システィスVSアルフレッド
短めです
魔法学園訓練場。
システィスは中級生の中で最も優秀な生徒であるアルフレッドと相対していた。
緊張感を漂わせている彼女に対し、最優の生徒は余裕の表情を浮かべている。
そんな二人の周りには、同じクラス生徒達が距離を取り観戦していた。その中には、平太とカタリナの姿もある。
「どっちが勝つと思う?」
「んなもんアルフレッドに決まってんだろ」
「だよな。あいつが上級生以外に負けた所なんて見たことねぇよ」
「でも、システィスさんだって強いわよね」
「ああ。中級生の中でも十本に入ると思うぜ。だから勝ちはしねぇが、善戦はするんじゃないか」
生徒達の中で、今から戦う二人の結果予想が飛び交っていた。予想内容は、九割九分アルフレッドの勝利。
その内容を聞いていたカタリナは、隣でボケーと突っ立っている平太に問いかける。
「アンタはどう思う?」
「分からねーよ、イケメン君がどれだけやれるか知らねぇし。それに俺は結果なんてどうでもいいしな」
「は? どういう事よ。自分からシスティスを戦わせておいて」
「勝ったら褒めればいいし、負けたらまた厳しく修行させたらいい。重要なのは内容だ。俺から戦い方を教わったあいつが、イケメン君とどう戦うかを見たいんだ」
「…………」
平太の話しに、カタリナは彼の横顔を見つめながら思考を巡らす。
この男は、平太は、どうしてここまで自分達の事を真剣に考えくれるのだろうか、と。
確かに護衛をしてくれとは頼んだ。しかし、言ってみればそこまでの関係に過ぎない。それ以上のことをしてくれても、何の見返りもないはず。
なのにこの冴えない少年は、自分達が強くなるよう無償で面倒を見てくれるのだ。
(それにヘイタって、こんな風に時々真面目になるのよね)
まだほんの少ししか同じ時を過ごしてないが、カタリナは平太の人間性を大体把握している。
普段はアホでスケベな事ばかりしているのに、ふとした時に今のように真剣な顔が出る。
その表情で話す時は、カタリナ達は何も言い返すことが出来ないでいる。まるで、我儘を言う子供を諭す大人のように。
そしてそのギャップが、多少なりとも乙女心を揺らしているのだが、本人は気づいていない。
不思議な少年だ、とカタリナは思った。
邪神を倒す為に、女神(まだセレナを本物の女神だと信じていない)によって異世界に呼ばれた勇者で、既に三体の魔王を討伐しているという。
初めて聞いた時は「何を馬鹿な事を」と鼻で笑ったが、海竜ダイダロスを一撃で追い払った光景を目にしたら、もう信じるしかないだろう。
隣にいるこの少年が、正真正銘勇者であると。
(はぁ、こんなのに私達の未来を託すなんてね。まっ……いいか、こいつなら)
胸中でため息を吐きながらも、平太になら己の命を託しても悪くないと思ったのだった。
(アルフレッド君との対戦なんて、いつ以来だろ)
アルフレッドと向かい合うシスティスは、緊張でゴクリと唾を飲み込む。
平太から代わりに戦って欲しいと突然の指示。
困惑したが、強くなる為だと了承した。が、勝てる自信は一切無かった。
何故ならシスティスは、幾度かアルフレッドと対戦しているが、全戦全敗なのだ。まだ一度も勝てた事がない。
だが、システィスは悲観してなかった。それは今日まで平太に厳しく鍛えられたからである。
戦い方を教わった今の自分なら、アルフレッドにも勝てる可能性はあった。
(違う、勝てるかもじゃない……勝つんだッ!)
弱気な心に叱咤する。
強くなった姿を、師匠ヘイタに見せてやると、己を鼓舞した。
「今まで一度も勝てなかったお前が、僕に勝てると思っているのか」
「悪いけどアルフレッド君、今回は私が勝つよ」
「……何?」
堂々とした勝利宣告。
今までは異なる彼女の強気な態度に、アルフレッドは疑問を感じた。何か秘策でもあるのか、と。
が、そんな事を考えても詮無きこと。いつも通り力で捩伏せればいい。
二人が口を閉じ、戦闘態勢を取ったのを確認した審判役のクルスは、試合開始を合図した。
「双方、くれぐれも死に直結する攻撃は控えるように。私が危険だと感じたら止めますからね。では、試合開始!!」




