追われる少女達
今日泊まれる宿を探す。
しかし、何処に行っても部屋は満室で断られてしまう。
まさか一部屋も空いてないなんて予想外だった。
観光する前に部屋を予約しておけばよかったと今頃になって悔やむ。
旅館の従業員に話を詳しく聞いたところ、アトラティウスは人気な観光都市でもあるから旅人も多いんだそうだ。
知らんかったわぁ。
どうしても泊まりたいんなら、表通りに建っている宿は全滅なので裏通りを探してみるといいとのアドバイスを頂いた。
景色も施設も表通りの宿と比べると劣ってしまうが、ただ泊まるだけなら別段問題も無いらしい。
治安も悪くないし、裏通りを歩いたからってチンピラに絡まれる事もないそうだ。
気付けば陽は落ち暗くなっているし、あっちこっちと宿を探し回っていたから疲れたし、この際泊まれるならどこでも構わないと、裏通りを散策。
やっとこさ泊まれる宿を探し当てたと安堵していたその時、変な奴等に遭遇した。
「お願い、そこを空けてッ!」
「お願いします!」
後方から切羽詰まった女性の声が聞こえ、「んだよ」と舌打ちを鳴らしながら振り向く。
二人の少女が何かから逃げているような焦燥な表情を浮かべて、こちらに走ってきていた。
……おいおい、誰か知らんが疲れてる時によ、明らかに面倒臭そうな問題持ち込んでくんなよな。
それにしても、こういう時はいつもセレナが危険を察知して予め俺に伝えて、助けて欲しいとお願いしてくるのだが、今回は言われなかったな。
やっぱこいつ、まだ調子が戻ってないのか。
「ねぇ、スルーしていい?」
「助けてあげられるなら、助けてあげて欲しいです」
「……はぁ」
ですよね、そうですよね。
女神おまえが手を差し伸べない筈がないもんな。まぁ、実際助けてるのは俺なんだけど。
「ちょっと退いてよ! アンタ達も巻き込まれるわよ!?」
「お願いします、道を空けて下さいッ!!」
「うるせぇ喚くな」
ギャーギャーうるさい少女達の首根っこを掴んで後ろに放り投げる。
「うげ」「きゃ」と短い悲鳴を上げていたが、尻餅をついぐらいだろう、気にする必要もない。
んな事より、まずはこっちだ。
「「……邪魔する者は殺す」」
黒い外套に身を包んだ敵が二人。
壁を走るという重力を無視した忍者みたいにすばしっこい動きをする奴等が、殺気を隠さず無言でこちらに向かってくる。
少女達に巻き込まれただけの、無関係な俺達すらも殺す勢いで。
(でも、逆に良かったかもしれない……)
だってほら。ぶっ殺しても罪悪感が湧かないし、心が痛まないじゃん?
「ぐ……ぁッ!?」
「まず一人」
敵の一人に強襲。
接近し、頭を鷲掴み、壁に叩きつけ、無力化する。
簡単だ、実に容易だ。
「よくもッ」
「へぇー暗殺者の身なりして、仲間がやられたからって動揺してんの? 半人前だな」
「う、うるさげぼらッ!!」
喋り切る前に、横っ腹に鉄拳をめり込ませる。
あっいっけね。あばら骨何本かイッたわ。
敵は血と吐瀉物を撒き散らしながら、前のめりに倒れる。
「弱ぇな……」
邪神つよいやつと殺り合ったせいか、コイツ等が酷く雑魚に思えてくる。
一切張り合いがねぇ。まぁ、張り合ってどうすんだって話しなんだけどな。
でもなんだろう、この消化不良というか、物足りない感じは。
謎だ。




