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脱衣パンチ






「ヘイタ、準備は出来たかい?」

「ああ、いつでもどうぞ」



 特級冒険者のアリーシャの命令により、俺は彼女と強制的に勝負をする事になってしまった。女性に手を出さない俺としては、果てしなくやる気が出ない。


 場所はギルド内にある訓練所。現役を退いたギルド教官が新人を指導する時に使われているらしい。


 離れた所に、勝負の話を耳に入れていた冒険者達が野次馬の如く集まっている。エール--地球でいうビールのような飲み物--を片手に観戦する気満々だ。


 お前ら楽しそうだな、野球観戦のおっちゃんか。



「はいはーい、アリーシャさんに賭ける人はこっちの箱にお願いしますぅ」

「はあ、んなもんアリーシャに賭けるに決まってんだろ!勝負になんねえよ」

「問題無いですぅ、私が平太さんに金貨五十枚賭けますので!」


「何だと!?じゃあ俺はアリーシャに銀貨十枚だ!」

「俺は百枚!」

「俺は金貨一枚だ!」


「……」



 あのポンコツ女神はあんな所で勝手に何をしているんだ、追い出されんぞ。というか金貨五十枚とか全財産じゃないか。ふざけろよ。


 俺が呆れた眼差しを向けると、セレナはバチンとウインクをしてきて、



(これで平太さんが勝てば賭け分総取りですぅ!一日で超大金持ちですよ!)

(お前後で覚えておけよ)

(ひいぃ!!)



 ため息を吐くと、アリーシャが苦笑していた。



「彼女、面白いね」

「あいつバカなんだ、許してくれ」

「気にしてないよ。それより、そろそろ戦ろうか」

「……ああ、来いよ」



 戦りたくなかったが、ここまできたら付き合うしかないだろう。

 仕方ない、適当に相手をしてやるか。



「行くよ」



 訓練用の木刀を握り締めたアリーシャの氣が爆発する。彼女が力を解放した刹那、馬鹿騒ぎしていた冒険者共が一瞬で静まり返った。

 アステリアでは魔力って言うんだったけか。


 と、呑気に考え事をしていたらいつの間にかアリーシャが消えていた。

 俺は体を半身にして対処する。



「なっ!!?」



 背後に周っていたアリーシャが、不意をついた剣戟を俺に躱されて驚愕している。


 流石特級と褒めるべきか、意外と速かったな。まあ、俺としちゃカメも同然だけど。



「面白いッ!」



 不意打ちを完璧に躱されたからか、挑戦的な笑みが浮かび上がる。魔力もさらに膨れ上がり、剣戟の速度のギアが上がった。


 目にも止まらぬ(俺以外)剣の雨が降りかかってくるが、それでも俺の体を捉える事は敵わない。攻撃を避け続けても埒があかないので、一旦距離を取った。



「なあ、もう充分だろ、やめようぜ」

「冗談ッ!久しぶりにまともに戦える人がいるんだ。もう少し楽しませておくれよ」

「おいおい、手合わせじゃないのかよ」



 アカン、完全にスイッチが入ってしまった。なんかストレス溜まってそうだようなぁ。


 仕方ない、ヒートアップする前にサクッと終わらせるか。

 俺はアリーシャの木刀を片手で受け止めると、ボキッと握り潰してやった。



「これで終わりだよなああああ危ねえええ!?」



 この女折れた木刀を放り投げて、代わりに手刀から伸びた魔力刀で襲いかかってきやがった。危ねえじゃねえか、結構ギリギリだったぞ!



「これでも当たらないか!」

「にゃろう、後で後悔しても知らねえからな」



 俺だって聖人君子という訳ではない。そっちがその気ならこっちにも考えがある。


 俺はアリーシャの洗練された剣技を掻い潜ると、懐に潜り込んだ。そして意識を集中させ、引き絞った拳を放つ。



「必殺--脱衣パンチ」

「ッ!?」



 ぱぁんっと小気味良い音が鳴り響く。拳を受けたアリーシャの防具から下着まで、全てが弾け飛んだ。



「--なっ!!?」

「「うひょおおおおおおおおおおおおお!!!」」



 説明しよう。

 必殺脱衣パンチとは、俺が三か月かけて必死に編み出した、肉体に一切の衝撃を与えず身に纏っている全ての服を無に帰すパンチの事である。

 この技の利点は敵に物理的なダメージを負わすことなく、社会的に抹殺させる事が出来るという、ある意味必殺の技なのだ。



「き、きゃああああああああああああああああ!!!」



 全裸になったアリーシャが顔を真っ赤に染めて絶叫する。大事な所を隠すようにしゃがみ込んだ。

 そんな彼女に、俺はすぐさまローブをかけてやる。因みにローブは観戦している女性冒険者から勝手に拝借した。



「くっそー!遠くでよく見えなかった―!!」

「速過ぎてぱっと見だったんだよな、もったいねえ!」



 野郎共が興奮しながら悔しそうに唇を噛んでいる。その気持ちは痛い程分かる。まぁ俺は間近で見れたがな!!



「「じーーーーー」」



 セレナと女性冒険者、それとうさ耳受付嬢が冷たい眼差しを送ってくる。やばいな、これは後が怖いぞ。



「ひどいよヘイタ、女性の服を引ん剥くなんて!」



 アリーシャにも涙目で苦情を言われてしまった。

 仕方がなかったんだ、女性に手を出せない俺にはこういう解決方法しかないんだよ。


 しかし、男として最低な事をしたのも自覚している。ここで下手に言い訳するよりも素直に謝った方が男らしい。



「すいませんでしたああああああああ!!!」



 土下座である。


 地球式最大級の謝罪だ。これで許してくれなかったら、覚悟を決めるしかない。

 潔く俺も脱ごう。……それって誰得なんだろうな。



「ぷっ、あはははは!いいよ、許す。元は調子に乗り過ぎた僕が悪いんだからね」



 笑って許してくれたアリーシャ、なんと心が広いことか。彼女の爪の垢を煎じて誰かさんに飲ましてやりたいぜ。



「まあ、色々と収穫があったよ。とりあえずヘイタ」

「ん、何だ?」

「僕と一緒に王宮に来て欲しい」

「……え」

「おっしゃああああああ!!私の一人勝ちですぅ!!」



 掛け金を総取りしたセレナは喜びすぎて飛び跳ねていた。勿論おっぱいも跳ねる。


……金は没収しておこう。金に溺れる女神の姿なんて誰も見たくはないしな。


 そして俺は王宮に連れていかれた。



お読み頂きありがとうございます!



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[良い点] ふざけ具合がツボです [一言] これからもふざけ捲って下さい。
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