一掃
戦いの火蓋を切ったのは、眼前にいる土色の竜だった。
薙ぎ払うように腕を振るってくる。それを、微動だにせず手の平で受け止めた。
「ば、馬鹿な……」
「嘘だろ。あのガキ、グランドドラゴンの攻撃を受けて平気なのかよ!?」
両手で爪を掴んで、巨体を持ち上げる。
「グオオ!?」
「ああアアアッ!!」
そのまま、思いっきり地面に叩きつけた。絶叫を上げてる隙にジャンプし、脳天に踵落としをかます。
「ガァ!!」
「よいしょー!!」
悲鳴を上げて悶絶する竜を海へと投げ飛ばした。
「「ええええええええええええええええええええええっ!!?」」
ドラゴン達が標的を俺に絞り、次々と襲いかかってくる。
そうだ、それでいい。お前等の相手は俺がしてやる。
「おお!!」
「「グルオオオッ!!」」
互いに気合の一声。
巨大な口を開けて噛み砕かんとする竜の顎にアッパーを打ち込む。顔の上に乗り、眉間に拳を叩き入れた。
「グ……ォ」
白目を剥く竜の角を掴み、海へと放り込んだ。
前方から熱量を感じ取る。ドラゴンが吐息ブレスを放ったのだろう。
「はっ!」
右足を蹴り上げ、脚風でブレスを掻き消す。ブレスを吹いた竜に接近し、腹に拳撃をぶち込んだ。
「グゥ……ォ……ォゥ」
ゲロを浴びる前に、尻尾を掴んで海に投げる。
「俺たちは一体何を見ているんだ?」
「たった一人でドラゴンと戦ってやがる」
「あの少年は……英雄なのか?」
「いけ、やっちまえ!!」
「「いけぇぇええええええええええええええッ!!」」
何だか周りが騒がしくなってきたな。
お前等盛り上がる前に戦えよ。いや、邪魔だからいいけども。
にしても怪我人運ぶとかやる事あるだろ。
「どうしたドラゴン。生物の頂点はこの程度なのかよ」
「グ……ォォオオオオオオオオオオッ!!」
ニィ、と歯を剥き出しにして笑みを見せながら煽ると、ドラゴンは本能の赴くままに襲いかかってくる。
それから死闘……とは程遠い蹂躙が始まった。
俺はドラゴンの攻撃を躱し、受け流し、殴っては投げ蹴っては投げを繰り返す。
徐々に数を減らしていき、百十二体目を投げた頃、地上にいるドラゴンをあらかた倒し終えた。
ふぅ……と一息していると、一人の兵士が近づき声をかけてくる。
「し、少年……君は一体何者なんだ」
「どこにでもいるただの高校生だよ」
「は? コウコウセイ?」
「次は空にいるドラゴンを相手にしてくるから、もし撃ち漏らしたのがいたら頼むよ兵士さん」
困惑している兵士にそう告げ踵を返し空に向かおうとしたのだが、「待ってくれ!」と呼び止められる。
なんだよもう、早く行かせてくれって。
「少年、ありがとう。私達の国を守ってくれて」
「……礼を言うにはまだ早いぜ」
跳ぶ。空気を蹴ってさらに跳ぶ。
すれ違い様にドラゴンを気絶させながら、もっと跳ぶ。すると結界の頂上にたどり着き、その上に乗り立つ。
学園長さんの結界は国を円型に覆うように展開されている。だが、度重なるドラゴンの猛攻によって所々ひびが入っており、崩れるのも時間の問題だろう。
いや、ここまで保っている方が驚きだ。あの人、平気な顔して話してたけど相当無理してたんだな。
「さて」
黒い海の上には、ドラゴンが蟻の如く犇いている。一匹ずつ倒すには数が多過ぎるな。
だから――、
足場にしている結界からさらに上へ跳ぶ。遥か上空から、敵を狙い定めた。
「すぅぅぅぅはぁぁぁぁーー」
息を整え、腹に力を溜め込む。練りに練った力を拳に伝達し集束させると、両腕を強く引き絞った。
「星皇拳――"一万五千流星拳"」
ドラゴンの群れに向けて拳撃の嵐を放つ。
俺の拳から放たれた拳圧は流星の閃光となりてドラゴンに降り注いだ。
「グォォオオオオオッ!!」
「ガァッ!」
「ギャオオォォオオオオオ!!」
黒い海の上で、竜の絶叫演奏が響き渡る。拳圧を浴びたドラゴンは次々と暗い海に落ちていった。
「はぁあああああ!!」
手を休めない。
雄叫びを上げながら、連撃を繰り出していく。
そして、最後の一発を撃ち放った俺は大きく息を吐いた。
「はぁ……こんなもんかな」
一掃。
飛んでいるドラゴンは、一匹も視界に存在しない。




