その9
東京タワーのトップデッキから飛び降りた神仏無と北條は背中に仕込んだジェットパックを駆使すると、タワー近くの人気のない小さな広場へ向かってゆっくり降下していく。しばらく飛んだ後、無事に地上へと二人は降り立った。
「…上の方が騒がしくなったようだな。しかし奴らにしてはイヤに仕事が早いようだが…。まっ、いずれにせよ我々には関係のないこと。高性能電磁パルス装置を解除しようとしても、全ての手の内はまだこちらにある」
神仏無はニヤリと笑い、北條へ自身の腕に巻かれている装置の起動スイッチを見せた。その姿を北條は未だ虚ろな表情で見ている。神仏無は不機嫌そうに顔を歪めると、北條の顎に手を当ててクイッと持ち上げた。
「………そんなに私が嫌か?条件反射的にかつての姿に戻ってくれるのは嬉しい限りだが、何故こうも私を不快にさせる?何が私の癇に触るのだ?一体何がいけないと言うのだ?」
「……貴方が…貴方がそれを望んだから。私は感情を捨てた。でもそれは私の望んだ姿ではない…」
北條の言葉を受けて更に神仏無の表情は強張る。そしてそのまま顎に当てた手で北條を平手打ちした。北條は打たれた衝撃で地面に伏す。
「………くっ…あの男の仕業なのか!月鏡ぃ……あんなゴミクズ以下の奴が、この…この私の最高傑作を汚しただと…?」
神仏無は両方の拳を握り締めて今まで感じたことのない苛立ちを見せる。北條は頬を押さえながら顔を上げると、神仏無をギロリと睨み付けた。
「彼は…ユーシュー君はゴミクズなんかじゃない」
「何…?」
「貴方の方が………過去に囚われた只の臆病者じゃない」
「何だと、貴様!!」
神仏無は懐から拳銃を出すと銃口を北條へ向けた。いつもの余裕は完全に無くなり、憤怒の感情をむき出しにしている。
「……無様に命乞いをしろ。今ならまだ助けてやる」
「………」
「三十秒だけ待ってやる。さもなくば三十秒経った瞬間、お前の頭をぶち抜く」
「………」
「さあ…今すぐやれ!!」
神仏無が拳銃の引き金に指を掛けた瞬間、横の茂みから突然何かが飛び出す音が上がった。神仏無が反射的に音の方向へ銃口を向けると、そこには厳しい表情をした真一文字が拳銃を向けて立っていた。真一文字の姿を見た神仏無は目を見開いて驚愕する。
「な、何故だ?真一文字、何故貴様が此処に?!」
「ゲームオーバーだ、若彦。此処で全て終わる」




