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平太の簡単男クッキング!




「疲れたー足痛いーおんぶー」

「…………はぁ」


 振り返り、よろよろと歩くリリを半眼で見るとため息を吐き出す。

 最初は救いの女神だと思っていたが、これが残念な事にかなりの足手まといだった。普段森で暮らしているエルフの癖にリリは全然体力が無いし、どこかのポンコツ女神みたいにすぐに泣き言を口にする。マジで勘弁してほしい。


「だってアタシ、いつもは飛んでんだもん」

「ん? 何か言った?」

「何でもござーませーん」


 セレナと逸れ、リリと出会いエルフの里を目指してから大分時間が経過した。正確じゃないが3時間以上は歩いているだろう。

 元々森の中は薄暗いけど、日が沈んだのか、さらに闇が深まっている気がした。真っ暗になる前に、ここら辺で野営の準備をした方がいいかもな。


「暗くなってきたし、今日のとこはここで野宿しようぜ」

「ヒヒン」

「はーい」


 少し空けた場所で提案すると、ポチとリリが各々肯定の意を示した。確認が取れたので、テキパキと野営の準備を始めていく。石を重ね薪に火を起こして。


「そういえば、リリって料理は出来るのか?」

「できないでーす!」

「あっはい」


 念の為聞いてみたが、案の定作れないようだ。

 つーかこいつ、見るからに一人で旅をしているようだが、料理を作れないなんてヤバくないか? いつも何食ってんだよ。

……仕方ねぇ、ここは俺が一肌脱ぐしかなさそうだな。どれ、久しぶりに平坂流簡単飯を作ってみるか。


「ほわぁちゃあああああああああああっ!!!」


 俺はフライパンに麺っぽいもの、細かく刻んだ野菜や肉をぶっこみ、ソースを足しながらひたすらに炒める。5分程炒めたら完成だ。


「平坂流焼きそばもどき!」

「おぉーー!!」


 そう。男子高校生が作る料理なんて大抵は炒め物だ。本当ならチャーハンとか作りたかったが、悲しい事に米を持っていないので、焼きそばをチョイスした。この世界に来てから未だに米を見ていない。いつかまた白飯を食べてみたいものだ。


 俺の料理に、リリがパチパチと手を叩いている。そんな彼女へと、焼きそばを盛りつけた皿を渡した。初めて見たのか食い方が分からないようなので、手本を見せる為先に俺が焼きそばを食す。この世界は箸が存在しなから、スパゲッティの時みたいにフォークでグルグル巻いて口に運んだ。


「うん、いける」


 悪くない味だった。というか意外と美味いかも。

 ソースは本来の焼きそばに似ている風味を使用したのだが、それほど味は変わっていない。

 うん……これなら全然食えるわ。だが果たして、この日本っぽい味の料理がリリに受け入れられるかどうか。少し不安になりながらも、彼女へと促す。するとリリは、俺の食べ方を真似て一口パクリ。


「…………」

「……どうだ?」


 反応が無い。やはり口に合わなかったか?


「うんまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいいいっ!!!」

「お、おう……そりゃ良かった」


 絶叫する彼女に、内心でホッとする。リリはバクバクと腹を空かした獣の如く凄い勢いで焼きそばを平らげていく。


「何これめっちゃ美味いんですけど!? もぐもぐ……食べた事無い味なんだけどもぐもぐ……手が止まらないわ!」


 幸せそうに顔を綻ばせるリリ。そう言って貰えるのは嬉しいけど、食うか喋るかどっちかにしろよ、汚ねぇだろ。

 それにしてもこんなに喜んでもらえるなんて驚いたな。流石日本食だぜ。

……あれ、焼きそばって日本発祥だったけか? まぁいいか、そういう事にしよう。


「おかわり!!」

「へいへい、まだあるから焦んなって」


 食べてはおかわり食べてはおかわりと、気づけばフライパンの中身は空で、あっという間に食べ尽くしてしまった。あれ、俺あんま食ってないんだけど……。


「ふぅ……食べたわーもう一歩も動けないよー、後は任せた」

「おい、片付けぐらい手伝えよ」

「無理でーす」

「……」


 食い終わってすぐに寝転がるリリ。後片付けを頼むが、ふりふりと手を振って一蹴されてしまった。まるで豚のようにゴロゴロしている彼女の姿を見て、俺は駄目な奥さん持つ夫の気持ちを何となく感じてしまう。結婚する相手には気を付けよう……うん。


 一人黙々と片付け終えた俺は、ポチにご飯を持っていく。ご飯って言っても、ニンジンもどきだけどな。


「ほれ、ご飯だぞポチ」

「ブル」


 ニンジンもどきを与えると、ポチは俺の手から引っ手繰るように奪い「遅せーんだよ、早くしろよな」という目でくっちゃくっちゃと音を立てて咀嚼する。


……このクソ馬、マジでナメてやがる。そろそろ誰がご主人様なのか分からせる時がきたようだな。俺はニンジンもどきをポチの前でプランプランさせながら、下卑た笑みを浮かべる。


「ほれほれーご飯が欲しいかーポチィィィ。頭を下げてお願いしたらやらん事もないぞー、ん? ん?」


 はっはっは! どうだ思い知ったかポチよ、悔しかろう!

 心の中で高笑いする俺が取った手段とは、餌付けだった。このナイスな作戦で、生意気なポチを従順にしてや


「ガブ」

「待って、ねえ待って」

「くちゃくちゃ……ぺっ」

「……」

「ブロロロロロッ」←馬鹿にした顔。



………………ぷち。



「上等だゴラアァアアアアア!!」


 このクソ馬、俺の手ごとニンジンもどきを咥えて吐き出しやがった! もう我慢ならねぇ、今日という今日は馬刺しにして食ってやる!!!



「覚悟しやがれクソ馬ぁぁぁぁぁああああああああああ!!!」

「ブルァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」




 俺とポチの、戦争が勃発した。



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