表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
60/62

第六十週 心理テストが外れてしまった!(月曜日)

 月曜日。

 うちの高校で実施(じっし)されている夏休みの午前の授業が終わってから、わたしは左隣(ひだりどなり)の席を見た。


 そこに、えくぼの素敵(すてき)な男の子・束花(そっか)りくくんが(すわ)っている。

 ちょうどそのとき、鵜狩(うかり)くんが束花(そっか)くんに(はな)しかけていたよ。


束花(そっか)(おれ)に用があるんだよな」


 どうやら二人(ふたり)は事前に(はな)す約束をしていたみたい……!

 束花くんはえくぼを作ってスマートフォンを(かか)げたよ。


「うん。ちょっと鵜狩くんにやってほしいことがあってね」


 映っているのはアプリの画面だった。

 画面には「ドギマギ心理テスト!」という名前のロゴがおっきく表示されているよ……っ!


「この心理テストのテストプレイをしてほしいんだ」

「いいけど……聞いたことのない名前の心理テストだな」


「それ、ぼくが作ったから」

「え、すごいじゃないか、束花(そっか)


 鵜狩くんも感心している……!

 実際、束花くんはとても頭がいい。そして紙粘土(かみねんど)擬似的(ぎじてき)な虫の標本を作ることも得意だ。


 だから人の心を細かく(とら)えるのもまた得意なんじゃないかな。

 前に矢良(やら)さんが言ってたんだけど、束花くんは「理由」から「行動」を起こす人というよりは、「行動」から「理由」を考える人なのかもしれないんだって。


 心理テストも、あとから「理由」や「心の状態」を明らかにするものだから……なんか束花(そっか)くんにピッタリはまる感じがする。


 ……と考えながら二人の様子を観察していると、束花くんがわたしと目を合わせたよ。


「よかったらこんしまちゃんもアプリのテストをしてくれるかな?」

「任せて……」


 というわけで、鵜狩(うかり)くんと一緒(いっしょ)にわたしも心理テストのテストをおこなうことになった……!


 その前に、あらためてわたしも鵜狩くんも、前に束花(そっか)くんちに()がってお(たが)いの標本を作らせてもらったことのお礼を言ったよ。


 あのときは束花くんにお世話になったから今度はわたしと鵜狩くんが束花くんのためになにかできたらうれしいな。


♢ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 束花(そっか)くんのスマートフォンを鵜狩(うかり)くんとのぞき()んで、「ドギマギ心理テスト!」を始めるよ……!


 さっそく「問い」が表示される。


『あなたは動物園に来ています。でも、見るのがちょっと(こわ)い動物もいます。その動物は次のうちどれ?』


 選択肢(せんたくし)を提示するタイプの心理テスト……っ!

 しかもカウントダウン付きだから、去年(きょねん)見たインタラクティブ映画を思い出す。


 こういうのは変に考えずに直感的に選んだほうが心理テストの精度が()がるのかもしれないね……!


 四択(よんたく)……ッ!


『1・ライオン 2・ゾウ 3・ナマケモノ 4・ゴリラ』


「う~ん、選ぶなら『1』かなあ……?」


 回答はわたしと鵜狩くんで交互(こうご)に担当することになっているよ。

 わたしがライオンの画像をタッチすると、結果が出た……っ!


『あなたは冷静沈着(ちんちゃく)な人です。周囲の意見に流されず、きちんと自分の考えを持って物事を観察できています。(こわ)がりと誤解されることもありますが、いざというときの決断力(けつだんりょく)はだれにも負けていません』


「……なんか合ってるかも。でも冷静沈着って言われると照れちゃうかな……」

「そっか。ありがとう、こんしまちゃん」


 束花(そっか)くんはうなずいて、わたしの言葉をノートにメモしたよ。

 じゃあ次の問いに()く……っ!


『あなたはとても暑い砂漠(さばく)を1人で歩いています。のどはカラカラです。そんなとき天から声が聞こえました。「おまえの望む飲み物をコップについで出してやろう。ただし飲めるのはその1(ぱい)だけだ。なにを望む」と。あなたはなんと答えますか』


 さっきはわたしが回答したから今度は鵜狩(うかり)くんの番だね。

 選択式じゃなくて、直接文字列を打ち込む必要があるみたい……!


 束花くんにも()えるよう、わたしたちはスマートフォンを(つくえ)に置いたまま操作(そうさ)している。


 減っていくカウントも一目(いちもく)瞭然(りょうぜん)だよ……っ!


(なや)むけど、体にいいのがよさそうだね」


 そうつぶやいて鵜狩くんが入力したのは――「梅酢(うめず)」だった!

 すると画面が切り()わって鵜狩くんの心理テスト結果が表示されたよ。


『その飲み物は、あなたが心の底から気に()っている人に対するイメージそのものです。飲み物の(かお)りは第一(だいいち)印象(いんしょう)を、味やのどごしは相手の(かく)している魅力(みりょく)(あらわ)しています』


 合っているかはともかくとして、わたしだったら「緑茶」を選ぶかなあ……?


 じゃ、どんどん心理テストを進めていくよ……っ!


『この絵はなんに見えますか』


 質問文と共に、よく分からない白黒の模様(もよう)が画面に映し出された。


「あ、これ知ってる……ロールキャベツテストだよね」

「ロールシャッハテストだよ」

「しまった……」


 冷静に束花(そっか)くんに指摘(してき)されてしまった。()間違(まちが)えるなんて()ずかしい……。


 ともあれ回答するよ。

 だけど束花くんによると、実際のロールシャッハテストに変更(へんこう)を加えて、模様は束花くんオリジナルのものを使っているみたい。


 左右非対称(ひたいしょう)で、左から右に向かってゆるやかな(のぼ)(ざか)ができているね。

 坂の(した)からは足跡(あしあと)みたいなかたちがいくつか()き出ている……っ!


「……恐竜(きょうりゅう)?」


 回答を入力すると、すぐにテスト結果が返ってきた……!


『あなたが絵からイメージしたものは、あなたが潜在的(せんざいてき)(あこが)れているものです。ただし、これはただの憧れではありません。憧れていると同時に、あなたはそれに近寄るのを(おそ)れています』


「確かに恐竜に会えたら(たの)しいだろうけど……すぐにやっつけられちゃうかもね」

「そっか、参考になるよ」


 アプリ画面もじ~っと見て、束花くんがノートにペンを走らせる。


「でもテスト結果の文章がネガティブ寄りになってる感じがするから、まず『恐れ』のほうを提示してから……そのあとで『それは憧れでもある』と明かしたほうがいいかな」


 プラスからマイナスの話題に移るより、マイナスからプラスの話題に()ったほうがいいってことかな……。


「……あ、ちなみに鵜狩(うかり)くんはさっきの絵をなんだと思った?」

忍者(にんじゃ)屋敷(やしき)だな」


「そっか。鵜狩くんは忍者が好きだから、近寄るのを恐れているっていうテスト結果は外れてしまったかたちになったね」

「いいや、そうでもないよ束花(そっか)。忍者屋敷で心が(おど)るのも事実だけど、やっぱり油断すると俺でも脱出(だっしゅつ)できなくなる恐ろしいカラクリ屋敷だし」

「まるで本当の忍者屋敷に潜入(せんにゅう)したことがあるみたいだね」

「あ、いやそれは……っ」


「心のなかの忍者屋敷なんだよね、鵜狩くん……」


 わたしはそれっぽいことを言ってみたけれど、直後よく分からないことを口走(くちばし)ったことに気づいちゃった。


「しまった」

「うっかりなんてことはないって、こんしまちゃん」


 自分の胸をたたく鵜狩くん……っ!


「実際、俺の心には大きな忍者屋敷がある」

「よかった……」


 心のなかになにがあるのか考えるのも心理テストかもしれない……!


「わたしの心にも冷鉱泉(れいこうせん)()き出ているよ……束花くん、これをどう見る……?」

「おもしろい質問だね。二人の心の情景も、(ひと)つの憧れの(あらわ)れかもしれない。なんというか……安らぎ? みたいな感じもする」


 とにもかくにも次の心理テストに移る……。


『あなたは人と両手をつないで輪を作ろうとしています。自分を(ふく)めて何人の輪を作りたいですか。数字で回答してください』


 鵜狩くんが「29」という数字を打ち込むと――。


『それはあなたが求める親友の最大(さいだい)人数です』


 ――ちょっとドギマギしちゃった。


♢ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 こんな感じで「ドギマギ心理テスト!」のいろんな問いに答えていったよ。


 自分の好きなこととか、こだわりとか……そういうのが(ひと)つ一つ(あば)かれていく感じがするのがとってもいいね。


 束花(そっか)くんによると、心理テストは絶対的なものでもないんだって。

 だから深刻になりすぎずに(たの)しんでもいいみたい。


 で、終わったあとわたしたちは学食に()くことになったんだけど、束花くんがその前に飲み物をおごってくれたよ。


「二人とも、ありがとう。本当に参考になった。お礼になんか買ってくるけど、なに飲みたい?」


「お茶かな……」

「俺も」

「あ、そうだ……わたし、心理テスト思いついた……」


 その詳細(しょうさい)を束花くんにも聞かせる……っ!


「ここで選んだ飲み物が今の自分の心理状態を如実(にょじつ)に示している……。つまりその飲み物こそが自分が現在飲みたいと思っている飲み物なんだよ……!」

「なるほど、哲学的(てつがくてき)だな」


 首をひねりつつ、鵜狩くんは小さく目を細めたよ。

 一方、束花くんはあごに指を当ててもっと首をかたむけていた……っ!


「そのまんますぎるような気も……」

「しまった……」


 言われてみれば束花くんの「ドギマギ心理テスト!」と比べるとまだまだ浅かったかも。


 学食に移ってから、わたしはほかの心理テストも考案してみる……!


「こういう問いはどうかな……『あなたは財布(さいふ)(ひろ)いました。どうしますか』とか」


「……そういうのは、しかるべき場所に届けないとな」

「ぼくも鵜狩くんに同意」


「二人とも、いい子だね……!」


「でも答えが決まっている問題ではあるかもね」


 その鵜狩くんの指摘に、わたしはハッとさせられた。

 やっぱり心理テストはみんなの意見が分かれたほうがおもしろい気がする……!


「じゃあ選択肢を設けてみるよ……『あなたは宇宙人です。ユーフォーの燃料が切れて地球に不時着しました。だけど燃料を調達しようとユーフォーから出たところ1人の地球人に見つかってしまいました。どうしますか。次のなかから選んでください。1・()げる 2・仲よくなる 3・死んだフリをする 4・相手の記憶(きおく)を消す』……こんな感じで」


「記憶を消す技術も持っているのか。そのとき相手に危険はあるの?」

「ないよ……」

「なら俺は『4』かな」


「……束花くんは?」

「ぼくは『3』で」


「3はがんばりやで、4は知識の探求者かな……?」

「だったら『1』と『2』はどうなんだ、こんしまちゃん」

「えっとね、鵜狩くん……1は努力家で、2は天才肌(てんさいはだ)……っ!」


「おもしろいテストではあるけれど、ぼくが『がんばりや』って感じはしないような」


 大きなえくぼを()かべる束花くん。

 て、適当だったかな……。


「しまった……ごめんね」

「いや、むしろその心理テストのおかげでぼくにも『がんばりや』の側面があるのかもって思えたよ」


 心理テストは、自分の心を「こうだ!」と確定させるものじゃなくて……自分の心と向き合うきっかけの(ひと)つなのかもしれない。


 わたしもさっきの問いに回答してみる……っ!


「宇宙人のわたしが地球人と会ったら、『2・仲よくなる』を選ぶと思う……」

「2は天才肌(てんさいはだ)だね」

「しまった……わたし、そんなんじゃないよ……」


 ほほえんだ鵜狩(うかり)くんと束花(そっか)くんに同時に言われちゃった……。


 この心理テストは外れてる?

 でも本当だとしても、それはそれで悪くない。


 心理テストって、そんな感じでいいのかもね。


♢ ※ ※ ※ ※ ※ ※


☆今週のしまったカウント:五回(累計(るいけい)二百五十回)

次回「第六十一週 再び冷鉱泉につかってしまった!(土曜日)」に続く!(八月七日(金)十九時から二十三時五十九分のあいだに更新)


「今週のしまったちゃん」をお読みくださりありがとうございます。評価やブクマ、感想等も励みになります。


それにしても心理学ってなんかカッコいいですよね~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ