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滅鬼伝  作者: ヒガンバナ
第2章「新人隊士・初陣編」
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第17話「黒森の鬼」

黒森町の入口。


総司たち四人は、森の奥から現れた鬼を睨んでいた。


その鬼は、これまで戦った鬼とは明らかに違っていた。


大きな体。


鋭い牙。


そして、全身から漂う異様な殺気。


「滅鬼団の新人か」


鬼が口元を歪める。


「随分と若いな」


隼人が槍を構える。


「お前が、この町の人たちを襲ったのか?」


「だったらどうする?」


「決まってんだろ」


隼人が踏み込んだ。


「ぶっ倒す!」


槍が一直線に伸びる。


だが――


ガキンッ!


鬼は片手で槍を掴んだ。


「なっ……!」


そのまま隼人を引き寄せる。


「隼人!」


総司が飛び込んだ。


双剣が鬼の腕を斬りつける。


ザンッ!


鬼の腕から血が飛ぶ。


「ほう」


鬼は傷口を見つめた。


「双剣か」


総司は隼人を引き戻す。


「大丈夫か?」


「なんとか……」


鬼が笑う。


「今の斬撃、悪くない」


「だが――」


傷口がみるみる塞がっていく。


「俺には届かない」


零奈が弓を構える。


「だったら、動きを止める」


矢が放たれる。


一本。


二本。


三本。


鬼の脚、肩、腕へ次々と突き刺さる。


「今!」


蓮が一気に距離を詰めた。


「斬る!」


刀が鬼の首へ迫る。


しかし鬼は身体を捻り、刀をかわした。


「甘い」


拳が蓮の腹へ入る。


「ぐっ……!」


蓮の身体が吹き飛ぶ。


「蓮!」


総司が駆け出す。


その前に鬼が立ちはだかった。


「次はお前だ」


「……!」


総司は双剣を構える。


蒼月との修行が頭をよぎる。


二本の剣を別々に動かすな。


一つの意志で動かせ。


「だったら……」


総司が低く構える。


「やってみる!」


右の剣が鬼の腕を狙う。


鬼が防ぐ。


その瞬間、左の剣が反対側から迫った。


「何っ!」


ギリギリで鬼が身体を逸らす。


総司はそのまま回転し、二本の刃を交差させた。


「双剣術――!」


鬼が後ろへ飛ぶ。


「双牙!」


ザシュッ!


胸元に二本の斬撃が走った。


「……!」


鬼が初めて表情を変えた。


総司は息を切らしながら着地する。


「当たった……!」


しかし――


鬼は胸の傷を押さえながら笑った。


「面白い」


傷口が再生していく。


「お前、本当に新人か?」


総司は答えない。


ただ双剣を握り直す。


その時。


後ろから少年の声が聞こえた。


「逃げて!」


総司が振り返る。


先ほど助けた少年が、町の奥を指していた。


「森の中にもっといる!」


「こいつ一人じゃない!」


その言葉と同時に、森の奥から次々と鬼が姿を現した。


十体。


二十体。


さらに増えていく。


隼人が青ざめる。


「おいおい……」


零奈も弓を構え直す。


「数が多すぎる」


蓮が立ち上がる。


「総司」


「ああ」


四人は背中を合わせた。


「町の人たちを助ける」


「そのためにも――」


総司が双剣を構える。


「ここで止める!」


鬼の群れが一斉に襲いかかってくる。


「来い!」


総司たちは鬼の群れへ飛び込んだ。


しかし――


森のさらに奥。


その戦いを見つめる、もう一つの影があった。


「……あれが早本総司か」


木々の隙間から、赤い瞳が光る。


「五鬼衆が気にするほどの男には見えないな」


その鬼は静かに笑った。


「ならば、少し試してみるか」


黒森の夜は、まだ始まったばかりだった。


第17話 完

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