フツメンとぺったんこ
今日、七夕だったんだ……
「はっはっは! お前さんがアリーシャが言っていたヘイタって奴か! クラインとジドをぶっ飛ばしたんだって? やるじゃねえかこの野郎!」
「いやーそれほどでも。あと、あんまし強く頭を撫でないでくれると助かるなぁ」
「しかも魔王までぶっ殺したってか、すげーなおい! うちのお姫さんと国を助けて貰ったんだ、心から礼を言うぜ!」
「分かったから早くその手をどけろよ~ぶっ殺すぞこの野郎~」
顔は笑っているが、内心では軽くブチ切れている。
痛えんだよこんちくしょう、ハゲるわ! 頭撫でてるようだけど、ナデナデじゃなくてガシガシだから。めっちゃ痛えから!
「ふ~ん、この冴えない面したガキが魔王をね~、信じがたいわ」
「あん? 何だペチャパイ、お子ちゃまに言われる筋合いはねぇぞ。育ってから出直して来な」
「テメエは言ってはならない禁句を口にした。表出な、泣かして謝らせてやるよ」
「上等だクソチビ、ヌッ殺してやるよ」
ガルルッと牙を向けて言い争っていると、セレナとガタイの良いおっさんが仲裁に入ってくる。おい止めるなセレナよ、俺はこのクソチビにキツイお仕置きをしてやらねばならんのだ。
「どーどー、落ち着いて下さい平太さん。平太さんはブサイクではありませんよ。フツメンです、フツメン」
「ウィルも止めとけ。お姫さんの前だぞ」
危うく戦争になるところだったが、セレナに鎮められた事により出かかった拳を収める。
そう、俺はフツメンの筈だ。イケメンでもないが決してブサイクではない。
多分……恐らく……だよね?
「俺はガストン、四騎士のまとめ役をやっている。改めて礼を言うぜヘイタ。ほらウィル、お前もちゃんと言っておけ」
「うっさいな、分かってるよ。……ウィルよ、エリザ様を助けて貰ったし、一応礼を言うわ……ありがとう」
「それほど大した事やってないけどな。受け取っておくよ」
二人と握手を交わす。
ガタイが良くて声が大きいおっさんがガストンで、小っちゃくて生意気な女がウィル。何でも俺がフルボッコにしたイケメン二人と同じで、四騎士っていう重要な役職なんだと。帝国の中では、この二人もめちゃくちゃ強い方なんだそうだ。
「久しぶりだねヘイタ、君は相変わらず面白い」
「おおーアリーシャじゃん。何で帝国にいるんだ?」
声をかけてきたのは、僕っ娘特級冒険者のアリーシャだった。
だけど、ベルン王国お控えの特級冒険者が、何故こんな場所にいるのだろうか?
俺の疑問に、彼女は苦笑いを浮かべて、
「リオンにね、帝国に向かったヘイタが心配だから、様子を見てきて欲しいって頼まれたんだ」
「へぇ、あの王女様がそんな事を。なんか似合わないな」
「とまあ、表向きな理由はそんな感じなんだけど、本人曰く『困っているようでしたらどんどん助けなさい。一つでも多く貸しを作らせるのよ』って。これは言わない約束なんだけどね」
「ああそう」
話しを聞いているうちに、やっぱりなと納得する。あの腹黒王女が考えそーな事だよ。あの王女マジで怖いんだけど。出来るならあまり関わりたくねーな。
若干引いていると、アリーシャは続けて、
「そしたらさ、帝国が魔王軍に攻撃されているって話しが飛び込んできてね。見て黙ってる訳にもいかないし、参戦したんだよ」
「へえ、アリーシャも戦ってたのか」
確かヘルシー姉さんと山賊団とか、他の冒険者も駆け付けたんだよな。何故か知らんけど、山のヌシや魔物まで味方についたらしいし。
……オールスター感半端ねえな。
「アリーシャ殿には本当に感謝している。ガストンとウィルが助かったのも、貴女のお陰だ。リオンにもよろしく伝えておいてくれ」
「女帝に感謝されるなんて光栄に極まりです。リオンはよく、貴女の事を話していますよ」
「はは、あいつの口から出た言葉だ。どんな内容か怖くて聞けんな」
軍服姿のエリザさんが、アリーシャと握手を交わす。苦笑しているエリザさんの背後では、メイド服を纏っているアルメリアさんがひっそりと微笑んでいた。
「ヘイタの様子も確認出来たし、僕はベルン王国に帰るとするよ」
「いいのか? 俺に貸しを作らなくても。アリーシャのおっぱいを触らしてくれるなら、貸し一つでもいいぜ」
「あはは、遠慮しておくよ」
冗談で言ったんだが、アリーシャはガチで引いている。
ちっ……ワンチャンイケると思ったのに。
……いや、これも冗談だからね? 本当だよ、決して本音じゃないよ。
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