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蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー  作者: みーしゃ
第一部 王立宮廷大学を目指そう!

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91. 聖女の噂

 読んで下さってる皆さん、本当にありがとうございます。

 もう少しで第一部が終わります。どうぞよろしくお願いいたします。

 魔人討伐の報は、城へ避難していた国王のもとへ、ただちに届けられた。


「――何だと!?」


 伝令は、興奮を抑えきれぬ様子で報告を続けた。


「選抜者トーナメントに出現した魔人は、マギストロスさまの障壁魔法の内部にて、受験生たちが応戦し――討伐されました!」


 その一言で、皆が固まった。

 王城の一室。重厚な扉の内側で、国家の中枢が一瞬静まり返ってしまった。


「受験生が……魔人を討っただと……?」


 その場に居合わせた国家の重鎮たちが、思わず顔を見合わせた。


――魔人。


 約二百五十年前に勃発した、魔神大戦。

 魔人たちにより多くの人命が奪われたが、「希望の(ト・フォース・)灯火(ティス・エルピドス)」と呼ばれる者たちが現れ、人類は魔法をもって魔人たちに対抗する術を得た。


 やがて魔人を操る魔神(まじん)をも討ち果たし、世界にはようやく平和が訪れた。

 それ以降、魔人は急速にその数を減らしていった。

 魔人との闘いは、最後の記録からすでに十五年も経っていた。


 この場にいる重鎮の中には、かつて魔人と対峙した経験を持つ者もいた。

 熟練の騎士たちが損害を覚悟し、ようやく一体を討てるかどうか――

 それが魔人という存在であった。


 それを、まだ騎士の訓練すら受けていない、受験生たちが討伐するなど――

 到底、信じがたい話だった。


「……どうやって討ったのだ?」


 低く押し殺した声が問う。

 伝令は一瞬ためらったが、絞り出すように言葉を発した。


「それが……受験生の一人、カテリーナ・ルクサリスという者が、突きにて仕留めたとのことです」


 その名に、室内がざわめく。


「ルクサリスだと?」


「あの大聖女さまの血筋か……」


「確か、娘がいたはずだな」


「いや、待て……神聖騎士団副団長のアレクシオス殿と、取り違えているのではないか?」


「いえ、確認は取れております!」


 伝令ははっきりと否定した。


「アレクシオスさまは神聖魔法により負傷者の治療に専念されており、障壁の外におられました。討伐には関与しておりません」


 重鎮たちは押し黙る。

 だが――報告は、まだ終わっていなかった。


「……さらに」


 伝令は、わずかに声を落とす。


「魔人をその剣で貫いた瞬間――天より光が差し、女神の御手が彼女を包み込んだ、と……現場にいたすべての者が証言しております!」


「馬鹿な……ありえん!」


 強い否定の声が上がった。

 しかしそれは、理性から判断した言葉ではなかった。

 長年信仰を続けながら、一度として女神の奇蹟を目の当たりにしたことのない者の、嫉妬にも近い感情の吐露だった。


「……聖女が起こす奇蹟」


 誰かの、かすかな呟きだった。

 だがその一言は、その場にいた者たちの空気を一瞬で変えてしまった。


 そして今回の顛末は、さらに周囲の者たちへと伝えられ、ゆっくりと、だが確実に広がっていった。

 この連鎖は、もう誰にも止めることはできないものになっていた。



   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 年に一度の祭りは、熱狂が一瞬で恐怖へと変わり、そして夜には興奮へと変わっていた。

 王都の民の間で広まっていたのは、恐怖でも歓喜でもなく、“奇跡”の噂だった。


「聞いたか!?」


「魔人だ! スタジアムに魔人が現れたらしいぞ!」


「しかも、それを倒したのが受験生の少女だって話だ!」


「いやいや、それだけじゃない! 女神さまの奇蹟が起こしたんだそうだ!」


「しかもその少女は、大聖女アナスタシアさまの娘だとか……!」


 その一言で、噂は“確信”に変わる。

 人は、信じたい物語を選ぶ。

 そして――その物語の主人公の名は、王都の至るところで囁かれていた。


 路地で。

 酒場で。

 市場で。

 貴族の屋敷でも、同じ名が囁かれていた。


 ――カテリーナ。


 その名は、すでにただの個人のものではなくなりつつあった。

 だが――当の本人だけが、まだそのことを知らなかった。


 自分が何者として語られ始めているのかを――

 まだ、何一つ。


 面白かったり、続きが気になったら★3つ評価をお願いいたします。

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