく似ている。


 人間に宝石が乗っかってる……いや、これは結合しているのか?


 同じようなイラストが何枚か続いた後、今度は男が描かれているページをオリヴァーは開けた。


 さっきの少年とは違い、明らかに成人男性だ。服を着ていない。女のように滑らかな腰の曲線と、股にぶら下がっている男性器の組み合わせがどこか奇妙で、同時にひどく扇情的だった。


 これは何の絵だろう。


 男の足元に何か単語が書かれていたが、オリヴァーには読めない。


 Wax figures――蝋人形


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