第四十六週 次の常用漢字を予想してしまった!(水曜日)
今週のしまったちゃんこと紺島みどりはその異名に恥じず、漢字についても「しまった」と言ってしまうことがある。
ベタなところでは「危機一髪」を「危機一発」と書き間違えたりする。
一石二鳥を「ひといしふたとり」と読んだこともある……!
まあでも漢字の読み書きに関してはむしろミスしないほうがおかしい。
だから自分の間違いを恥じることはないと思うし、だれかの間違いをあざ笑う必要もないんじゃないかなー……とあたし・矢良みくりは考えるわけですよ。
ともあれ漢字というのは日常生活とも密接に関わっている。
それについて考察するのもまた、無意味なことではないだろう。
※ ※ ♢ ※ ※ ※ ※
水曜日の昼休み。
こんしまちゃんは右隣の席に座る男の子――鵜狩慶輔くんをじい~っと見ていた。
鵜狩くんはシュッとしたあごとツリ目が素敵な男の子でありこんしまちゃんの彼氏でもある……っ!
そんな彼は青いブックカバーをつけた本を読んでいる。
ただし本の上下を逆さまにした状態で読書にふけっているのだ……!
したがって縦書きの本でも鵜狩くんは左から右にページをめくらず、右から左にページをめくる。
右のページが残りわずかになり、ついに奥付がひらかれた。
奥付もしっかりチェックしたあと鵜狩くんは本を静かに閉じた。
左隣からの視線に気づき、ちょっとはにかむ。
「こんしまちゃんのプレゼントしてくれたブックカバーをつけると読書がはかどるよ。本当にありがとう」
「そ……そんな。喜んでもらえてうれしいな……」
照れるこんしまちゃんだったが、彼女が鵜狩くんにブックカバーを贈ったのはこのあいだの三月中旬なのでなんかタイムラグのある会話だなと思わんでもない……!
ついでこんしまちゃんがイスを動かし、鵜狩くんに近づく。
「のぞいていい……?」
「もちろん」
鵜狩くんは本を通常の向きに反転させ、あらためてページをひらいてみせた。
難しい漢字がたくさんある……! さる有名人が著した、学問を勧める本だ。古いもののようで、ルビもほとんど振られていない。
こんしまちゃんが目をぎゅ~っとつむる。
すぐにまぶたをあけ、あごを縦にゆらす……!
「習ってない漢字もいっぱい出てるね……ルビなしでスラスラ読めるなんて……鵜狩くん、すごい……」
ついでもっと鵜狩くんに近寄り、漢字を指差していく。
「これ(貴賤)はなんて読むんだっけ……?」
「……『きせん』だね」
「じゃ、こっち(畢竟)は……?」
「ひっきょう。つまるところって意味だな」
「さすが鵜狩くん……」
貴賤も畢竟もこんしまちゃんの読破した『ドグラ・マグラ』に出てくる言葉だから実際はこれが初見ではないのだが、そちらの本にはルビがしっかり振られていたのだ……!
「でも、わたし……こういう漢字を見るとどういう読みかいつも迷っちゃう……恥ずかしい」
「いや、だいじょうぶだよ、こんしまちゃん」
本をひらいたまま鵜狩くんが優しく返す。
「貴賤の賤も畢竟も、常用漢字じゃないから」
「……常用漢字。なんか聞いたことあるかも」
常用漢字とは、現代の日本語を書く際に使用を推奨される漢字のことだ……ッ!
つまり「これを使ったらいいよ~」という漢字のグループである。ただし人名などの固有名詞は例外である。
音訓すなわち読みについての基準も設けられている。
たとえば「集」という漢字は確かに常用漢字だけれど、その読みとして推奨されているのは「シュウ」「あつまる」「あつめる」「つどう」の四つ。「あれ? この字は『集る』とも読めるんじゃないの?」と思っても「たかる」は常用漢字の読みとして登録されていないので使用する際は注意が必要だ。最初からひらがな表記にしたりルビを振ったりするのもいいかもしれぬ……っ!
この常用漢字は公用文書などで用いる漢字の目安になるものの、法的な拘束力は有していない。
従わなくても罰が科されることはない。
かつ、常用漢字に登録された字や読みは基本的に高校を卒業するまでにふれる感じになっている。
逆に言えば常用漢字でない字を知らなくても、まあそれは普通のことというわけだ。
ちなみに常用漢字以外の漢字を「表外漢字」と言う。
スマートフォンを取り出し、こんしまちゃんが常用漢字について調べる……ッ!
「へー……最近は三十年くらいの周期で改定してるんだ……一番新しいので二〇一〇年……ということは、二〇四〇年までにまた常用漢字も変わりそうだね……」
「新しく常用漢字入りする字も出てくるだろうな」
「なんかワクワクするね……そうだ、鵜狩くん……わたし、おもしろいこと思い付いちゃった……」
鵜狩くんの左肩に右肩を当てるこんしまちゃん……っ!
「次の常用漢字、適当に予想してみない……?」
「いいな、やろう」
二つ返事で鵜狩くんが乗ってきた……!
※ ※ ♢ ※ ※ ※ ※
といっても、ただ次の常用漢字を予想するだけじゃつまらない。
だからこんしまちゃんは鵜狩くんに勝負を持ちかけた。
それぞれ次の改定で加わる漢字と読みを予想し、自分の予想と実際の新しい常用漢字とがより多く一致しているほうが勝ちというルールだ……ッ!
こんしまちゃんも鵜狩くんも常用漢字の一覧を再確認したうえで情報を集める。
スマートフォンのメモ帳アプリに自分の予想する漢字と読みを追加していく。
鵜狩くんの左隣でこんしまちゃんがつぶやく。
「今だとひらがなを簡単に漢字に変換できるよね……だからみんな、漢字にふれる機会も増えているはず……」
「そうだな。学校で習っていなくても自然に漢字を覚えることができるわけだ」
まあ、そんなふうに会話を交わしつつ、二人は思い付いた字をかたっぱしから並べていった。
※ ※ ♢ ※ ※ ※ ※
そしていよいよ、互いの予想の発表……ッ!
次の常用漢字に加わるかもしれない漢字や読みを、交互に一つずつ相手に教えるのだ……!
世界広しといえども、現状こんなことをやっている高校生カップルはこんしまちゃんと鵜狩くんだけだろう。
まずはこんしまちゃんから発表する。
「わたしが選んだ次の常用漢字はね……これだよ」
こんしまちゃんが鵜狩くんの左手の平にその字の軌跡をえがく。
鵜狩くんは字を読み取り、うなずいた。
「なるほど、『嬉しい』か」
そう、「嬉しい」という漢字は常用漢字に含まれていない。
首を右にかたむけるこんしまちゃん……っ!
「でも……これってけっこう使う字のような気がするんだけど、なんで常用漢字じゃないのかな……」
「造語力が低いからみたいだな」
「ぞ、ぞうごりょく? 戦闘力みたい……」
「常用漢字を選定する場合、使用頻度に加えてこの『造語力』が重要になってくる。『その漢字を使用して作成できる熟語の数』と言えば分かりやすい。使用頻度が高くても造語力が低い場合、常用漢字には追加されにくい傾向がある」
「言われてみれば『嬉しい』自体はよく使うけど……熟語としては微妙なところだね……」
「いや、いい線いっていると思う。『嬉々として』という言葉もあるし」
「そっか……だったら次は『嬉しい』が加わるかもしれないね……」
こんしまちゃんはまさに嬉しそうにそう言った。
嬉しげに鵜狩くんはうなずき、自分の予想する次の常用漢字を教える……っ!
「じゃあ俺は――これかな」
鵜狩くんは右手を伸ばし、こんしまちゃんの右手の平にその字をしるした。
ちょっとくすぐったい感触を味わいながら、鵜狩くんの予想した漢字を認識しようとするこんしまちゃん……!
「こ……これは」
でも、結局なんの漢字か分からなかった。
「……しんにょうは分かる……もしかして辻?」
「惜しい。『迂回』の『迂』だよ」
「しまった」
「でも今のところ『辻』も表外漢字だし『辻褄』『四つ辻』『辻斬り』といった言葉も作れるから充分に次の常用漢字の候補じゃないかな」
「そ……そうかな……っ」
フォローしてもらえて、ちょっぴり嬉しくなったこんしまちゃんであった。
「鵜狩くんの予想した『迂回』の『迂』も造語力がありそうだね……」
「どうかな。『迂遠』『迂闊』あたりの言葉を作ることはできるけど」
「うーん……造語力が低い『挨拶』が常用漢字に入っている以上、三つも熟語を作れる時点で『迂』という漢字は造語力という基準を満たしてるんじゃないかな……」
「そう言ってもらえると自信が湧いてくるよ、ありがとう」
時間も惜しいのでどんどん発表していく……っ!
こんしまちゃんがまた鵜狩くんの手の平に字を書く。
「個人的には『罠』を常用漢字に加えてほしい……」
確かにほかの文字と組み合わせて熟語を作ることができず造語力はゼロに等しいけれど使用頻度は申し分ないし、さるカードゲームの影響で知っている人も多いんじゃないだろうか。
続いて鵜狩くんのターン……ッ!
「俺はこれ――『繋がる』かな」
これも常用漢字ではない。
熟語としては「繋留」といった言葉を作れるとはいえ、だいたい「係留」のほうで表記されるので優先度が低くなるのも無理からぬこと。
「一方で『繋ぐ』『繋げる』『繋がり』といったかたちで訓読みすることができるし、候補の一つではあると思う」
「あ、だったらわたしは……」
こんしまちゃんが「繋がる」という漢字からとある漢字を連想する……!
彼女の指がすべる。鵜狩くんはそれを左手で感じた……っ!
「絆……!」
そう、「ほだし」とも読めるこの「絆」も表外漢字なのだ。
これを使えば「絆される」「絆創膏」という言葉を作ることが可能。
表外漢字でありながら、とある年を代表する漢字に選ばれたこともあるので知名度も充分と言えるだろう。
「本当にいいところに目をつけるね、こんしまちゃん。なら俺は――」
こんしまちゃんの手の平に、鵜狩くんの指がまたすべる。
合計二十一画を費やし、「車」が三つ書かれた……!
「――『轟く』も推す」
この字もマンガとかでなかなか有名になったと思われる。
轟音や轟沈といった熟語も作れるため造語力も低すぎることはない。
納得したようにこんしまちゃんもうなずく。
「いいね、鵜狩くん……『轟く』って、見た目も響きもシビれるくらいにかっこいい……」
で、続いてこんしまちゃんは「歪曲」「歪む」「歪む」「歪」の「歪」と「晒し者」の「晒す」を挙げた。一つずつ教えるんじゃなかったの? とかツッコまれそうだけど、そこはまあ臨機応変というやつだ……っ!
「といっても『晒す』みたいに訓読みしか使わないやつは弱いかな……」
「そんなことはないと思う。『俺』や『繰る』のように訓読みしか登録されていない常用漢字もあるわけだし。『ネットに晒された』とか『白日の下に晒された』とか『生き恥を晒す』とか、いろんな場面で使われる言葉でもあるよな」
ここで鵜狩くんが予想する漢字を新たに二つ開示する……!
「誹謗中傷の『誹』と『謗』も表外漢字だけど、今後のネット情勢次第では入ってくる気がする」
ただし「誹謗中傷」以外で「誹」も「謗」もあまり使われないので候補としては弱いかもしれない。
あるいは「嫉妬」の二字くらい使用されるようなら常用漢字入りも夢ではないだろう。もちろん使用率が落ちれば「誹謗」の常用漢字入りは見送られるし、逆に増えれば常用漢字の仲間に入ると見ていい。
※ ※ ♢ ※ ※ ※ ※
さて常用漢字に加わるかもしれない漢字を十個以上挙げたから、次はいったん「読み」についての考察に移行する……!
「俺としては、この読みが常用漢字の音訓にないのが不思議だな」
そう言って鵜狩くんがこんしまちゃんの手の平に書いたのは「経つ」だった。
意外という顔でこんしまちゃんが目を見張る……!
「これ、『時間が経った』の『たつ』だよね……常用漢字としては『経度』とか『経る』とかで習うけど……読みに『経つ』はないんだ……じゃ、わたしの読みはこの字かな……」
こんしまちゃんが挙げたのは「貯める」だった。
「普通に変換できるけど『貯金』の『貯』の『貯める』って常用漢字の読みじゃないんだね……意外……」
ついで付け加える。
「もしくは、さんずいに『留める』って書く『溜める』を常用漢字に追加してもよさそう……」
さらにこんしまちゃんは「止む」「証」「慮る」「空く」「中」「お腹」「虹」「疎ら」「疎か」「件」「暇」を常用漢字の新しい読みの候補として挙げた。「空く」などに関してはすでに「空く」といった既存の読みがあるとはいえ、そんなこと言ったら「開」だって「開く」と「開く」の読みがあるじゃんって話なので別に気にすることでもないかもしれん。
あと「虹」に「こう」という読みを追加したいのは目の「虹彩」を意識してのことらしい。
対する鵜狩くんは「良い」「刃」「想う」「避ける」「弾く」「埋める」「包む」「退く」「真」「自ずから」「勤しむ」「縁」「縁」を列挙した。
今のところは「良い」「避ける」「弾く」「埋める」「包む」「退く」といった感じで読むのが原則だけど、それ以外の場合でも簡単に変換できる世の中なので両方の読みを学んでおくに越したことはないというのが彼の主張だ。
それと「まこと」についてはすでに「誠実」の「誠」で「まこと」と読むことが常用漢字表に示されているけれど、「真実」の「真」を使った場合の「まこと」とはちょっとニュアンスが違ってきそうなのでどちらも入れたいとのこと……!
そしてこんしまちゃんは常用漢字表の「付表」についてもじっと見る。
そこには「時計」や「友達」といった特殊な読みの熟語が並んでいる。
「なかに『明日』というのがあるけど、これ……『あした』とも読みたい……」
「ホントだな。あと特殊な読みとして『生き甲斐』『やり甲斐』『甲斐甲斐しい』『甲斐性』の『甲斐』もあってほしいかな。昔の国名の一つだし、甲斐の『斐』も常用漢字に入れてもよさそうだけど……あ、単体では音読みで『斐』と読むんだ」
スマートフォンの画面を見つつ、鵜狩くんがそう漏らした。
それから「干支」や「一昨日」もあったらいいねーって話にもなった。
※ ※ ♢ ※ ※ ※ ※
こんな調子で、また次の常用漢字候補を交互に言い合う……ッ!
こんしまちゃんは「惹起」「惹かれる」の「惹」が食い込んでくると予想する。
鵜狩くんは「腑抜け」「腑に落ちない」「五臓六腑」の「腑」が次に来るんじゃないかと意見を述べる。
すかさずこんしまちゃんが「曙」「杖」「竿」と言えば、鵜狩くんは「窺う」「覗く」「濡れる」で応ずる……っ!
「やるね鵜狩くん……! でもまだまだわたしもいけるよ……お惣菜の『惣』……っ! 『弛緩した空気』『弛まぬ努力』の『弛』……『相槌』『鉄槌』の『槌』……」
まだ攻撃の手を緩めないこんしまちゃん……っ!
「干支シリーズもあるよ……子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥……調べたところ『丑』『寅』『卯』『辰』『巳』『酉』『戌』『亥』の八文字は表外漢字……でもわりと使われるほうだし、歴史の授業でも出てくるから常用漢字になってもいいはず……そうなればさらに子・午・未・申も新しい読みに加わる可能性大……!」
「さすがだなこんしまちゃん。なら俺も十五個返す」
鵜狩くんの反撃が始まる……ッ!
「……『儲ける』『這う』『釘』『賑やか』『紐』『瀕する』『扮する』『淵』『頁』『掴む』『捧げる』『姪』『甥』『貰う』『宥める』『狼』『砦』『悶える』『庇う』『淀む』『詫びる』……」
「ちょ……ちょっと鵜狩くん……二十一個になってる……っ」
「ご、ごめん。うっかりしてた」
当の鵜狩くんが言い淀み、そして詫びた……!
でもこんしまちゃんは鵜狩くんの左手を掴み、宥めるように言う……!
「いいや……いっぱい出てきたのは驚いたけど……淀みなく漢字を連想できるのはやっぱりすごいと思う……」
「ありがとう、こんしまちゃん。でも俺も反省する。それに……こんしまちゃんだってすごい」
「こっちこそありがとね……鵜狩くん」
もはやメモ帳アプリに打ち込んだ漢字を超えて二人は議論を進めているようだ。
こんしまちゃんにターンが渡る……っ!
「あとは『肋骨』の『肋』とか『牢屋』の『牢』……『紅蓮』の『蓮』……その場合は『紅』の読みに『ぐ』も追加したいね……」
「そうだな。ほかには『可憐』『憐れむ』の『憐』……『勇気凜々』『凜とした声』の『凜』……そして『逆鱗』の『鱗』を追加するのなら『逆』に『げき』という読みを加えないといけない……」
「うん……『梁』とかもよさそうだよね。『鼻梁』って言葉もあるし……」
「螺旋の『螺』もほしい気がする……『旋』のほうはすでに常用漢字だから『ら』のほうだけひらがなで書くのもしっくりこないし……あ、『遥か彼方』の『遥か』も漢字のほうがいいか……だったら『彼方』も特殊な読みにして……」
そうやってどんどん次の常用漢字候補を考察していく。
しかし――。
あまりにも時間がかかりすぎたので、そのうち昼休みが終わった。
「しまった……」
「……俺もうっかりしてた」
※ ※ ♢ ※ ※ ※ ※
でも放課後になって、鵜狩くんはこんしまちゃんの家を訪ねて一緒に次の常用漢字の予想を続けてくれた。
結果をまとめると以下のようになる。
【こんしまちゃんの予想】
〈次の常用漢字に加わりそうな漢字・六十五字〉
嬉辻罠絆歪晒溜惹曙杖竿弛槌丑寅卯辰巳酉戌亥肋牢蓮梁蓑沫吠萌呆娩鞭篇撫斧鋲牌膿厭馴呑凪沌鎧轍剃吊喋耽叩槍掻閃尖棲梱垢牽汲噛叡閏嘘忖腋
〈追加されそうな読み・十七個〉
貯める・止む・証・慮る・空く・中・お腹・虹・疎ら・疎か・件・暇・子・午・未・申・紅
〈追加されそうな特殊な読み・二個〉
明日・干支
【鵜狩くんの予想】
〈次の常用漢字に加わりそうな漢字・六十二字〉
迂繋轟誹謗斐腑窺覗濡儲這釘賑紐瀕扮淵頁掴捧姪甥貰宥狼砦悶庇淀詫憐凜鱗螺遥蒙瞥焚廟謬挽捺撞淘諜揃漕楚煽脆撒捌膏腔杭罫怯仇叶奢溢
〈追加されそうな読み・十五個〉
経つ・良い・刃・想う・避ける・弾く・埋める・包む・退く・真・自ずから・勤しむ・縁・縁・逆
〈追加されそうな特殊な読み・三個〉
甲斐・一昨日・彼方
重複はない。
二人合わせて百二十七の漢字と三十二の読みと五個の特殊な読みを予想したことになる。
ともあれ二人ともどっと疲れたようで、こんしまちゃんの部屋のなかで同時に深く息をつく……!
互いにゆかに座っている。
鵜狩くんが小さく笑う。
「すごく楽しかったな、こんしまちゃん」
「うん……予想するのがこんなに楽しいなんて……」
でも、なにかに気づいたのか身を震わせるこんしまちゃん……っ!
「しまった……」
「どうしたんだ」
「次の常用漢字を予想するなら、削除される字や読みも予想できたんじゃないかな……」
「確かに」
ただ、鵜狩くんは「うっかりしてた」とは言わなかった。
「けど俺は、なんとなくだけど次に削除される漢字も読みもないんじゃないかと思う」
「そっか……だったらわたしもそこは同じように予想するよ……」
こんしまちゃんは鵜狩くんと笑い合った。
しかし直後、またぶるりっ! と体をゆらした……!
「しまった……」
「今度はなにかな」
「鵜狩くん……これってわたしと鵜狩くんとで、それぞれ次の改定で加わる漢字と読みを予想したうえで自分の予想と実際の新しい常用漢字とがより多く一致しているほうが勝ちって勝負だったよね」
「うん」
「だけどよく考えたら次の改定がいつになるか分からないから……まだ勝敗はつかないね……」
「それは、またまたうっかりしてた。だったら――」
優しく目を細め、鵜狩くんが静かに言う。
「たぶん十数年後になったら次の改定が来るから、そのときに二人で答え合わせしよう」
「約束だよ……」
こんしまちゃんは鵜狩くんに近寄って、そっとその手を撫でた。
鵜狩くんもそれに反応して同じように手を撫で返してくれた。
そこには嘘もないし罠もない。
お互い呼吸を揃え、相手の気持ちを汲み取る。
明日もそうなるのだろうか。一昨日はどうだっただろうか。
時間は知らない中に経ち、いつか想いは止むのだろうか。
予想はつかない。
でも少なくとも今の部屋には――。
ただ嬉しいという気持ちばかりが溢れている。
そしていつか答え合わせをする日が必ず来る。
たくさん間違っていたらきっとお互いに笑い合うだろうし、たくさん合っていてもやはり二人は優しく笑い合うのだろう。
※ ※ ♢ ※ ※ ※ ※
☆今週のしまったカウント:四回(累計百九十六回)
次回「第四十七週 理想的な旅行をシミュレートしてしまった!(金曜日)」に続く!(五月一日(金)午後七時ごろ更新)
いつもお読みいただきありがとうございます。評価やブクマ等も励みになります!
それにしても常用漢字表をあらためて見てみると、選定される漢字というのはそのときの時代を反映しているような感じがしますね~。




