↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
65/121

邪神




『咄嗟の行動としては見事だが、女神を見捨てる勇者というのも案外薄情なのだな』

「うるせぇぞアホんだら。あいつは前に、自分は不死身だって言ってたんだよ。だからまず、邪魔なテメェをぶっ殺すことが最優先事項なんだ」

『ほう、知っていたのか。それにしても、神の秘密を容易く人間に教えるとは、現在の女神は口が軽いのだな』


 セレナが軽いのは口だけじゃねーわ。頭ん中もスッカスカだぞ。


「……」


 いつでも仕掛けられるように、俺は腰を落とし低く構え、足裏に力を溜め込む。


『もう戦うのか? 私の存在が気にならないのか?』

「あ? 逆に聞くが、今から俺にぶっ殺される奴の事なんて気にかける必要があるのか?」


 間髪入れずにそう返すと、敵は『なるほど』と呟き、


『威勢よく吠えるな。魔王を殺った自信というやつか』

「うるせぇ死ねよ」


 おもいっきり地面を蹴りつける。

 ドパンッ!! と空気が裂かれた重低音が鳴り響いた時には既に、俺は敵に肉薄し正拳を振り翳していた。


 しかし奴は俺の奇襲に反応し、同時に拳を突き出してくる。


 俺と敵の拳が重なり合った刹那、ゴォオオオオオオオオッ!! と爆音が轟き、衝撃の余波で地面が割れ、砕かれ、散り飛ばされてゆく。


 遠くに離れろとポチに言っておいて良かったと安心する。

 あの場に留まっていたらきっと巻き込まれていた筈だ。


『異世界流の挨拶はこれなのか? 随分ユニークなのだな』

「口開くんじゃねぇよ、テメェの声は汚ねぇんだからな」

『失礼な奴だ。言っておくが私に口は無いぞ』


……そう言われればそうだな。じゃあどっから声出してんだよ。


 数度会話を交わした後、俺達は激闘に発展した。


――ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!


 と、お互い拳や蹴りを連続で繰り出す。力と速さは拮抗していて、数秒の内に百発以上打ち合ったものの、どちらともクリーンヒットを与えられなかった。


 逆に、俺達が戦っている周囲の方が被害が出ている。何故なら俺と敵が攻防を繰り返す度に衝撃波が生じ、地形を破壊してしまうからだ。


(場所を変えなきゃダメだな)


 右拳にエネルギーを充填する。

 敵に肉薄し、アッパーで羅喉を撃ち放った。


『ヌッ』


 衝撃波によって敵を上空へと吹っ飛ばす事に成功。

 地面を蹴り上げ俺もすぐさま追随し、戦いの舞台を雲の上にへと移動させた。


『空で戦いたかったのか?』

「周りに気を遣いたくなかっただけだ。空ここなら遠慮せず戦れるからな」

『ほう……では今まで本気を出していなかったと?』

「20パーも出してねぇわボケ」

『舐められたものだな。いいだろう……その気にさせてやる』


 そう言った瞬間敵の力が増大し、爆発した。


「――ッ!?」


 気づいた時には既に敵が俺の懐まで入り込んでおり、攻撃を仕掛けようとしている。

 腕をクロスして防御するが、拳戟が想像以上に強く、重く、簡単に吹き飛ばされてしまった。


『まだ終わらんぞ』

「――こん、にゃろッ」


 疾い。

 後ろに回り込んできて、怒涛のラッシュを放ってくる。

 反撃の態勢を整えられていない俺は、無理せず防御に専念した。


 躱し、いなし、受け止める。

 神経を研ぎ澄まし、息つく間もない連撃を防ぐ。


 しかし、防げられてはいるが反撃する手立てが無かった。

 敵には体力という概念がないのか、一時も手を止めず撃ち続けてくるのだ。


 普通攻撃する時には少しでもタメが生まれるのだが、こいつにはソレがない。だから凄まじく速い攻撃を、常に一定の速度で放ってきやがる。

 お陰で守り一辺倒で、集中力がごっそりと減らされる。


 正直アガムとの戦闘で防御術を身に付けていなかったら、とっくに何発か貰っていた事だろう。


『どうした、守ってばかりではつまらんぞ。さっさと本気を出したらどうだ』

「調子に乗るんじゃねぇ!!」


 あーイライラする。

 もう止めだ、俺は守ってるより攻める方が性に合ってんだよ。舐められっぱなしも趣味じゃねぇしな。


「ぶっ」

『ムッ!?』

「――だぁるぁあああああッ!!!」


 ワザと攻撃を貰い、敵の動きを強引に止める。

 ほんの一瞬生まれた隙を見逃さないべく、俺は体に走る痛みを我慢し全力で敵を殴り飛ばした。



「今度はこっちの番だ」

『果たしてどうかな?』

「何ッ?」

闇永あんえい

「――ッ!?」


 攻防が逆転した内に、やられた分を倍にして殴り倒してやろうとしたら、突然視界が暗闇に包まれた。


 何だコレ、どうなってんだ……全然見えねぇぞ!?


『闇の世界はどうだ?』

「ごふっ」

『気分はどうだ、心地良いか』


 何も見えなくなって狼狽している中、敵が容赦無く襲撃してくる。


「が……ぐっ……ぎ」


 殴られては飛ばされ、殴られては飛ばされ。それが何度も何度も繰り返されていく。

 視界が塞がれているので気配を察知しようとするが、いかんせん奴の移動速度が速すぎて捉えきれない。


 そして、


『沈め』

「げ――はっ……!!」


 背中を強く叩きつけられ、俺は冗談で済まされない速度で空中から地面に打ち落とされた。


「……あー……痛ってぇ……」


 小隕石が落ちたレベルの陥没の中心で大の字で倒れている俺は、クルリと態勢を入れ替え仰向けになる。

 ようやく回復してきた両眼で、青い空を眺めながら呟いた。


……ここまでボコボコにやられたのはいつ以来だ?

 中学以来だったか?

……そういや、あの人にしょっちゅうボコボコにされてたっけか。


 恥ずかしい思い出が頭ん中で蘇っていると、空からヘドロのような濁声が聞こえてくる。


『ほう、見えるようになったのか。並みの人間ならば生涯光を失われるのだがな。どうやら魔力耐性が高いようだ』

「…………」

『それにしても、ここまでして壊れんとは……人間の癖に頑丈な奴だ』

「…………」


『そういえば挨拶がまだだったな。


私は"邪神アルトゥスノヴァ"。


アステリアで生まれた、邪の神。


異世界人ヒラサカヘイタよ、貴様が女神から倒すよう頼まれた敵の……本丸だよ』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。