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第五十二週 人狼ゲームがグダってしまった!(月曜日)

 紺島(こんしま)みどりは一週間(いっしゅうかん)一度(いちど)は「しまった」と言う「今週のしまったちゃん」なんだけど――。


 本当に人間か? と疑われることもなくはない……ッ!

 事実、クラスメイトの飯吉(いいよし)(かのえ)くんは思ったことがある。こんしまちゃんの正体はちっちゃなスフィンクスではないかと。


 まあそれを言いだしたら目の前にいる人も、あるいは自分でさえ本当に人間なのか証明するのは難しい……!


 というわけで今回は人間のフリをしたヤツを見抜(みぬ)く有名なゲーム「人狼(じんろう)ゲーム」をやってみる。


♢ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 月曜日の昼休み、場所は教室。

 こんしまちゃんは鵜狩(うかり)慶輔(きょうすけ)くん、アヤメこと菖蒲(しょうぶ)佳代子(かよこ)さん、矢良(やら)みくりさんの三人(さんにん)(はな)()んでいた。


 ちょっと調子がいい状態の矢良さんを気づかいながら、こんしまちゃんが提案する……っ!


「きょうは人狼(じんろう)ゲームやろう……」

「なんで人狼?」


 アヤメが即座(そくざ)にツッコんだ。

 ドヤ顔で答えるこんしまちゃん……!


「やったことないから……」

「じゃ、やろうよ。だけどこんしまちゃんはルール分かるの?」

「しまった……」

「分からないんだ」


 人狼のルールについて、アヤメが簡単に説明する。


「とある村に、人に変身できる(おおかみ)――人狼(じんろう)がまぎれ込んだところからゲームは始まるよ。狼は本物と()()わって村人のフリをし、(よる)が来るたびに村人を一人(ひとり)ずつ()み殺していくんだ。村が全滅(ぜんめつ)する前に狼をすべて見つけ出して(たお)すことができれば村陣営(じんえい)の勝ち。逆に自分たちと同数以下まで村人を減らして村を確実に(ほろ)ぼせるところまでいったら狼陣営の勝ちってゲーム。参加プレイヤーは複数人。基本的には村陣営と狼陣営で勝ちを競うゲームだよ」

「おもしろそう……」


「こんしまちゃんが提案したんじゃ?」

「しまった」


 とりあえずやってみる。


「まずはチュートリアル。一人(ひとり)から始める……!」

「まさかの一人(ひとり)人狼(じんろう)


 さすがのアヤメもツッコめぬ。

 鵜狩くんが指摘(してき)する。


「それだと狼一匹(いっぴき)か村人一人という内訳になって戦いが永遠(えいえん)に始まらないな」

「……しまった、数を増やさないとね」


 反省したこんしまちゃんが前提を見直す……ッ!


「じゃあ狼と村人が一人(ひとり)ずつという状況(じょうきょう)から開始しよう……一対一(いったいいち)のデスマッチ村……!」

「タイマンなら狼が勝つと思うよっ」

「またまたしまった」


 矢良さんにもツッコまれてしまったので、さらに人数を足すこんしまちゃん……!


「よし……三人村でいこう。狼が一人? いや一匹? 村人と入れ替わってるよ……じゃ、最初は鵜狩くんが狼役ね……」

「分かった」


 素直(すなお)にうなずいた鵜狩くん。

 しかしアヤメが(あわ)ててとめる。


「待った待った、こんしまちゃんも鵜狩くんも。最初にだれが狼か分かっていたらゲームが成立しないってば。村人が数の(ちから)で狼を始末して終わりになるよ!」

「しまったうっかりしてた」


「う~ん、どうしよっか~。今の状況(じょうきょう)だとゲームマスターがいてもこっそり教えるのは難しいだろうしっ」


 ここで矢良さんは、教室にいる男の子の一人に声をかける。


嫁田(よめた)くん嫁田くんっ」

「え、矢良(やら)(おれ)を呼んだの?」


 八重歯(やえば)をちらりとのぞかせたあと、嫁田(よめた)(しゅう)くんがこんしまちゃんたちの(つくえ)に近寄る。


 人狼ゲームをやろうとしているところだけどこっそり狼役を決めるにはどうしたらいいかと矢良さんが聞くと、嫁田くんは()ました顔で答えた。


「あー、それなら人狼ゲーム用のアプリがあるから使ったら? タダでインストールできるヤツもあるし」


 嫁田くんのアドバイスに(したが)い、こんしまちゃんたちはさっそくスマートフォンに人狼アプリを入れ込んだ。

 鵜狩くんがアプリ内で村を作成し、矢良さんとこんしまちゃんをその村に(まね)()れる……!


 みんなの様子を観察しながら、嫁田くんはうなずく。


「それぞれの役職を勝手に指定してくれるからゲームマスターがいなくても人狼ができるんだよ。狼同士の会話も文字でやりとりすればいいし」

「便利だねっ、教えてくれてありがとんっ」


 矢良さんたちが嫁田くんにお礼を述べた。

 さてさて、こんしまちゃん・鵜狩くん・矢良さんで三人人狼の開始だ……ッ!


「わたしは狼じゃないよ……」

「俺もただの村人」

「あたしも同じくっ」


 全員が村人であることを主張……ッ!

 そりゃ当然だ。村人陣営なら自分が村人であることを明かしてほかの二人に狼がまぎれ込んでいると確定させたいし、狼陣営であれば自白した時点で正体がバレてしまうのでウソをつくしかない……!


 なお村人視点ではほかの二人の正体は分からないけれど、狼視点では自分以外の二人が村人であることは()えている。


 とはいえこのままだと議論は平行線になる……っ!

 そしてこんしまちゃんがとある疑問を(くち)にする。


「この人が狼だ! って思ったら……具体的になにをすればいいのかな。放置していたら村人が噛まれるんだよね……そうなったら結局、狼と村人が同数になって村人の負けになるけど……」

処刑(しょけい)


 アヤメと嫁田くんが同時に言った。


一日(いちにち)一人(ひとり)ずつ()るすんだよ」

「ひええ……っ」


 ガタガタ(ふる)えだしたこんしまちゃん……っ!

 あくまでゲーム上の表現であることは分かっているものの、なんか物騒(ぶっそう)な感じはする。


「ぜひとも本当の狼を始末しなきゃね……」


 表現を変えてもちょっと(こわ)い。

 そんなこんしまちゃんを鵜狩くんがじい~っと観察している。


「思ったんだけど、こんしまちゃんは村人っぽい。おびえ方が純粋(じゅんすい)だし」

「鵜狩くん……そうだよ、わたしは村人だよ」

「だったら消去法で矢良があやしいってことになるか」


「え、やだなあっ。あたしも狼じゃないから。……もしかして鵜狩くん、こんしまちゃんを味方につけてあたしを吊るすために動いてないかなっ。となると鵜狩くんが人狼……」

「いいや、俺は村側」

「だからあたしが村人……」


 鵜狩くんと矢良さんの議論を(なが)め、こんしまちゃんが首を左右に小刻みに動かす……ッ!


「ど、どっちが狼……?」


 しかし人狼アプリが議論の制限時間が来たことを告げる。


「……どうやって吊るす人を決めるのかな。この村が独裁政権だったら村長の一存(いちぞん)で……」

「多数決だよ、こんしまちゃん」


 アヤメが目をそらしつつ教えた。


「全員の投票で決めるの。そのアプリだと、だれがだれに()れたかも分かるはず。ただし票が並んだら仕切り直しになるんじゃないかな」

「民主的だね……あ、投票ボタンが表示された……」


 投票結果は――。


 こんしまちゃん→鵜狩くん

 鵜狩くん→矢良さん

 矢良さん→鵜狩くん


 よってもっとも多い二票を獲得(かくとく)した鵜狩くんが人狼っぽいってことで処刑された……!

 本当に鵜狩くんが狼であれば新たに村が(おそ)われることはなく、平和なあしたがやってくる。


 でもそうじゃなかった場合、狼は正体を現して残りの村人をタイマンで噛み殺すだろう。

 矢良さんの画面にメッセージが表示される。


『あなたは処刑されなかった人狼に襲われて死にました。よってあなたの所属する村人陣営は敗北となります。人狼陣営の勝利です』


「……え、ウソ。やられた~」

「そう……実はわたしが狼だったんだよ……」


 ついにこんしまちゃんが正体をばらした……!


「自分が村人だと主張するとかえってあやしまれる……だから『どちらが狼か分からない』ってスタンスをアピールしたの……そうすれば、自分以外が村人であると分かっている狼視点っぽくなくなるよね……」

「おお~」


 ほかのみんなが、こんしまちゃんの戦略に感心する。


 ルールへの理解も深まってきたところで、次は四人で人狼だ。

 アヤメもアプリを使用し、ゲームに参加する。


「四人村だと狼は一人だね」

「アヤメちゃん、二人以上の可能性は……?」

「それだと同数以下の村人を噛みつくして最初から狼側が勝利することになるから前提として成り立たない」

「しまった」


 だけど、こんしまちゃんはアヤメにまだまだ聞いてみる。


「どうして狼は一人ずつ噛むと思う……? 一気に全滅させたほうがよくない……?」

派手(はで)に動くと正体がばれる可能性があるから。狼だって自分たちよりも多い人数には勝てないから慎重(しんちょう)になるの」


「じゃあ村での処刑が一人ずつなのはなんでなんだろ……」

「なにもしないと、夜な夜な狼に村を蹂躙(じゅうりん)されるだけ。でもだからって一度(いちど)に大量に処刑をおこなえば議論が不充分(ふじゅうぶん)なうちに善良な村人がまとめて死ぬリスクがある。そうなると狼陣営への利敵(りてき)行為(こうい)になっちゃうわけ」

「ちゃんと理由があるんだね……」


 とにかく、だれが狼かあぶり出すために議論をおこなう。

 もちろん狼に選ばれたなら、自分が村人であるとみんなをだましたり自分以外を狼に仕立て上げたりする戦略が必要になってくる。


 といっても三人村のときと同じで、みんな自分が村人であると主張するのは変わらない。


「あたしとしては、さっきこんしまちゃんが狼だったから二回連続はなさそうと思うなっ」

「でもみくりちゃん。逆に、またこんしまちゃんが人狼の可能性だってゼロじゃないんじゃないかなあ」

「いやいやアヤメちゃん……矢良さんの言うとおりだよ。今度こそわたしは村人だもん……」

「俺もこんしまちゃんは除外(じょがい)していいと感じる」


 こんな感じの議論が長引いた末の投票結果は――。


 矢良さん→アヤメ

 アヤメ→鵜狩くん

 こんしまちゃん→アヤメ

 鵜狩くん→アヤメ


 二回連続はないということでこんしまちゃんに票は入らなかった。

 また矢良さんに票が集まらなかったのは、自分ではなくこんしまちゃんの潔白を主張したからだ。もし矢良さんが狼であれば、こんしまちゃんが村人であると推定するのはさけたいはずだ。その場合、四分の一ではなく三分の一の確率で自分がねらわれることになってしまう。


 結果的に処刑されたのはアヤメだけど、こんしまちゃんの処刑を誘導(ゆうどう)しようとした彼女(かのじょ)(くち)ぶりは確かに狼っぽかった。


 それをアヤメは反省した。

 狼であっても狼でなくても、処刑されれば自分の陣営の負けが確定する状況だったからだ。


 アプリ内で(よる)(むか)える……!

 矢良さんが無残な姿で発見されたとのメッセージが表示された。処刑されたアヤメは狼ではなく、生き延びた狼が夜のうちに村人を噛んだということだ。


 そしてこんしまちゃんはタイマンで鵜狩くん狼に襲われ、村は全滅した。

 また狼陣営の勝利で終わった。


「なんとか勝てたけど、アヤメは投票で俺に()れてたよな。こんしまちゃんを村人側として確定しようとする俺の動きは狼としては不利なムーブのはずだけど……にもかかわらずアヤメは俺を人狼と見抜いていた」

「そこが逆にあやしかったからね。狼が自分の首を()めるはずがないっていう心理を利用して、逆に容疑者から外れているような感じだった」


「でもこんしまちゃんを村人として見ていたのは矢良も同じなんじゃないか」

「矢良さんは自分から発言した。村人としての素直な言い分だった。でも鵜狩くんはあとから便乗(びんじょう)するかたちで主張したよね。流れに乗っかって自分は投票先から外れようとしている魂胆(こんたん)が見えたんだ。ただ、直感としては分かっていてもわたしの考えを言語化できたのは処刑されたあとだったから、みんなにこの考えを伝えることはできなかったよ」


 こうして四人村が終わったので、最後は五人村でやってみる。

 嫁田くんも加わり、今度は狼を二人に増やす。なお狼同士は互いを認識できる。


「このままだと村人陣営が不利だから『(うらな)()』の役職を追加しよう」

「ラッキーアイテムを占うの、嫁田くん……?」

「ちょっと違うかな、こんしまちゃん。占い師は、占った相手が狼なのか村人なのかを見抜けるんだよ」

「無敵だね……」


「ただし占いにはパワーを使うから一日に占えるのは一人まで」

「そんなあ……でも強い」

「占い師は狼にとっても厄介(やっかい)な存在。だから狼が『自分が本物の占い師』と名乗り出る戦略もときには必要になるよ。名乗り出た占い師のうちだれが本物か分からなくなるだけで村陣営は混乱するからね」

「心理戦……」



 五人村開始……ッ!


 すぐに嫁田くんがカミングアウトする。


「俺は占い師だよ。菖蒲(しょうぶ)を占ったけど結果は白……村人だった」

「……嫁田くんの言うことは合ってるよ」


 少々ぎこちなくアヤメが答える。


「でもどうしていきなり占い師だと明かしたの」

「確かに初日(しょにち)は狼にマークされないよう潜伏(せんぷく)するという考えもある。だけど五人中二人が狼である以上、一人でも間違って村人を処刑すれば狼陣営の勝ちが確定するよね。だから村有利になる情報を即座(そくざ)に開示すべきと思ったんだ」

「確かにっ」


 矢良さんが納得(なっとく)する。


「これで鵜狩くん・あたし・こんしまちゃんの三人のうち二人が狼であることが確定したもんねっ。いやあたしは村人だから鵜狩くんとこんしまちゃんが狼?」

「待った……それは嫁田くんが本物の占い師である場合の話だよ……」


 こんしまちゃんが意味深なことを言う……っ!


(しん)の占い師はわたし……嫁田くんはニセモノ……」

「こんしまちゃん、占いの結果は?」

「鵜狩くん……わたしは議論の前に占い対象を指定した……占ったのは矢良さん……結果は村人」

「占い師のうち一人は役職を(かた)った狼なんだよねっ」


 結果を受け、矢良さんが語る。


「でもあたし視点では嫁田くんよりも村人であるあたしを見抜いたこんしまちゃんのほうが本物っぽい」


 投票に移る。占い師として対立する二人は(たが)いに()れそうだけど……。


 問題はほかの三人がだれに投票するか。

 二分の一の確率にかけて占い師のどちらかを吊るか。

 あるいは三分の一の確率で占い師以外に票を投じるか。いや占い師を名乗った者以外にとっては二分の一の確率か……。

 どちらの占い師が本物であるにしても現状は狼とも村人とも言われていない鵜狩くんを選ぶのも手ではある。


 その投票結果は――。


 嫁田くん(占い師?:アヤメ○)→こんしまちゃん

 アヤメ→嫁田くん

 矢良さん→嫁田くん

 こんしまちゃん(占い師?:矢良さん○)→嫁田くん

 鵜狩くん→こんしまちゃん


 処刑されたのは嫁田くん……ッ!

 嫁田くんが本物の占い師であれば狼が村人と同数になり、その時点で勝利するけど――。


 そんなメッセージはアプリに表示されなかった。

 つまり嫁田くんは人狼だったのだ。


 続いて次の朝が来たというメッセージと共に、こんしまちゃんが変わり果てた姿で発見された。


「これ、こんしまちゃんが本当の占い師だったってことだねっ」

「ああ。占いの結果も正しいわけだから矢良も村人確定だな」

「わたしとみくりちゃんは村人だから鵜狩くんが狼かあ」


「いいや、俺は狼じゃない。俺と矢良が村人でアヤメが人狼ということになる」

「確かにきのうの議論で嫁田くんは佳代子(かよこ)ちゃんを村人と占ってた……あれは同じ狼をかばうための手だったんだっ」

「待った、みくりちゃん」


 もはやこの勝負、完全に白である矢良さんを説得する勝負である……!

 残った二人のどちらが狼であろうと相互に敵対する以上、鵜狩くんはアヤメに、アヤメは鵜狩くんに入れるからだ。


「みくりちゃん。わたしは嫁田くんから村人と言われたとき、まずは嫁田くんが本物じゃないかと思った。なぜならわたしが村人だから」

「でも実際、嫁田くんは狼だったね」


「うん。だけどよく考えてみれば嫁田くんはカミングアウトが早すぎたんだ。まるで事前に書いた台本を読み上げるようにその理由もスムーズに説明した。そこが演技くさかった。だからわたしは嫁田くんがあてずっぽうでわたしを村人と言っただけだと判断して、こんしまちゃんを本物と考えなおしたの」


 さらにアヤメはアプリの画面を見ながら鵜狩くんに話を振る。


「えっと、あと気になるんだけどみくりちゃんも投票結果を見てくれる? 鵜狩くんはこんしまちゃんに投票してるよね? ……鵜狩くん、なんで?」

「……あとから名乗ったのが少しあやしかったから。今回の状況なら、嫁田の言うとおり本物はすぐ名乗り出るべきと思ったんだ。結局こんしまちゃんは本物の占い師だったけど」


「違うんじゃないの? こんしまちゃんが本物であることは最初から分かっていたんじゃないかな。だって鵜狩くん視点では嫁田くんと鵜狩くん自身が人狼だと明白だっただろうし」

「俺はどちらが本物であるかは分からなかったよ。そういうアヤメこそ最初から自分と嫁田が狼であることを把握(はあく)していたはずだ」

「もしそうなら、わたしはこんしまちゃんに票を投じていたよ。こんしまちゃんを処刑すれば狼の勝利は確定していたんだからそうしない理由がない。事実、わたしの票がこんしまちゃんに向いていたら勝負はそれで終わってた」


「あ、ホントだっ。結果を見直してみたら佳代子ちゃん、嫁田くんに入れてるしっ!」


 以上の議論を()まえた投票結果は――。


 アヤメ→鵜狩くん

 矢良さん→鵜狩くん

 鵜狩くん→アヤメ


 ということで鵜狩くんが処刑された。

 同時に、アヤメのアプリ画面に人狼陣営勝利の知らせが入った。


 矢良さん・こんしまちゃん・鵜狩くんは村人として負けたわけだ。

 アヤメ・嫁田くんの狼が()ったのである……!


「三連続で狼側が勝利なんてね」

「え……なんで」


 不思議そうに矢良さんがアヤメに問う。


「どうして初日の投票で味方の嫁田くんに入れたの。佳代子ちゃん自身も言ったけど、こんしまちゃんに入れたらすぐ勝ってたよね?」

「鵜狩くんがこんしまちゃんと嫁田くんのどっちに入れるか分からなかったからそうしたんだ。嫁田くんとこんしまちゃんは敵対している相手に入れる。そしてみくりちゃんは自分を村人としたこんしまちゃんじゃなくて嫁田くんに入れる。ここまでは分かるけど、鵜狩くんが占い師のうちどちらを狼と見なすかまでは分からなかった」


 アヤメが冷静に続ける。


「わたしがこんしまちゃんに投票して、鵜狩くんも同じようにこんしまちゃんに入れてくれたらすぐに決着がつくけど、もし鵜狩くんが嫁田くんに投票していたときは結局嫁田くんが処刑される。そうしたら、こんしまちゃんに票を投じていた場合のわたしは嫁田くんとの接点を疑われてやっぱり吊るされていたと思う。そしてもしわたしがこんしまちゃんに票を投じて鵜狩くんがわたしかみくりちゃんに投票していた場合は嫁田くんとこんしまちゃんの票が並んで仕切り直しになってしまう。これだと村人陣営に考える時間を(あた)えることになる。だからわたしは同じ狼である嫁田くんに投票したんだよ、勝つために」

「まさか……っ」


 矢良さんが嫁田くんの八重歯を見つめた。


「嫁田くんは、佳代子ちゃんの考えも読めてたのかなっ」

「なんとなく読めた。俺に入れたとき『やるね』と思ったし」


 そんな言葉を聞いて、矢良さんも鵜狩くんもこんしまちゃんも狼陣営の健闘(けんとう)をたたえた。


 でも嫁田くんによると、まだまだ人狼ゲームは(おく)が深く無限の(ぬま)であるらしい……ッ!

 だからこんしまちゃんはワクワクして、もっと大規模(だいきぼ)なかたちを想像するに(いた)った。


「一億人でも人狼できるかな……?」


 でもさすがにこれに対してはみんなから「多すぎる」との総ツッコミを受けてしまった。


「しまった……でも実際にやれたらおもしろそうだね」


 まあ確かに人狼ゲームが最大何人でおこなえるか――その限界に挑戦(ちょうせん)するのも悪くなさそうだ。


 そのなかではだれもが村人になりうるし、だれもが狼になりうる。

 それでも全員が楽しめるなら、それが一番いい気がする。


♢ ※ ※ ※ ※ ※ ※


☆今週のしまったカウント:七回(累計(るいけい)二百二十四回)

次回「第五十三週 しがない口癖を持ってしまった!(金・土曜日)」に続く!(六月十二日(金)十九時から二十三時五十九分のあいだに更新)


いつもお読みいただきありがとうございます! 評価やブクマ等も励みになっています。


それにしてもゲームというのはロジックだけでなく運も関わるからこそ、より面白くなるのかもしれませんね~。

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