表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/50

33

「ダニエルの店なら知ってる。すぐ近くにサヴィル・ロウっていう通りがあるだろ。高級店が集まっている通りだ。そこにあいつは店を構えている。今日は確か定休日のはずだが、あいつの店は自宅も兼ねているから、今から行っても会えるかもな。『プロフェット&ナイト』っていう名前の店だ。角にあるから、行ったらすぐに分かるはずだぜ」


 昨日、ノアに会った。正確に言うなら、昼のピークを過ぎてマックスから「少し休んでこい」と言われたから、そこらを散歩でもしていたら、全速力で走ってきたノアにぶつかられた、だが。


 尋常ではなかった。風に飛ばされる枯れ葉のように吹き飛んだノアは、顔面蒼白だった。顔には、恐怖と混乱の表情が貼りついていた。面倒事には基本関わらないと決めているオリヴァーでも、思わず声をかけてしまうほどの錯乱ぶりであった。


 おい、大丈夫か。


 掴んだ腕はひどく震えていた。腕だけでない。足も、肩も、長い睫毛の一本一本さえが細かく震えていた。


 脳裏にアイラの姿が浮かんだ。普段は元気で満ち溢れているアイラだが、かつてスラム街を覆う夜の闇が怖いといってよく泣いていた。震えながらサイラスの腰に抱き着くアイラの頭を、オリヴァーは夜通し撫でた。


 何かに怯えるノアを見て、自分たちが守らなければ生きていけない幼い少女のことを思い出した。


 顔白いけど。気分悪い? 家まで送ろうか。


 オリヴァーの言葉に、ノアは首を横に振った。緩慢とした動作だった。


 いや、大丈夫だ……。


 ノアの視線がオリヴァーに向いた、と思ったら、見る見るうちに顔が強張った。彼の瞳は、オリヴァーの後ろにある何かを映していた。今までとは比べ物にならないほど顔色が悪くなり、直後吐いた。


 あ、おい! 


 慌てて背を摩ろうとすると、ノアは身を捩り、オリヴァーの腕を逃れてそのまま走り去っていった。


「そうだ、オリヴァー。ダニエルの店まで案内してやってくれないか」

「え」


 オリヴァーが顔を上げると、マックスは朗らかな笑顔で続けた。


「サヴィル・ロウ通りなら、お前の方がよく知ってるだろ。この時間、客はあまり来ないしな。お前はよく働いてくれてる。せっかくだから外の空気でも吸ってこい」

「オリヴァー君が案内してくれるのなら、助かるわ。サヴィル・ロウ通りの周辺には、まだ行ったことがないから」


 エヴァ・ミラーが嬉しそうに手を合わせる。話を聞き流している内に、自分はどうやら案内役に任命されたらしい。マックスに言われては、断るという選択肢もなかった。


「いいよ。俺、昔あの辺りをうろうろしてたからさ」


 犬の糞(ピュア―)を集めていたとは、流石に言えなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ