第23話「次なる任務」
朝。
第一討伐隊の隊舎に、総司たち四人が集まっていた。
昨日の相馬との訓練で身体は重かったが、全員がすでに隊士としての装備を整えている。
「今日は何の呼び出しだろうな」
隼人が槍を背負いながら呟く。
「昨日、隊長が次の任務があると言っていた」
蓮が答える。
零奈は窓の外を見ていた。
「町の外から人が来てる」
総司も入口を見る。
しばらくすると、相馬が入ってきた。
「全員いるな」
「はい!」
四人が姿勢を正す。
相馬は机の上に一枚の地図を広げた。
「次の任務だ」
地図に記されていたのは、滅鬼団本部から東へ離れた山間の村だった。
「白霧村?」
隼人が地図を見る。
「三日前から、村人が行方不明になっている」
「何人ですか?」
「確認されているだけで五人」
零奈の表情が曇る。
「また鬼……?」
「その可能性が高い」
相馬が村の周辺を指す。
「ただし、今回の情報には気になる点がある」
「気になる点?」
「村の周辺で鬼を見たという証言が一つもない」
総司が眉をひそめる。
「じゃあ、鬼の仕業じゃない可能性も?」
「ああ」
「だから調査も兼ねた任務になる」
蓮が地図を見る。
「俺たちだけで行くんですか?」
「今回は四人で行け」
相馬が答える。
「ただし、無理はするな。鬼の存在を確認した場合、強さを判断して行動しろ」
総司は頷いた。
「分かりました」
その日の昼。
四人は白霧村へ向かう道を歩いていた。
「黒森町の次は白霧村か」
隼人が周囲を見渡す。
「最近、鬼の動きが増えてないか?」
「確かに」
蓮も警戒していた。
総司は何も言わず前を歩いている。
鬼堂との戦い。
あの圧倒的な力。
そして、五鬼衆という存在。
今の自分では到底届かない。
だからこそ、もっと強くならなければならない。
「総司」
零奈が声をかける。
「何?」
「考え事?」
「……少しな」
「鬼堂のこと?」
総司は頷く。
「ああ」
隼人が笑う。
「だったら、俺たちも一緒に強くなればいいだろ」
「そうだな」
蓮も続ける。
「一人で背負う必要はない」
総司は三人を見る。
「ありがとう」
やがて白霧村が見えてきた。
しかし――
「……誰もいない」
村の入口。
人の気配が全くない。
風に揺れる木の葉の音だけが響いている。
総司が刀に手を添える。
「警戒しよう」
四人は村へ入った。
家の扉は閉まっている。
井戸には水がある。
畑も荒れていない。
生活の痕跡は残っている。
なのに、人だけがいない。
「変だな」
隼人が呟く。
零奈が地面を調べる。
「足跡がある」
「どこへ?」
「村の奥」
四人は足跡を追った。
その先には一軒の大きな家があった。
扉が半開きになっている。
総司がゆっくりと近づく。
「誰かいますか?」
返事はない。
中へ入る。
机の上には食事が残っていた。
まだ新しい。
「食事をしていた途中で消えた……?」
蓮が周囲を見る。
「そうみたいだ」
その時。
奥の部屋から音がした。
カタン。
全員が武器を構える。
「誰だ!」
返事はない。
総司が一歩ずつ進む。
扉の前で止まった。
「開けるぞ」
扉を開ける。
そこには――
一人の老人が倒れていた。
「大丈夫ですか!」
総司が駆け寄る。
老人はゆっくりと目を開けた。
「……滅鬼団……」
「はい」
「早く……逃げなさい……」
総司の表情が変わる。
「何があったんですか?」
老人は震える手で村の奥を指した。
「……夜になると……」
「森から……鬼が来る……」
「でも……姿が見えない……」
零奈が眉をひそめる。
「姿が見えない鬼?」
老人は頷く。
「そして……連れていかれた者は……」
そこで言葉が途切れる。
「……戻ってこない」
外から風が吹き込んだ。
その瞬間。
総司の背後に――
黒い影が一瞬だけ現れた。
「……!」
総司が振り向く。
しかし、そこには誰もいない。
「今、何かいた」
隼人が槍を構える。
蓮も刀を抜く。
「気配が消えた」
零奈が周囲を見渡す。
「どこに……?」
静かな村。
そのどこかで、誰かが笑った。
「……来たか」
第23話 完




