ビッチからのお誘い
短いです…
魔導船、魔力を動力にした船。
故に船員はいらず、動力源となる学園長一人いれば船は動くのだ。ただし、この船をたった一人で動かし続ける化物クラスの魔力を保有していればの話しだが。
そんな船に、俺達は無条件で乗船させてもらっている。ポチやスラ太郎も含めて。
俺以外の皆は、デッキに出て海を眺めて楽しんでいる。セレナなんか、「うわぁ、凄いですぅ」と初めて拝む壮大な海に感動して目を潤わしていた。
そして俺はというと、
「で、俺に話しって何ですか、学園長さん」
そう、俺は学園長に呼ばれて一人船長室に訪れていた。一体彼女は何を聞きたいのだろうか。
「そんなに身構えないで、ただの世間話よ。ほら、いつまでも立ってないで、座んなさいな」
「は、はぁ……」
促されたので大人しく着席する。すると学園長は、ジロジロと値踏みするような視線を送ってくる。
「へぇ、これがねぇ……」
「さっきから何なんすか。言いたい事があるなら言って下さいよ」
「あら、ごめんなさい。本当にただの子供だなーと思ってね。こんな何処にでもいそうな冴えない男の子が異世界から来た勇者で、既に二体もの魔王を討伐する程の実力者だなんて全然見えないじゃない?実は半身半疑なのよねぇ」
実はリリスを含めたら三人なのだが、別に俺が倒した訳でもないから黙っとくか。
俺が信じられない、ねぇ。まぁ仕方ない、彼女の気持ちも分かる。なんたってどこにでもいる冴えない男の子……ておい、冴えないってのはどういう意味だこら。
彼女からばかり質問されるので、今度は俺の番だ。
「学園長は王女様とエリザさんとはどんな関係なんですか? 随分親しそうですけど」
「あの二人とはただの同期よ、私が今学園長をやっている魔法学校のね」
「同期?」
「そうよぉ、思い出せばあの頃は楽しかったわねぇ。リオンは笑顔で毒舌撒き散らすし、エリザはツンデレで揶揄いがいがあったし、ずっと三人でつるんでたわ。そういえば、エリザが密かに好いていた人を摘み喰いしてブチ切られた事もあったわねぇ、あー懐かし」
あー……エリザさんがピンク色の髪は淫乱だとか毛嫌いしていたけど、絶対学園長の事だな。
「あっエリザの手紙に、君には絶対に手を出すなって書かれてたんだけど、もしかしたらそういう関係なのかしら?」
「えっ? いや、違いますけど」
「ふーん、あのエリザから男の名前が出るなんて滅多にないんだけど、それだけ信頼されてるって事よね。……ちょっと興味が湧いてきたわ、また私が食べちゃおうかしら。どう、しちゃう?」
「!?」
獲物を狙う蛇のような眼光を向けてきて、紅い唇を舌舐めずりする学園長。俺はぞわぞわと背筋に走る悪寒を感じながら、慌てて却下する。
「いや、遠慮しておきます」
「あらそう? 残念ね」
あっぶねー、断っておいて良かった。ちょっと勿体ない感はあっが、もしハッキリ断らずに言葉を濁していたら多分喰われていたぞ。そういう眼と、空気を纏っていた。
「二人共ね……幼い頃に母親を亡くしてるし、王族だかとかで最初出会った時は壁が高くてとっつきにくくかったけど、そんなもん私がぶっ壊してやったわ」
うん、でしょうね。そんな光景が目に浮かぶわ。
「今はかけがえのない親友よ」
「……」
話しを聞いてるだけで分かる。きっとこの人は、とても王女様とエリザさんを大切に想っているんだろう。声に優しさが満ち溢れているよ。
「さて、あの二人から出来る限りの手助けをして欲しいって頼まれたからには私も協力するけど、貴方達の目下の目的はシルヴィア共和国でいいのよね」
「はい」
「着いてからの用事とか方針はあるの?」
「いや……まだです」
そういやチムバァにシルヴィア共和国に行けばいいって伝えられたけど、到着してからの行動は何も言われなかったな。
どうすりゃいいんだろ。
すぐに最後の魔王が軍団連れて襲ってくんのかな? それが一番手っ取り早いんだけど、まぁ……ないわな。
「貴方達って今システィスの護衛をしているのよね?」
「そうですけど」
「なら提案なんだけど、共和国に着いてからも護衛を続行してくれないかしら」
「え」
何だって?
「国内にあの娘の命を狙う敵がいる。いや、国内だからこそ敵は多いわ。もうすぐ長期休暇も終わり学校が始まる。私は付きっ切りであの娘を守ってあげる事が出来ないのよ。という事で」
そこで一旦区切り、彼女は真っ直ぐに俺を見つめ真剣な表情でこう言ってくる。
「貴方、ウチの生徒になってシスティスを守ってくれないかしら」




