第11話「五鬼衆の影」
北の山村。
鬼の討伐を終えた翌朝。
第一討伐隊は村を出る準備をしていた。
村人たちは滅鬼団の隊士たちを見送りながら、何度も頭を下げている。
「本当にありがとうございました」
「皆さんが来てくれなかったら、私たちは……」
総司は小さく首を振った。
「礼なんていりません」
「俺たちは滅鬼団だから」
その言葉を聞いた隼人が笑う。
「お前、すっかり隊士らしくなったな」
「そうか?」
「最初はもっと怖い顔してたぞ」
「今も怖いだろ」
「それはそうだな!」
「おい!」
二人のやり取りに、零奈が小さく笑った。
蓮だけは少し離れた場所で村の様子を見ていた。
「……」
⸻
その時。
相馬隊長が総司たちを呼ぶ。
「少し話がある」
「はい」
隊士たちは集まった。
相馬は一枚の紙を取り出す。
「昨夜、村の周辺から特殊な鬼の痕跡が見つかった」
「特殊な鬼?」
隼人が首を傾げる。
「五鬼衆直属の鬼が使う紋章と同じものだ」
総司の表情が変わった。
「五鬼衆……」
相馬は頷く。
「鬼王軍には、一般の鬼とは別格の存在がいる」
「それが五鬼衆だ」
⸻
相馬は続ける。
「五鬼衆は鬼王直属の五人」
「一体一体が、隊長クラスでも簡単には勝てない怪物だ」
隼人の顔から笑みが消える。
「そんな奴らが……五人も?」
「ああ」
零奈が尋ねる。
「今回の村の事件も、その五鬼衆が関係しているんですか?」
「可能性は高い」
相馬は険しい顔をする。
「だが、まだ証拠がない」
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総司は拳を握る。
「その五鬼衆の中に……妹を連れ去った鬼がいる可能性は?」
相馬は黙った。
やがて口を開く。
「……否定はできない」
「だったら!」
総司が一歩前へ出る。
「俺はそいつを探します」
「美月を取り戻すために」
相馬は総司を真っ直ぐ見つめた。
「焦るな」
「お前はまだ隊士になったばかりだ」
「五鬼衆と戦えば、今のお前では死ぬ」
「……」
総司は悔しそうに俯いた。
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その夜。
滅鬼団本部。
総司は一人、訓練場にいた。
「もっと……」
木刀を振る。
「もっと速く……!」
一振り。
二振り。
三振り。
何度も双剣を振り続ける。
「美月……」
その時。
「そんなに焦っても、剣は速くならないぞ」
背後から声がした。
総司が振り返る。
そこに立っていたのは――
蒼月刃。
滅鬼団最強の八人。
双剣特務隊長だった。
「あなたは……」
「蒼月刃だ」
「お前の戦いを見た」
総司は驚く。
「俺の?」
「ああ」
蒼月は総司の双剣を見る。
「その剣……誰に教わった?」
「父です」
「なるほど」
蒼月は少し考える。
「お前の父親は、昔……」
そこで言葉を止めた。
総司が聞き返す。
「父を知っているんですか?」
「……いや」
蒼月は背を向ける。
「今はまだ話せない」
「どういう意味ですか?」
「いつか分かる」
そう言って去っていった。
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一方。
鬼王城。
暗い部屋。
五人の鬼が集まっていた。
その中央に立つ鬼。
五鬼衆第五席。
黒崎羅刹。
「人間の双剣使いが現れたそうだな」
隣にいた鬼が答える。
「はい」
「早本総司という少年です」
黒崎羅刹は笑う。
「早本……」
「その名、どこかで聞いたことがあるな」
その瞬間。
部屋の奥から声が響いた。
「そいつは――」
「私が殺す」
五鬼衆の一人が立ち上がる。
黒崎羅刹が振り返る。
「ほう?」
「珍しいな」
「お前が自分から動くとは」
鬼は不気味に笑った。
「早本総司……」
「その少年には、特別な因縁がある」
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その頃。
鬼王城の奥。
鎖につながれた美月は、一人で眠っていた。
その胸元には、黒い紋様。
しかし――
その紋様が、かすかに脈打っていた。
「……お兄ちゃん」
美月は夢の中で呟く。
「早く……来て」
黒い紋様が、一瞬だけ赤く光った。
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そして同じ頃。
滅鬼団本部。
蒼月刃は一人、古い記録を開いていた。
そこに記されていた名前。
早本真一郎
総司の父の名前だった。
蒼月は静かに呟く。
「……やはり、あの男の息子か」
その記録の最後には、一つの文章が残されていた。
『鬼王黒神羅と対峙した唯一の隊士』
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総司はまだ知らない。
父が何者だったのか。
なぜ美月が鬼王に連れ去られたのか。
そして――
自分の双剣に隠された秘密を。
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第11話 完




