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サヴィル・ロウは、コヴェントガーデンとは対照的に静まり返っていた。
日曜日は休みの店も多い。客もそれを承知している。気持ちの良い青空の下で人々が休暇を楽しむ中、ほとんどの店が閉まったサヴィル・ロウは、忘れ去られた廃村の一角だ。
「おや」
立ち止まる。
「プロフェット&ナイト」の店前に一人の女性が立っていた。美しい女性だった。恐ろしいほど静かな空気を湛えている。常連客にこんな女性はいなかったな、と考えながら眺めていると、目が合った。背筋をぴんと伸ばした彼女は、軽く頭を下げた。
「初めまして。『プロフェット&ナイト』の店主のダニエル・テイラーさんでしょうか」
「ええ。間違いなく僕がこの店の店主ですが。何か御用でも?」
「申し遅れました。私、エヴァ・ミラーといいます――蝋人形師です」
二階から物音が聞こえた気がした。ノアの部屋の方向だった。




