二人のお願い
「あの、そんなに見られると……流石に恥ずかしいんですけれど」
「ちょっとアンタ、無遠慮すぎよ! いつまでシスティスの胸ガン見してんのよ変態ッ!!」
「平太さん? 失礼なのでやめて下さいね」
「いひゃいいひゃい、すまんかった」
システィスが恥じらいながら、視線から逃れるように両手で胸を隠し、カタリナが冷たい目で罵倒し、横からセレナが頬をつねってくる。
確かに女性のおっぱいをジロジロと眺めるのは失礼極まりない事だ。
でもしょうがないんだよ……おっぱいに目が吸い寄せられるのは条件反射みたいなもんなんだ。
「コホンッ……。ヘイタさん、私達はあなたにお願いがあって会いに来ました」
和やかな空気を変え、神妙な表情でシスティスが口火を切る。
お願い……か。
そのお願いってのは大体見当がついていたので、こちらから言わせてもらった。
「それって、さっき襲ってきた奴等と関係あるんだろ?」
「はい、お察しの通りです。私達は先程、何者かに突然襲われ、追われていたのです。そして逃げている途中ヘイタさんに会い、あなたは圧倒的な力で私達を守ってくれました」
「そういや、あの黒い奴等はどうしたんだ?」
「手当した後、騎士様に託しました」
へー、警察みたいな組織があるのか。
「聞いていいか。お前等を狙ってる相手に心当たりはあるのか?」
「……ありません」
何だ今の間は。心当たりあるだろ、隠したい理由でもあんのか?
「あっそう。じゃ、お願いってのを聞かせて貰いましょうか」
さぁどうぞと促すと、システィスは真剣な顔で唇を開いた。
「ヘイタさんの力を見込んでのお願いです。どうか私達を、"シルヴィア共和国まで"護衛して頂けませんか」
「……」
「お金なら払います……大金は持ってないですけど、何とかしますのでッ」
「私からもお願い……力を貸してッ」
二人の少女が同時に、誠心誠意頭を下げ頼み込んでくる。そんな彼女達に、俺は迷う事なくこう言った。
「悪いが断る」
「なっ!?」
「ど、どうしてですか? お金の問題でしょうか!?」
「違う、俺達の問題だ」
きっぱり理由を伝え断りを入れると、二人は意気消沈したように項垂れる。
心苦しいし可哀想だが、こればっかりはしょうがない。諦めてもらうしかないだろう。
と、俺の即決に困惑したセレナが戸惑った様子で尋ねくる。
「私達もシルヴィア共和国に行く予定なのに、どうして断っちゃうんですか? 目的地が同じなら、一緒に向かうついでに護衛してあげてもいいんじゃないですか?」
最もな意見に、俺は小声で答える。
「俺もこいつ等と目的地が一緒って聞いた時はそりゃあ驚いたさ。だがな、迷う必要はこれっぽっちも無かった」
「どうしてですか……?」
「……情けねぇ話しだが、正直に言うと今の俺には余裕が無いんだ。お前の事で手一杯っつーか、他に注意を割きたくない。こいつ等を狙っている奴等がどれだけ雑魚で大して脅威でなくとも、相手をしたくない。せめて、セレナの体調が万全になるまでは、俺はお前のことだけを考えていたいんだ」
「……平太さん」
本当に、あの出来事は衝撃的だった。
たった一度の不注意、一瞬の不意を突かれただけで、俺は大切な者を失う所だったんだ……。
セレナが女神で、不死身の力を有していたから無事だったものの。
もしセレナが人間で、あの一撃で死んでしまっていたら、俺はきっと、一生後悔する事だっただろう。一生自分を赦さないでいただろう。
同じ轍は踏まない、踏みたくない。
だからシスティス達のお願いに、首を縦に振る訳にはいかないんだ。
物語のヒーローみたいに、困ってる者全てを助けるなんて出来ないし、するつもりもない。
自分にとって、本当に大切な者だけをこの手で守る。
「システィスさん、護衛の件、受けます」
「えっ? いいんですか……?」
「おいセレナ、何勝手に」
「平太さん、あなたなら出来ます。今までだって、沢山の人達を救ってきたんですから」
「だからなぁ、無理だって言ってんじゃねぇか」
無茶苦茶言うんじゃねぇよ。俺はお前のことを思って……。
「気負わないで下さい。私は平気です、こんなのすぐに良くなりますよぉ。平太さんなら大丈夫です。私は……何だかんだ文句を言いつつも手を差し伸べるのが、平太さんだと思うんです。そんなあなたを、見ていたいんです」
……くっそ、こいつ。
女にそこまで言われて、引き下がったら男じゃねーだろーが。
「あーもう分かったよ! 受ける、受けます、受けりゃいいんだろ!」
半ばヤケ糞気味で了承すると、システィスとカタリナはパァーと表情を明るくさせ、
「ありがとうございます!」
「やるじゃんアンタッ!」
はぁ、やっぱりセレナは面倒を引っ張ってきやがる。勘弁してくれよ……。




