第24話「姿なき鬼」
白霧村。
老人を安全な場所へ移した総司たちは、村の中を調べていた。
「やっぱり誰もいないな」
隼人が周囲を見回す。
「家の中には生活の跡が残っているのに、人だけが消えている」
蓮が地面に残った足跡を確認する。
「村の外へ逃げた形跡もない」
零奈が目を閉じる。
「……静かすぎる」
総司は双剣に手を添えた。
「鬼は近くにいる」
「分かるのか?」
「分からない。でも、見られている気がする」
その瞬間。
カタン。
背後の家から物音がした。
四人が一斉に振り返る。
「誰だ!」
返事はない。
総司がゆっくりと家へ近づく。
扉を開ける。
中には誰もいない。
「……何もない」
隼人が首を傾げる。
「じゃあ、今の音は?」
零奈が床を見る。
「待って」
床には、泥の跡があった。
それは家の中からではなく、外から入ってきたものだった。
「誰かがここに入った」
蓮が刀を抜く。
「ついさっきだ」
総司が足跡を追う。
しかし、数歩進んだところで跡が消えている。
「消えた……?」
「いや」
零奈が天井を見上げた。
「上」
全員が顔を上げる。
天井には、人間の手形がいくつも残っていた。
「まさか……」
その瞬間。
天井から黒い影が落ちてきた。
「来るぞ!」
総司が双剣を振る。
ガキン!
何かを弾き飛ばした。
黒い影が壁に張り付く。
「鬼……!」
四人が構える。
鬼は人間よりも細い身体をしていた。
全身が黒く、目だけが赤く光っている。
「ようやく見つけたか」
隼人が槍を構える。
「お前が村人を連れていったのか!」
鬼は笑った。
「そうだ」
「何のために?」
「食うためだ」
隼人が飛び出す。
「ふざけんな!」
槍が鬼を貫く。
だが――
槍は空を突いた。
「なっ!」
鬼の姿が消えていた。
「どこだ!」
隼人が振り返る。
「上!」
零奈の声。
鬼が天井から現れる。
総司が斬りかかった。
「双剣術!」
しかし刃は鬼をすり抜けた。
「……!」
鬼の姿が消える。
「何だ、今の……」
蓮が周囲を警戒する。
「幻なのか?」
「違う」
零奈が答える。
「気配はある」
「でも、姿だけが消えてる」
その瞬間。
「ぐっ!」
隼人の肩から血が飛んだ。
「隼人!」
鬼の姿は見えない。
しかし、確かにそこにいる。
「見えないだけじゃない」
蓮が刀を構える。
「攻撃する瞬間だけ姿を現している」
「なら――」
総司が目を閉じる。
「姿を見る必要はない」
「気配を感じろ」
蒼月との修行を思い出す。
相手を見るのではなく、動きを読む。
総司は静かに呼吸する。
「……右」
刀を振る。
ガキン!
鬼の爪を弾いた。
「なにっ?」
初めて鬼が驚く。
総司はそのまま二本の刀を振る。
「そこだ!」
ザンッ!
鬼の腕が斬り裂かれた。
「グアッ!」
鬼が姿を現す。
隼人が目を見開く。
「やった!」
しかし鬼は距離を取る。
「面白い……」
傷ついた腕が再生していく。
「俺の姿を見ずに攻撃したか」
総司は双剣を構えた。
「次は逃がさない」
鬼は笑う。
「いいだろう」
「ならば――」
鬼の身体が再び闇へ溶けていく。
「俺の本当の力を見せてやる」
家の壁や床に、無数の黒い手が浮かび上がった。
「何だこれ……!」
隼人が後退する。
「村全体が……!」
零奈が叫ぶ。
「気をつけて!」
黒い手が一斉に伸びてくる。
総司たちはそれぞれの武器で迎え撃った。
しかし、手は斬っても斬っても増えていく。
「きりがない!」
蓮が叫ぶ。
総司は周囲を見る。
「この鬼……」
黒い手。
消える身体。
そして、村人たちが消えた理由。
「まさか……」
総司の視線が村の中央へ向く。
「村そのものを使ってるのか?」
鬼の笑い声が響いた。
「ようやく気づいたか」
「この村全体が、俺の狩場だ」
総司の表情が険しくなる。
第24話 完




