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先生と三人の弟子




「え、冒険者になるのに金が必要なのか?」

「はい、登録料が金貨一枚になります」

「……詰んだ」

「ジ・エンドですぅ」



 何人かの町民に道を尋ね、目的地のギルドにようやく辿り着いた俺とセレナ。


 屈強そうな男達やビキニアーマーを着ているアマゾネスみたいな女冒険者の中を掻い潜り、受付けに並ぶ。

 順番がきて、うさ耳が生えた綺麗なお姉さんに冒険者になりたいと告げたところ、登録するのに金が必要だと言われてしまった。


 登録料が必要なのはちゃんと理由があるんだそうだ。まず、冒険者に登録すると冒険者証とやらを貰えて、それが通行手形の役割にもなるらしい。冒険者になれば、自由に入出国が出来るという訳だな。


 それと、俺達みたいな無一文が登録して魔物にホイホイ殺されてしまったので、それを防ぐ為の対策なんだとか。今では冒険者になる条件が、実力があり、金銭的にも余裕がある者だそうだ。


 どこに行っても金、金、金。

 生き辛い世の中なのは地球も異世界も変わりないんだな。全く、嫌になっちまうぜ。



「……はぁ」

「……」



 ここにきて、遂に俺の心もポッキリ折れてしまった。セレナも生気が失われてしまったような死んだ顔をしている。


 ああ、お家に帰りたいよぉ、熱々のカップラーメンが食べたいよぉ。



「あのお客様、いつまでもそこに居られるのは他のお客様にご迷惑なのですが」



 異世界に来て一日も経っていないのにホームシックになっている俺と意気消沈しているセレナに、うさ耳受付嬢が無慈悲な声をかけてくる。

 彼女にしてみたら俺達はただの営業妨害だよな。


 でもすいません、動きたくても足に力が入らないんです。心が辛いんです。



「おいおい何だぁ!こんな所に見覚えの無えガキがいると思ったら文無しかよ!」



 何だこいつ、いきなり現れたぞ。こっちは喋る気力すらないんだから、頼むから絡まないでくれ。



「兄ちゃんよぉ、連れの女をこのジャッカル様に寄こすなら、登録料を代わりに払ってやってもいいぜ」

「え!?マジ!?」

「……お、おう」



 彼の申し出に喰いつく。 

 話しかけてくんなよと内心で愚痴っていたが、今ではあなたが神だ。



「おい、また新人に絡んでるぞ」

「あいつ、最近上級に上がったからって調子に乗ってるよな」

「ほっとけ、関わるだけ労力の無駄だ」



 周りにいる冒険者達が小声で彼を貶している。そこで俺は、改めて彼を観察した。


 自分をジャッカルと名乗った人物は、二足歩行の犬獣人。いわゆるワーウルフという種族だった。


 頑強な鎧を身に纏い、中国の青竜刀に似た巨大な剣を背負っている。

 その姿は、歴戦の戦士の風格だった。



「あー!またジャッカル先生が問題起こしてる!それもお酒飲んでるし!」

「先生の後始末をするのはいつも俺らなんですからね」

「本当ですよ、いい加減自覚して下さい」

「ミドリ、アカヤ、アオト……お前らいつの間に」



 おいおい、またぞろぞろと増えたぞ。


 今度は三人の少年少女。赤と青の髪の少年二人に、緑色の髪の少女が一人。

 見事に見た目と名前がマッチングしてんな。悪の怪人でも退治しに行くのか?


 パッと見たところ装備の質がジャッカルと比べて低いので、駆け出しっぽい。

 ジャッカルの事を先生と呼ぶあたり、師弟関係かもしれないな。



「すいません、先生がご迷惑をおかけしてしまって」



 申し訳無さそうにアオトが言ってくる。なんて人間が出来ているんだ、とてもジャッカルの弟子だとは思えない。



「いや、全然問題ない、むしろ素晴らしい話を持ち掛けてくれたんだ」

「え"、それってどういう意味ですか平太さん。まさか、私を売って自分だけ美味しい物にありつこうとか思っていないですよねぇ!?」

「だって、お前役に立たないんだもん」

「直球すぐる!?」



 いや本当に、ここまでセレナが活躍した場面があっただろうか。

 ねえよ、足引っ張りまくりだわ。



「な、なんだ?じゃあそこの嬢ちゃんは俺様にくれんのか?」

「この犬ッころ、女神の私に発情してますぅ!やっちゃって下さい平太さん!」

「「「あ……!!」」」



 セレナの発言に弟子三人がやっべ!みたいな顔をしている。

 ああ、なんかこの後の展開が大体予想出来るな。



「俺様に犬と言いやがったなああ!!!」

「ぎいやああああ!怒っちゃいましたあああ!!」

「先生に『犬』は禁止ワードなんです!」

「言ったら最後、気が済むまで暴れるんですよ!」



 ああもう、このポンコツ女神は面倒事しか起こさなねえのな。



「うがあああああ!!」

「平太さーん助けて下さいぃ!!」



 怒りに身を任せ、ジャッカルが襲いかかってくる。多分酒が回ってる所為なのもあるな。

 仕方ない……彼には悪いが、冷静になるまで少し寝ていて貰おう。



「はいドーン」

「--#$#%&@!!?」

「先生ええええええ!!?」



 俺の弱パンチを受けたジャッカルが吹っ飛び、ギルドの壁に上半身がすっぽり埋まる。弟子達が悲鳴を上げて彼の救出に向かって行った。


 あーあ、やっちまったな。穏便に済ませたかったが、ジャッカルの殺気が結構マジだったのでつい手が出ちまった。



「流石平太さん、冷たい態度を取っておきながら、いざという時は私を守ってくれるんですよね!このこのーツンデレさんなんだからあああああ痛いですアイアンクローはやめてえええ!!」



 ちょっと黙ろうか女神様、お願いだから。



「あのぉ」

「あ、はい」



 セレナに制裁を加えていると、うさ耳受付嬢が恐る恐る声をかけてくる。

 振り返る俺に、彼女は素敵な笑顔で絶望の言葉を告げたのだった。



「壁の修繕費並びに営業妨害として罰金金貨十枚になります」





 ……おっふ。



お読み頂きありがとうございます

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