キャットファイト
アガムが倒れ、チムバァが俺の勝利宣言を叫ぶと同時に背後から、
「「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」」
とダークエルフ達による歓喜の絶叫が聞こえてきた。反対にエルフ達は信じられない……といった顔をしている。
俺が手を挙げて皆に応えてやると、
「「ヘ・イ・タ! ヘ・イ・タ!」」
コールの嵐が鳴り止まなかった。
轟くような歓声を背中に受ける俺は、ふぅーと深い息を吐き出す。
いやーマジで強かった。
アガムの防御技を盗むのには結構時間かかったし、何度も投げられちまったよ。おかけであちこち痛ぇし汚れまくったわ。
まぁ、勝ったからいいけどね。
最後に繰り出した俺の攻撃は、虚実によるものだった。
相手に本当の攻撃だと思わせ誘い込み、裏をかいて倒す。
ざっくり説明すると、フェイントのような技だ。多少違うけどね。
でも技が決まって安心した。内心、初見で躱されるんじゃねぇかってヒヤヒヤしてたんだよな。
「やったねヘイタ! 凄いじゃん!」
「うおっ!?」
突然リリスが喜びながら腕に抱きついてきた。大きくて張りがある素晴らしいおっぱいが当たって嬉しいんだが、お前出て来て大丈夫なのかよ……。
今は魔王じゃなくてダークエルフの姿だけど、誰もお前の事知らないんだからヤバいんじゃないの?
……別にいっか、俺が気にする事じゃないし、バレたらこいつのせいだし、何より役得だし!
「ちょっ平太さん、何だらし無く鼻の下伸ばしてるんですか!? その女の人は誰なんですか!?」
「あれ、セレナじゃん。お前いたんだな」
いきなり怒鳴られ、誰かと思ったらセレナだった。
そういえば俺、セレナのこと捜してたんだよな……途中から幻闘祭とおっぱいしか考えてなかったからすっかり忘れてたよ。うん、見つかって良かった。
「ちょっと~アタシのヘイタに気安く話しかけないでくれるかなぁ、マジでウザインデスケド~」
リリスが嫌味ったらしい言い方でセレナを挑発する。
え? 俺いつの間にお前のモノになったの? ねぇちょっと、リリスさん?
「はぃいいいいいッ!? こ、これは一体どういう事ですか平太さん!? 詳しく説明して下さい!!」
「それが俺にもよく分からん」
「分からんって……まさか平太さん、手を出してしまったんですか? そのえっちぃ体に籠絡されちゃったんですか!?」
「いや別に、手を出しも出されても無いん――」
「そうよ、ヘイタの童貞はアタシが奪っちゃった!」
ちょ、何言っちゃってんのあんた。俺の体はまだ真っ白だっつうの。
「どどど童貞を捨ててしまったんですか!? どこの誰とも知らない女に! どうしようもない変態なのは分かってますけど、今日ばかりは見損ないましたよッ!!」
顔を真っ赤に染め、ぷくーと頬を膨らませたセレナが叱ってくる。
俺は未だに腕を絡めているリリスをじと目で睨め付けると小声で、
「おい、お前が変な事言うから誤解されちゃったじゃねぇか。どういうつもりなんだよ」
「あの爆乳女って女神でしょ? 魔王としてアンタを殺せなかった腹いせに、あの女神との関係を拗らせてやろうかなって」
しょーもねぇ嫌がらせだな……性格悪すぎんぞ。
「元々悪魔って性悪だし、その悪魔の中でもアタシは魔王よ? 性格なんて悪いに決まってじゃない。まぁそれだけじゃ無くて、単にアタシが女神を気に入らないだけってのもあるんだけどね」
それただの私怨じゃん。
ため息を吐いていると、リリスはしたり顔で、
「悪いようにはしないわ。だからアンタはここで大人しく黙ってなさい」
「お前、何するつもりなんだよ……」
問いかけに答えず、リリスは俺から離れスタスタと歩み、激おこなセレナの眼前に躍り出る。
「ヘイタが欲しいなら力づくで取り戻してみなさいよ」
「な、何で私がそんな事を――きゃっ!?」
何故か知らんが、突然リリスが飛びかかりセレナを押し倒し馬乗りになる。
マウントポジションを確保したまま、恐可愛い魔王が女神の頬にバチンッ! と強烈なビンタをかました。
「痛っ!? こ、この……よくもやりましたね!!」
見たこと無いほどの怒りを表すセレナは、リリスの両肩を掴むと体を回転させ上下ポジションを入れ替える。
そして、暴力という言葉が一番似合わない筈のセレナが、ビンタをやり返した。それもおもいっきりで。
「痛ったーーいッ! やったわね!? このウシ乳が!!」
「先にやったのはそっちの方ですぅ!! このクソビッチィ!!」
互いに罵り合う二人の女。
リリスが強引にセレナを投げて立ち上がると、二人はおっかない顔でギロリと睨み合う。
その後、どちらともなく飛び出し、投げ合い殴り合いと壮絶なキャットファイトが始まってしまった。
「お、おいやめろって……」
見てられなくて止めようとしたが、俺の口から出た声音は情け無い程に震え掠れている。
女のガチ喧嘩に遭遇した事が皆無な俺は、想像を絶する恐怖に身が竦み上手く声を出さないでいたのだ。
そしてセレナの怒りは収まらないどころか、猛烈に燃え上がってゆく。
「もう怒りました! こっちが必死に捜していたのに本人はこんなクソビッチとイチャコライチャコラとぉぉお!!」
「はん、アンタはヘイタに捨てられたのよ! 昔の女になったのよ! とっととお家に帰んなさい!」
「それはこっちの台詞ですぅ! もう頭にきました! 呑気な平太さんにも、いきなり襲ってきたあなたにもっ! いくら私が女神だからって怒る時は怒るんですよぉぉおおおッ!!」
桃色の髪が逆巻く。
怒髪天状態のセレナは、ずっと溜まっていた鬱憤を晴らすかのように罵詈雑言を吐き散らしながらリリスに襲いかかった。
「ふぇぇええええええええん!! セレナが恐いよぉおおおおおっ!!」
……普段すっとぼけてるセレナからクソビッチなんて汚い言葉が出てくるなんて!
女神から鬼神と化したセレナに震えが止まらない俺。
ダメだあれ……マジでキレてる。
しかも、ヤバいのは喧嘩している二人だけじゃない。
再び鬼神セレナと魔王リリスによる激しい攻防が繰り広げられると、あまりの展開に唖然としていたエルフとダークエルフの女性達も場の雰囲気に引き込まれ絶叫を上げた。
エルフ女性陣
「セレナいけーー! ダークエルフなんてぶっ飛ばしちゃえー!」
「巨乳だけど、私達はアンタの味方よ!!」
「いてこましたれぇぇえーー!!」
ダークエルフ女性陣
「どこの誰か分かんないけど頑張れーー!」
「貧乳の代表なんかぶっ殺しなさい!!」
「そうよそうよ! 貧乳なんかに負けんじゃないわよ!!」
エルフ女性陣
「貧乳の何が悪いのよ! 狩人の私達は乳が無い方がいいじゃないの!」
「そうよそうよ、大きいおっぱいなんて邪魔なだけじゃない! 肩も凝るしね!!」
「駄肉よ駄肉っ!」
「そもそも私達は貧乳じゃなくて美乳なんだから!!」
ダークエルフ女性陣
「はんっ 無い者の嫉妬や僻みじゃない! どれだけ吠えたって痛くも痒くもないわ!」
「アンタ達可哀想ね、そんな貧相なお胸じゃ男も寄って来ないでしょ」
「貧乳はステータス? そんな古臭い時代はとっくに終わってんのよっ!!」
俺とエルフ、ダークエルフ両男性陣
「「………………………………………………………」」ガクガクブルブル




