その10
神仏無と真一文字は互いに拳銃を突きつけ合いつつ、少しずつ距離を詰めていく。双方ともに急所を狙っているため、一発で片を付けるつもりだ。
「ゲームオーバー、か。下らんな。そんなことを言うためにわざわざ此処まで来たのか?」
「若彦、もうバカな真似はやめろ。既に機動隊がこの広場一帯を包囲している。もはや逃れることはできんぞ」
「……ふん、そんな脅しで私が引き下がるとでも思っているのか?」
神仏無は真一文字を挑発するように嘲笑った。真一文字は顔をしかめながら一歩また一歩近づいていく。すると神仏無の背後からガチャという装填音が響いた。
「あっ!?」
思わず真一文字が声を上げる。神仏無は後ろを振り返ることなく、空いたもう一つの腕に仕込んだ拳銃を袖口から射出すると装填音のした先に銃口を向けた。
「無駄だ、千奈津。今更抵抗しようとしても遅いぞ」
「………さすがショーグン。此方を見ていないのに完全に銃口は私の頭に向いてますね」
此処に来て真一文字は歩みを止めた。次の一手で何かが決まる。まだ神仏無の仕掛けた高性能電磁パルス装置が止まったと言う知らせは真一文字の無線には入ってきていない。神仏無が未だ余裕を崩さないのはそれが手の内にあるからだろう。真一文字は考えを巡らす。
「………真一文字よ。お前の考えていることを当ててやろう。コイツのことじゃないか?」
神仏無はこれ見よがしに自身の腕に巻いた起動装置をアピールする。考えを読まれたことに真一文字は一瞬動揺したが、神仏無に悟られないようすぐに平静に戻った。そしてフッと笑ってみせる。
「……何がおかしい?」
「お前を「L.O.S.T」へ引き込んだのは私の責任だ。それについては謝らないといけない。しかし…だ。今のお前はフリーランスのテロリストを名乗っているようだが、所詮やってることは茶番劇、只の革命ゴッコに過ぎないと思ってな。ショーグンだの祭り上げられた結果、行き着いた先が何とも子ども染みた復讐劇とはおかしくてな。全く可愛いもんだ」
「なん…だと……!!」
図星だったのか神仏無は怒りの表情を見せた。しかし今の神仏無は双方から銃口を向けられている状況であるため、起動装置を押すことはできない。膠着状態のまま、時間だけがゆっくりと流れていく。誰しもが次の一手を思案していると、上空からジェットエンジンの音が近づいていることに三人は気づいた。機動隊の武装ヘリ?いや明らか小型のジェット噴射による音である。三人が一斉に視線を上空へ向けると、空を飛ぶ人影が飛び込んできた。そしてその人影の正体が判明した瞬間、神仏無の顔が驚愕と憤怒に変わった。
「つ、月鏡ぃぃいい!!!」
「ユーシュー君?!!」
「月鏡さん??」
両方の義足からジェットを噴き出しながら月鏡は一直線に神仏無へ向けて突っ込んできた。




