システィスとカタリナの実力
突然船が揺れたので気になってデッキに出ると、三人が海の下を見て慌てていた。
どうやら魔物に船を攻撃されているそうだ。
学園長さんは船の周りにいる魔物をチラッと確認すると、ため息をついて、
「どれも下級の魔物ね。放っておいても平気よ」
「ええ!?」
「いや、やだな。船が揺れて不愉快だし」
っていうか、何で急に大量の魔物が湧いてきてんだよ。今まで平穏だったのにさ。
「あーそれはね、魔物が出やすい海域に入ったからよ。一般の船なら避けて通るのよね、遠回りでも安全な航路だから」
「学園長は何で安全の航路にしなかったんですか?」
「え? こっちの方が近道だから」
「「…………」」
学園長さんの軽い一言に絶句する俺等。本当この人、破天荒っぷりがやべぇな。
王女様とエリザさんは、これに何年も付き合っていたんだな……同情しちまうよ。
「嫌なら倒しましょう。今いるのは下級の魔物ばかりだし……そうね、システィス、カタリナ、貴女達で魔物を殲滅しなさい。久しぶりに魔法を見てあげるわ」
「えぇ!?」
「私達だけで……ですか?」
襲いかかる学園長さんの無茶振りに困惑する二人。10体ぐらいいるけど、二人でやれんのか?
「この二人は中級生……入学してから二年目なんだけど、とても優秀な子達よ。同学年は勿論、上級生にだって実力は劣らないわ」
「へー」
「あ! アンタ今疑ったわね!?」
「疑ってないよ、全然」
だから肩を掴んで揺らさないで欲しんだけど。なぁ、ちょ、おい、揺らすなって言ってんだろーがクソガキャーーー!
こっちは初めての船酔いで吐きそうなんだよ、察してくれよ!
「学園長にそこまで期待されたらやらない訳にはいかないわね。やるわよシスティス」
「うん、頑張ろう」
おっと、どうやら二人はやる気みたいだ。どれ、俺も観戦してみるかな。
「魔物じゃなくて、美味しいお魚はいませんかねぇ……お腹空きました」
「お前なぁ……」
いつも通りの腹ペコ女神に呆れる。けど実は俺も腹減ってるんだよな。
それに折角の船旅なんだから、獲れたて新鮮な美味い魚を食ってみたい。マグロはいねぇのかマグロは。
「ボルトアックス!!」
「フレイムランス!!」
システィスとカタリナが腕を上げて魔法の詠唱をした刹那、大きさが三メートル以上ある雷の斧と炎の槍が頭上に出現する。
「「やぁぁああああああああああああああああああああッ!!」」
二人が雄叫びを上げながら手を振り下ろすと、魔法が海面から顔を出している魔物共に炸裂した。
バチバチッと閃光が弾け、轟々と火炎が燃え上がる。
少し経つと、真っ黒に焼け焦げた魔物が浮かんできた。
「よし!」
「手応えあったわ!」
「ほへーやりますねぇ」
「そうだな、なんか魔法って感じだわ」
魔物を全滅して喜ぶ二人を見て、俺とセレナは感心する。
学園長さんの言っていた事は間違いじゃなかったな。確かに二人の魔法は凄かった。
でもな~ちょっとな~。
少し気になった事があったので、横にいる学園長さんに尋ねてみる。
「なぁ学園長さん、今二人が使った魔法って強いの?」
「中級で、充分威力もある魔法よ。二人がよく使っている得意魔法ね」
「ふーん。なぁお前等、また何体か魔物も出てきてるし、もう一回さっきの魔法で倒してくれよ」
そう頼むと、システィスは疑問気に、カタリナは不満気に答えてくる。
「わ、分かりました」
「別にやってもいいけど」
「おうサンキュー」
軽く礼を告げると、二人は新たに出現した魔物に目を向け、再度魔法を放つ。その光景をじっくり見ていた俺は、
(うん、やっぱりそうだな)
確認し納得すると、魔物を全滅させて一息ついている彼女達へと声をかけた。
「そこから今の魔法を俺に撃ってくれよ。ああ、ちゃんとぶっ殺す気でやれよ。じゃないと意味がないからな」
「「ッ!?」」
突然物騒な事を言われ驚愕する二人。システィスが慌てた様子で問いかけてきた。
「ヘイタさん……一体どういう事ですか」
「いいのいいの、真面目に考えなくて。な、いいだろ学園長さん」
「いいわよ。システィス、カタリナ、気にせずやっちゃっていいわ。何が起こっても私が責任取るし、多分貴女達じゃ彼に傷一つつけられないから」
流石学園長さん、話が分かる。それに、いい感じに発破をかけてくれた。これで二人は何も気にせず魔法を撃てる、ありがたいな。
「学園長がそう言うなら……」
「それに、ナメられたままってのも癪だしね」
やーっとやる気を出したか。
俺は両手を広げ、余裕の態度を見せる。
「いつでもどうぞ」
「……」
「本当に当たっても知らないんだからね」
俺とシスティス達との距離は七メートル程ある。
彼女達が魔法を発動した瞬間、俺は――
「ボル――」
「フレ――」
――二人に向かって駆け出した。
右手に白色の斧を、同じく左手に白色の槍を出現させ、二人が詠唱を終える前に切っ先を喉元に突きつける。
「「――――ッ!?」」
「どうした、早くしないとその首殺っちまうぞ」
「「…………」」
「っていうのは冗談。んなビビんなって」
握っている得物を下ろすと、二人は詰まった息を一気に吐き出す。
うん、いい緊張感だな。今頃冷や汗が出まくっている事だろう。
「言っとくけどお前等、俺が手を止めなかったら死んでいたんだからな」
「……」
「ぐっ……ちょっとアンタ、何がしたいのよ。人に魔法を使えって言っておいて、突然こんな」
「俺が反撃しないっていつ言ったよ」
「なっ! あ、アンタねぇ!!」
怒んなって。幾らお前がキレたって少しも恐くねぇから。
「何故俺がこんな真似をしたのかっていうと、これが戦場だったらお前等は確実に死んでるってことよ。言ったよな、俺をぶっ殺す気でやれって。それと、お前等の魔法には無駄が多過ぎるって事を言いたかった」
「無駄……ですか?」
ああ、と頷き、ピンときてない二人に説明してやる。
「お前等の魔法は、手を上げる→詠唱する→頭上に出現する→手を下ろすと同時に魔法を放つ、だ。無駄な工程が多過ぎる。
それに対し俺がしたのは、接近しながら得物を出現する→突きつける、たったこれだけだ」
面倒な手順を踏まず、実にシンプル。けどこいつ等はそれが出来ない。
いや、考えた事も無かった筈だ。
カタリナは言い訳がましく、唇を尖らせて反論してきた。
「そんな事言われたって、魔法を発動する為にはこうするしかないのよ。それに学園ではこのやり方でも充分通用するわ」
ほらな、やっぱり。その考えが駄目なんだよなぁ、甘い甘い。
今日はもう一話更新します!(多分)




