その8
神仏無の裏切りにトップデッキ内が大パニックになる中、月鏡は突風に耐えながら外へ飛び出した神仏無と北條を目で追った。神仏無と北條の落下速度がだんだん緩んでいっているように見える。更によく見ると二人の背中から何か炎のようなものが噴き出していることに月鏡は気づいた。
「チッ…ジェットパックを仕込んでいたか!」
月鏡は突風が収まるのを待つと床に転がっていたアサルトライフルを掴んだ。そして窓の外へ向かって発砲しようと引き金を弾く。すると「バクフ」のメンバーの一人が月鏡を羽交い締めにしてきた。
「!?何をする?」
「うるせぇ!ショーグンに裏切られた今、もうどうでもいい!お前ら皆巻き添えだ!このタワーに仕掛けられた高性能電磁パルスを起動させて首都を完全に石器時代に戻してやる!」
そう言うと突然モニターが点き、カウントダウンを彷彿させるタイマーが作動し始めた。神仏無が持ち込んだのであろう高性能電磁パルスを発生させる装置と思しきものが動き始めたということか。
「今すぐ止めろ!でないと大変なことになるぞ!」
「承知の上だ!貴様も此処まで…」
月鏡を羽交い締めにしていたメンバーの声が途切れる。そしてそのままメンバーは力なく床に崩れ落ちた。驚いて振り返った月鏡の目に飛び込んできたのは更に驚く光景だった。
何とそこに立っていたのはさっき北條に撃たれたはずの槍田だったからだ。更に完全武装した機動隊がトップデッキへとなだれ込み、外には武装ヘリが近づいてくるのも見えた。
「こ、これは一体??」
「ふー…千奈津の奴、一芝居打つとは言え、随分と派手に撃ってくれたね。防弾チョッキを仕込むように言われてなければ確実に死んでたよ」
「槍田さん…ですよね?まさかお化け…」
「そんな訳ない。あんたには悪いけどショーグンを油断させるために利用させてもらったんだ。お陰で奴の本性を連中の前で暴くことができたし、何より千奈津の心を助けてくれた」
槍田の言葉に月鏡は呆然とした。槍田から明かされた情報量の多さに混乱していると、すぐさま機動隊に保護される。更にトップデッキへ残っていた「バクフ」のメンバーらも混乱の末に機動隊によって粗方制圧されたようだった。
「高性能電磁パルス装置は?」
「大丈夫。機動隊に加えて、その道のプロを呼んでるからすぐに無効化できる」
「よ、良かった…」
「後はショーグンと千奈津だけか」
槍田は機動隊に肩を借りながらポツリと呟く。月鏡はハッとすると、破れたトップデッキの窓から顔を覗かせた。どうやら二人はまだゆっくりと地上へ向かって降下しているようだ。まだ間に合うだろうか。ショーグンを、いや北條を止めねば。
「月鏡君?」
「槍田さん…申し訳ない。俺は行きます!!」
「何を!??」
槍田と機動隊の制止を振り切り、月鏡はトップデッキの窓から光輝く夜景の向こうへと、その身を投げた。




