98. 旧友との再会
読んで下さってる皆さん、本当にありがとうございます。
もう少しで第一部が終わります。どうぞよろしくお願いいたします。
今年の宮廷大学入学式は、単なる入学式ではなくなっていた。
魔人討伐の功績を称える表彰式も兼ねることになったため、一般民衆も注目する一大イベントと化していた。
そして、魔人討伐に参加した貴族出身の受賞者たちに、家名に対する栄誉にもなったため、正装をして複数の従者を引き連れ、家の紋章が記された旗を掲げて大学へ向かうこととなった。
そのため、宮廷大学へ向かう受賞者たちの行列は、半ば公的な式典のようなものとなり、それぞれが家の威信を背負い、小さなパレードの様相を呈していた。
沿道には大勢の見物人で溢れかえり、それぞれの家の行列を見比べて楽しんでいた。
その中でも、ひときわ注目を集めていたのが、ルクサリス家だった。
アレクシオスも、ルクサリス家の名誉とカテリーナの護衛のため、呼び寄せた数名の騎士たちと共に、家紋入りの旗を掲げて式典会場へ向かうこととなった。
もともとその功績と美貌で名高いアレクシオスに加え、大聖女アナスタシアの娘であり、魔人を討伐し、女神の奇蹟を体現したと噂されるカテリーナ。
さらに騎士コース選抜トーナメント優勝や、現国王の甥セバスティアノスから求婚されたという話まで広まっており、人々の関心は彼女へと集中していた。
宿から大学まではそれほど遠くはなかったが、ルクサリス家の「二代目聖女」を一目見ようとする群衆のために、一行はなかなか前へ進めなかった。
そのため、かなり早めに出発はしたものの、想定していた倍以上の時間がかかって、ようやく大学へ到着したのだった。
「ふぅ……」
カテリーナは、大きく息を吐いた。
「疲れたかい?」
「聖女なんかじゃないのに……」
アレクシオスは苦笑した。
「大衆の間では、もう二代目聖女という認識みたいだね」
「それだけ、お母さまが偉大だったということですね……」
「……いや、君自身もだよ」
「えっ?」
振り返ると、アレクシオスはまるで恋人を見つめるかのような眼差しでこちらを見ていた。
「ちょ、ちょっと、お兄さま、そんな……見つめないでください。照れますわ」
「ああ、すまない」
アレクシオスは小さく笑う。
「僕も美しい聖女に魅入ってしまったよ」
「もう、酷いですわ……。魔力がない女を聖女とからかうなんて……」
「いや、間違いないんだ……。僕は知っているからね」
「……はい?」
その時だった。
「カテリーナ・ルクサリス様でいらっしゃいますね。どうぞこちらへお願いいたします」
式典関係者が近づいてきたため、会話はそこで途切れた。
今回の式典には国王をはじめ、国の重臣たちも列席する。
会場全体には緊張感が漂い、関係者たちは慌ただしく動き回っていた。
カテリーナはアレクシオス一行と分かれ、案内されるがままに受賞予定者たちが待機するホールへ向かうことになった。
ホール内にはすでにたくさんの受賞者たちがおり、それぞれ談笑していた。
「もしかして……カテリーナちゃん?」
「えっ?」
振り返ると、小柄な少女が立っていた。
眼鏡をかけた知的な雰囲気の少女だった。
「マクリナよ。マクリナ・アナグノスティナ」
その言葉を聞いた瞬間、幼い頃の記憶が蘇る。
「小さい頃、一緒によく遊んだじゃない」
ルクサリス侯爵家と親交のあったアナグノスティナ伯爵家。
二人は同年齢の令嬢として、幼い頃はよく一緒に遊んでいたのだった。
そして、その面影は今もほとんど変わっていなかった。
「マクリナちゃん!!」
カテリーナは思わず少し大きな声を上げた。
「久しぶり!」
マクリナは嬉しそうに駆け寄り、そのままカテリーナを抱き締めた。
そして、カテリーナの手を両手で握ると、やや興奮気味に話し始めた。
「聞いたよ! 魔人を討伐したんでしょ! しかも女神さまの奇蹟まで起こしたって!」
「いやいや、私一人の力じゃなくて、みんなで力を合わせて倒せたんだよ。それに、私自身は女神さまの姿を見ていないから、正直何も分かっていないんだ」
「それでも凄いよ! 騎士コースのトーナメントでも優勝したんでしょ!」
「はは。そんなに褒められると……照れるよ」
カテリーナは少し顔を赤らめながらも、思わず笑みを浮かべた。
久しぶりに再会した旧友は、記憶の中と変わらない優しいマクリナのままだったからだ。
カテリーナは、それが何よりも嬉しかった。
「……あっ、ここにいるってことは、マクリナちゃんも受賞者なの?」
「うん。魔術師コースを受験したんだけど、トーナメントで二位になったの」
「えっ!? 凄いじゃない!」
カテリーナは目を輝かせる。
「人気の高い魔術師コースで選抜者になって、その上で準優勝だなんて、本当に凄いよ!」
「ありがとう」
マクリナは少し照れながら笑った。
「……でも、一位の人との差が大きすぎて、ちょっと自信をなくしてたんだ」
「そんなこと――」
「……貴様か!」
突然、割り込むかのように、怒気を含んだ男性の声が響き渡った。
カテリーナの瞳には、長身の一人の青年が歩み寄ってくる姿が映っていた。
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