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 僕とテオは生まれてすぐに母親に捨てられた。


 どう考えても小さすぎるバスケットにぎゅうぎゅうに押し込まれ、孤児院の前にぼつんと捨て置かれていたらしい。

 骨の髄まで凍えるほど寒い夜だったそうだ。青白い満月が冴え冴えとした光を地上に降り注ぐ中、泣く気力すら失くして凍えていた僕たちを、職員の一人が発見した……と聞いている。


 その話を聞いたときに、何だか奇妙な心持がしたのだった。


 テオと、孤児院の職員、その他大勢の子どもたち。物心ついたときから彼らと共に暮らし、それが世界の全てだった。

 母親なる存在が世の中にいることは、孤児院に置かれている書物から知ってはいたが、それを自分と結びつけて考えたことはなかった。


 自分は女性の腹から生まれた、という事実に、僕は正直ぞっとしたのだった。


 横で話を聞いていたテオも、同じことを感じたのが分かった。双子はお互いの感情を、口に出すことなく共有できる。精神感応。意識することなく、気づいたら出来るようになっていた。


 低い鐘の音が鼓膜を震わせた。三食の飯の時間を知らせる鐘だ。

 立ち上がる。一枚の紙が滑り落ちた。


「忘れ物」


 テオは紙を拾い、紙に書かれた文章に目を走らせた。


「『木漏れ日が、水滴のように木の枝から滴り落ちていた。小鳥があちらこちらで可愛らしい泣き声を響かせ、遠くからは川のせせらぎも微かに聞こえてくる。爽やかな風が森を通り抜け、地面に蹲っている僕の髪を揺らした……』

詩人だな」


 僕は急いで、紙をテオの手から奪い取った。


「勝手に読むなよ。人に読ませるために書いたものじゃない」

「なんで? 別にいいだろ。お前が書く文章、好きなんだけどな」


 頬が紅潮するのが分かった。


 文章を褒められるのは、僕にとってこの上ない喜びであり、最も照れ臭いことでもあった。勿論それらの全てを分かっているテオは声を上げて笑い、「おやおや、どうしました? 本好きのお坊ちゃん」と揶揄うように言った。


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