第22話「隊長との実戦」
訓練場に、四人の息遣いが響いていた。
総司たちは毎日のように鍛錬を続けている。
双剣を振る総司。
槍を突き込む隼人。
刀を振る蓮。
弓を引く零奈。
その様子を、蒼月刃が黙って見ていた。
「止めろ」
四人が動きを止める。
「今日は実戦形式で鍛える」
隼人が槍を肩に担ぐ。
「相手は鬼か?」
「違う」
蒼月が訓練場の入口を見る。
そこには相馬剣一が立っていた。
第一討伐隊の隊長。
総司たちにとって、すでに何度も共に戦ってきた隊長だった。
「相馬隊長……?」
「今日、お前たちの相手をする」
隼人が目を丸くする。
「隊長が?」
「そうだ」
相馬が大太刀を抜く。
「最近のお前たちがどれほど成長したのか、確認しておきたい」
総司は双剣を構えた。
「お願いします!」
蓮と零奈も武器を構える。
「四人同時でいいんですか?」
「ああ」
相馬は構えを低くする。
「実戦では、敵が一人とは限らない」
「四人で戦うことを覚えろ」
蒼月が手を上げた。
「始め!」
最初に動いたのは総司だった。
「行くぞ!」
総司が正面から踏み込む。
右の刀。
続けて左。
相馬は大太刀で受け流す。
ガキン!
「まだ速くできる」
「はい!」
総司がさらに踏み込む。
その横から隼人が槍を突き出した。
「今だ!」
相馬が身体を捻る。
槍が空を切る。
「隼人、追え!」
「分かってる!」
隼人が槍を引き戻す。
その隙に蓮が斬り込んだ。
「ここだ!」
相馬が大太刀を横薙ぎに振る。
蓮は刀で受けた。
「ぐっ……!」
力で押される。
「零奈!」
零奈はすでに弓を引いていた。
「動かないで」
矢が放たれる。
相馬は蓮を押し返しながら、わずかに身体をずらした。
矢が肩をかすめる。
「……なるほど」
相馬が四人を見る。
「前より連携が良くなった」
総司は息を整える。
「でも、まだ届かない」
「そうだな」
相馬が一歩踏み込む。
その瞬間、空気が変わった。
総司の目の前に相馬が現れる。
「速い……!」
大太刀が迫る。
総司は二本の刀を交差させる。
ガキィン!
身体が大きく後ろへ弾かれる。
「総司!」
隼人が駆け込む。
相馬は槍を避け、そのまま隼人の懐へ入った。
「甘い」
「うわっ!」
隼人の槍が弾き飛ばされる。
蓮が背後から斬り込む。
しかし相馬は振り返らず、大太刀の柄で刀を受け止めた。
「連携は悪くない」
「だが、動きが読める」
相馬が蓮を押し返す。
その瞬間、零奈の矢が飛んできた。
相馬が避ける。
そこへ総司が飛び込んだ。
「今度こそ!」
二本の刀を同時に振る。
右。
左。
そして交差。
相馬が大太刀で受ける。
ガキン!
総司の足が止まった。
「……!」
相馬がわずかに笑う。
「そこだ」
「え?」
「今のお前の攻撃は、以前よりずっと良くなった」
相馬が総司の刀を弾く。
だが総司はすぐに体勢を立て直した。
「まだ終わってません!」
左の刀を振る。
相馬が避ける。
右。
左。
さらに一歩。
総司の刃が相馬の隊服をかすめた。
「……!」
隼人が声を上げる。
「当たった!」
相馬は自分の隊服についた傷を見る。
「今のは見事だ」
総司は息を切らしながら笑った。
「蒼月さんとの修行のおかげです」
蒼月が腕を組んだまま頷く。
「少しは形になってきたな」
しかし相馬は大太刀を構え直す。
「だが、実戦ならここで終わりではない」
「次は俺も本気で行く」
四人の表情が引き締まる。
「……!」
相馬が踏み込んだ。
四人は同時に動く。
総司が正面。
隼人が右。
蓮が左。
零奈が後方から援護する。
四人の動きが初めて完全に噛み合った。
相馬の大太刀を総司が受ける。
その瞬間、隼人が槍を突き込む。
相馬が避けた先へ蓮が回り込む。
そこへ零奈の矢が飛ぶ。
相馬は大太刀で矢を弾いた。
しかし、その一瞬の隙に総司が踏み込む。
「双剣術――!」
相馬が構える。
「来い!」
「双牙!」
二本の木刀が同時に迫る。
相馬は受け止めた。
三人の攻撃が重なり、訓練場に激しい音が響く。
そして――
「そこまで!」
蒼月の声が響いた。
全員が動きを止める。
総司たちは肩で息をしていた。
相馬は大太刀を納める。
「十分だ」
隼人がその場に座り込む。
「はぁ……はぁ……勝てる気がしねぇ」
蓮が息を整える。
「当然だ。相手は隊長だぞ」
零奈も弓を下ろす。
「でも、最初よりは動けた」
総司は相馬を見る。
「俺たちは……強くなっていますか?」
「ああ」
相馬は迷わず答えた。
「確実に強くなっている」
総司の表情が少し明るくなる。
「ただし」
相馬の声が低くなる。
「次に戦う鬼が、お前たちの成長を待ってくれるとは限らない」
「……はい」
「五鬼衆のような存在と戦うなら、今のままでは足りない」
総司は双剣を握り直した。
「もっと強くなります」
相馬は頷いた。
「その意志を忘れるな」
その日の夕方。
四人は訓練場の隅で休んでいた。
「疲れた……」
隼人が地面に寝転ぶ。
「明日も修行だよ」
零奈が淡々と言う。
「聞きたくなかった……」
蓮が笑う。
総司は空を見上げた。
「……美月」
まだ妹を助けることはできない。
五鬼衆にも届かない。
だが――
少しずつ前へ進んでいる。
総司は双剣を握り締めた。
「待ってろ、美月」
その頃。
遠く離れた場所では、鬼たちが次の標的について話し合っていた。
「早本総司」
「次の任務で、奴を試す」
第22話 完




