101. 入学式
読んで下さってる皆さん、本当にありがとうございます。
もう少しで第一部が終わります。どうぞよろしくお願いいたします。
――宮廷大学の入学式の日。
大学の大広場は一般にも開放され、関係者だけでなく、多くの市民が式典を見学するために集まっていた。
例年であれば、入学式は受験者選抜トーナメントほどの盛り上がりはなく、学内の祝祭として催される程度の規模である。
しかし、今年は違った。
数十年ぶりに出現した魔人を受験生たちが討伐し、さらに女神の奇蹟まで起きた――。
その中心にいた少女の話は瞬く間に国中へ広まり、表彰式も兼ねた今年の入学式は、かつてないほどの注目を集めていた。
そのため、大広場は人で埋め尽くされ、構内は身動きも難しいほどの混雑となっていた。
さらに、再び魔人が出現する可能性も考慮され、警備を担当する盾の騎士団だけでなく、他の騎士団からも応援が派遣されるなど、式典に関わる人員は例年とは比較にならない規模となっていた。
混雑の影響もあり、入学式は予定よりやや遅れて開会した。
カリスティア国王の祝辞、マギストロス学長の訓示が終わると、いよいよ入学者の表彰へと移っていく。
最初に、魔導師コース選抜者の表彰が始まった。
司会者が受賞者を一人ずつ紹介し、上位三名については出自や得意魔法なども詳しく紹介された。
そして、上位三名だけに授与される徽章が胸元に付けられたときには、会場からは大きな歓声が沸き起こるのだった。
この徽章にはさまざまな種類があり、在学中も多くの授与の機会が設けられている。
徽章を多く持つことは、学生にとって大きな名誉となり、モチベーションを上げていく原動力にもなっていた。
今年度の魔導師コースのトーナメントにおいて、圧倒的な成績で優勝したアンドロニコスが紹介されると、貴族席からは一際大きな歓声が上がった。
国家屈指の名門・パンクラトル公爵家の嫡男。
膨大な魔力と端正な容姿を兼ね備え、セバスティアノスと並び称される貴公子として、貴族の間では絶大な人気を誇っていた。
しかし、当の本人に笑顔はなかった。
壇上で栄誉を受けながらも、その瞳には冷たい色が宿っていた。
「……あの女さえ、いなければ」
司会者が称賛の言葉を並べる中、アンドロニコスは誰にも聞こえない程の大きさで小さく呟いた。
次に騎士コース選抜者の表彰が始まると、今度は貴族席だけでなく、広場の一般市民からも大きな歓声が上がり始めた。
その理由は二つあった。
一つは、騎士コースの選抜者の中に、平民出身者が二名含まれていたこと。
そしてもう一つは――。
未熟な受験生たちだけで、突如現れた魔人を討伐したという前代未聞の功績だった。
その中でも、上位三名の名前が呼ばれた瞬間、会場の熱気はさらに高まっていく。
「第三位、ヨアニス・イアニス殿」
平民出身でありながら選抜者に選ばれて三位となり、魔人戦では毒を用いて敵を弱体化させた功績が広く知れ渡っていた。
そのため、市民たちから絶大な人気を集めていたのである。
続いて、第二位の受賞者が紹介された。
「第二位、セバスティアノス・レオニダス殿」
その名が響いた瞬間、再び大きな歓声が広場を包み込んだ。
現国王の甥であり、名門レオニダス公爵家の嫡男。
剣技と雷撃魔法の双方に優れ、容姿端麗な貴公子として名高い彼は、貴族だけでなく一般市民からも絶大な人気を集めていた。
壇上へ進み出たセバスティアノスは、落ち着いた所作で国王へ一礼し、徽章を授与される。
その凛々しい姿に、観客席のあちこちから黄色い歓声が飛び交う。
しかし――。
その熱狂すら、次の瞬間には塗り替えられることになった。
司会者が深く息を吸い、大きく声を張り上げた。
「それでは、騎士コース選抜トーナメント優勝者にして、本年度入学者主席――」
一瞬、会場が静まり返る。
誰もが、その名が呼ばれるのを待っていた。
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