第25話「狩場」
白霧村全体に、黒い手が広がっていた。
家の壁。
地面。
屋根。
至るところから黒い影が伸び、総司たちへ襲いかかる。
「くそっ!」
隼人が槍を振る。
迫ってきた黒い手を弾き飛ばした。
「斬っても斬っても増えてくるぞ!」
蓮も刀を振り、黒い手を斬り払う。
零奈は周囲を見渡しながら、黒い手の動きを追っていた。
「待って」
「どうした?」
「黒い手が全部、村の奥へ向かってる」
総司も視線を向ける。
黒い手は地面や建物から伸びながら、まるで何かに引き寄せられるように村の奥へ集まっていた。
その先にあるのは、古びた神社。
「……あそこか」
総司が神社を見る。
「鬼の力が集まってる」
「なら、あそこへ行けば本体がいるかもしれないな」
蓮が刀を構える。
「行こう!」
四人は神社へ向かって走り出した。
その瞬間。
総司の足元から黒い手が伸びた。
「!」
総司が飛び退く。
直後、頭上から爪が振り下ろされる。
ガキン!
総司が双剣で受け止めた。
鬼が一瞬だけ姿を現していた。
「見つけたぞ」
鬼が笑う。
「お前から食ってやる」
「そう簡単にいくか!」
総司が二本の刀を振る。
「双牙!」
鬼は攻撃をかわし、再び姿を消した。
総司は周囲を警戒する。
「来るぞ」
隼人が槍を構える。
「分かってる!」
四人は互いに距離を取り、周囲を見渡した。
次の瞬間。
黒い影が隼人の足元から飛び出す。
「隼人!」
総司が踏み込む。
二本の刀が鬼の爪を受け止めた。
ガキィン!
「させるか!」
鬼が力を込める。
しかし総司は踏みとどまった。
「今だ!」
蓮が横から斬り込む。
鬼が身を翻す。
そこへ零奈の矢が飛んだ。
「逃がさない!」
矢が鬼の肩を貫く。
「グアッ!」
鬼が後退する。
隼人も槍を構え直した。
「今度は俺だ!」
槍が鬼の胸元へ迫る。
しかし鬼は身体をひねり、攻撃をかわした。
「ちっ!」
鬼は再び姿を消す。
総司は神社へ視線を向けた。
黒い影が地面を伝い、神社へ集まっている。
「やっぱり、あそこだ」
「鬼の力の中心がある」
零奈が頷く。
「急ごう!」
四人は一気に神社へ走った。
鳥居を抜ける。
黒い手が次々と襲いかかる。
「邪魔だ!」
総司が双剣を振る。
「双連斬!」
二本の刃が黒い手をまとめて斬り払う。
隼人も槍を振り回す。
「俺も道を作る!」
蓮が続き、零奈は後方から迫る黒い手を射抜いていく。
ようやく境内へ入った。
そこには、古びた井戸があった。
零奈が足を止める。
「……ここ」
「どうした?」
「この井戸から、強い鬼の気配がする」
総司が井戸を覗き込む。
暗くて底は見えない。
だが、その奥から確かな殺気が漂っている。
「下にいる」
その瞬間。
井戸の中から声が響いた。
「よく来たな」
黒い影が井戸の中からゆっくりと這い上がってくる。
先ほどの鬼だった。
しかし、先ほどとは明らかに様子が違う。
身体中に黒い紋様が浮かび上がっている。
「ここが俺の本当の狩場だ」
鬼が笑う。
「この場所なら、俺の力は最大になる」
総司は双剣を構え直した。
「だったら、ここで終わらせる」
「新人隊士ごときが?」
鬼が爪を構える。
「俺を倒せると思うな」
神社の周囲から、再び無数の黒い手が伸び始める。
四人はそれぞれ武器を構えた。
逃げ場はない。
ここで倒すしかない。
総司は鬼を睨みつけた。
「行くぞ!」
第25話 完




