第21話「双剣の修行」
翌朝。
まだ太陽が昇ったばかりだというのに、訓練場には総司が立っていた。
目の前には蒼月刃。
「昨日言った通り、今日から特別訓練を始める」
総司は双剣を握る。
「お願いします!」
蒼月は一本の木刀を地面に置いた。
「まず、それを持て」
「一本だけですか?」
「ああ」
総司は不思議そうに木刀を拾う。
「今日は双剣を使わない」
「どうして?」
「お前は双剣を使うことばかり考えている」
蒼月が総司の構えを見る。
「二本の刀を扱う前に、一本の刀を完全に扱えるようになれ」
総司は木刀を構えた。
「分かりました」
「では、俺に一撃当てろ」
蒼月も木刀を構える。
「ただし、お前は一歩も前に出るな」
「……どういう意味ですか?」
「その場から動かず、俺の攻撃を避けながら一撃を入れろ」
総司は眉をひそめた。
「そんなの無理ですよ」
「だから修行なんだ」
蒼月が踏み込む。
「来るぞ」
木刀が迫る。
総司は反射的に身体を動かした。
しかし――
ゴンッ!
「痛っ!」
肩を叩かれる。
「遅い」
「もう一度!」
蒼月が攻撃する。
今度は頭。
「痛っ!」
腹。
「ぐっ!」
肩。
背中。
何度挑んでも、蒼月の攻撃を避けられない。
「くそ……!」
総司は息を切らしながら立つ。
「もう一回!」
「まだやるか」
「はい!」
蒼月が再び構えた。
「ならば、自分の弱点を考えろ」
総司は目を閉じる。
蒼月の動き。
攻撃の前の足。
肩の動き。
視線。
一つ一つを思い返す。
そして――
「……分かった」
総司が目を開く。
「相手の動きを見すぎてる」
「そうだ」
「だから、次の動きを予測する」
蒼月が微笑む。
「やってみろ」
再び木刀が迫る。
総司はギリギリで身体を逸らした。
木刀が頬をかすめる。
「今!」
総司が踏み込む。
木刀を振る。
しかし――
カンッ!
蒼月の木刀に止められた。
「惜しい」
「……あと少し」
「だが、今のは正解だ」
蒼月は木刀を下ろした。
「お前は戦いながら成長するタイプだ」
総司は汗を拭う。
「強くなれますか?」
「なる」
蒼月は即答した。
「ただし、一つ覚えておけ」
「何ですか?」
「強くなることと、強さに溺れることは違う」
総司は黙って聞く。
「お前は妹を取り戻したい。その気持ちは力になる」
「だが、焦りすぎれば自分を失う」
総司は拳を握った。
「……分かりました」
そこへ、訓練場の入口から声が飛んできた。
「総司!」
隼人だった。
「朝から何やってんだ?」
「修行」
「見れば分かる!」
隼人が笑う。
その後ろから蓮と零奈もやってくる。
「今日から三人も訓練に参加する」
蒼月が言う。
「え?」
総司が驚く。
「お前たちも?」
蓮が頷く。
「総司だけ強くなるのは不公平だろ」
隼人が槍を構える。
「俺ももっと強くならないとな!」
零奈も弓を手にする。
「私も、自分の弱点を知りたい」
蒼月は四人を見渡した。
「いいだろう」
「今日から四人まとめて鍛える」
四人の表情が引き締まる。
「まずは走れ」
「え?」
「本部の外周を百周」
隼人の顔が引きつる。
「百……?」
「聞こえなかったか?」
「いや、聞こえましたけど!」
蒼月は淡々と告げる。
「始めろ」
「うおおおお!」
隼人が走り出す。
総司たちも後を追う。
訓練場に四人の足音が響き始めた。
その様子を、少し離れた場所から一人の隊士が見ていた。
「……あいつらが、今回の新人か」
隊士は静かに目を細める。
「面白そうだな」
その手には、滅鬼団の隊長章が輝いていた。
第21話 完




