表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅鬼伝  作者: ヒガンバナ
第2章「新人隊士・初陣編」
PR
16/48

第16話「4人での初任務」

滅鬼団に正式入隊してから、二週間。


早本総司は、朝から訓練場にいた。


二本の刀を握り、何度も木刀を振る。


「右が遅い」


背後から声が飛んできた。


総司が振り返ると、蒼月刃が腕を組んで立っていた。


「またそこですか?」


「何度言わせる。双剣は二本を同時に振ればいいわけじゃない」


蒼月が木刀を拾う。


「右を振る時、左をどう動かす?」


「右の攻撃を補うように……」


「違う」


蒼月が一歩踏み込んだ。


「右も左も、どちらも攻撃だ」


木刀が一閃する。


総司の目の前で止まった。


「二本あるなら、二つの攻撃を同時に成立させろ」


総司は黙って木刀を見る。


「……難しいですね」


「だから修行するんだ」


蒼月は木刀を返した。


「今日の任務が終わったら、また鍛えてやる」


「ありがとうございます」


その時だった。


「総司ー!」


訓練場の入口から隼人が走ってくる。


「隊長が呼んでるぞ!」


総司は木刀を置いた。


「任務?」


「ああ。しかも今回は俺たち四人で行くらしい」


「分かった」


総司は刀を腰に差した。


第一討伐隊の隊舎へ向かうと、蓮と零奈もすでに待っていた。


相馬隊長が机の上に地図を広げている。


「今回が、お前たち四人にとって初めての任務になる」


隼人の顔が明るくなる。


「ついに俺たちだけで?」


「浮かれるな」


相馬の一言で隼人が姿勢を正した。


「任務地は北東部の山間にある町、黒森町だ」


「三日前から、住民の行方不明が相次いでいる」


零奈が地図を覗き込む。


「人数は?」


「現在確認されているだけで七人」


総司の表情が険しくなる。


「鬼の仕業ですか?」


「可能性が高い」


相馬は地図の一点を指した。


「特にこの辺りで目撃情報が集中している」


「ただし、鬼の姿を直接見た者はいない」


蓮が口を開く。


「つまり、まだ鬼の種類も強さも分からない」


「その通りだ」


相馬は四人を見渡す。


「無理に戦う必要はない。鬼の強さが分からなければ、一度撤退して報告しろ」


総司は頷いた。


「了解です」


「それと、もう一つ」


相馬の声が少し低くなる。


「今回の任務では、周辺に上級鬼が出たという情報もある」


空気が変わった。


隼人が槍を握る。


「上級鬼……」


総司の脳裏に、あの骸の姿が浮かんだ。


圧倒的な力。


簡単には通じなかった攻撃。


そして、妹・美月のことを知っていた鬼。


総司は刀の柄を握る。


「今度こそ……」


蓮が横を見る。


「焦るな」


「分かってる」


「本当に分かっている顔じゃない」


「……うるさい」


隼人が笑った。


「まあ、いつもの総司だな」


零奈も小さく笑う。


「でも、今回は四人一緒」


「一人で突っ込まないで」


総司は三人を見る。


「分かった」


四人は本部を出た。


馬車で数時間。


黒森町へ近づくにつれ、辺りの景色が変わっていく。


木々が増え、道も狭くなる。


やがて町が見えてきた。


しかし――


人の姿がない。


「……静かすぎる」


零奈が呟く。


総司は馬車から降りた。


町の入口には「黒森町」と書かれた古い看板が立っている。


その下には、深い爪痕が残されていた。


「鬼がいる」


総司が言う。


蓮も刀に手を添える。


「間違いない」


隼人が槍を構えた。


「じゃあ、行くぞ」


四人は町の中へ入っていった。


店は閉まっている。


家の扉も開いたまま。


だが、人だけがいない。


「誰もいない……」


零奈が周囲を探る。


「待って」


突然、零奈が立ち止まった。


「どうした?」


「血の匂いがする」


四人は顔を見合わせる。


匂いを辿っていくと、一軒の民家にたどり着いた。


総司が扉を開ける。


中には家具が倒れ、壁には爪痕が残っていた。


だが、死体はない。


「襲われたのに、死体がない?」


隼人が呟く。


その瞬間。


二階から物音がした。


「誰かいる!」


総司が階段を駆け上がる。


二階の奥。


閉ざされた部屋の中から、かすかな声が聞こえた。


「……助けて」


総司が扉を開ける。


そこには一人の少年が震えながら座っていた。


「大丈夫か?」


少年は総司を見るなり、泣きながら飛びついてきた。


「鬼が……」


「鬼がみんなを連れていった……」


「どこへ?」


少年が震える指で窓の外を指す。


町の奥。


深い森へ続く道。


「あそこ……」


「森の中に鬼の巣がある」


総司は双剣を抜いた。


「行こう」


蓮が止める。


「待て」


「まずこの子を安全な場所へ――」


その瞬間。


森の奥から――


低い咆哮が響いた。


町全体が震える。


少年が怯える。


「来た……」


総司は刀を握り直した。


森の中。


無数の赤い目がこちらを見ていた。


そして、その中心から――


一体の鬼がゆっくりと姿を現す。


「滅鬼団……」


鬼は笑った。


「ようやく来たか」


総司たちは武器を構える。


正式な隊士となって初めての任務。


それは――


想像していたよりも遥かに危険な戦いの始まりだった。


16話完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ