表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/121

トラウMAX



「いい加減その足を退かしやがれ!」


 腹筋と背筋に力を入れて、勢いよく起き上がる。足が退くと、すぐにその場所から移動する。そして、改めて魔王を見上げた。


「……なんかデカくなってるし」

「ガッハッハッハ! どうじゃカッコイイじゃろ!」


 魔王の姿は、さっきと全く違っていた。


 まず大きい。多分10メートルぐらいはあるんじゃないか?

 それに、何だか物凄く禍々しくなっている。上手く言えないけど、日本妖怪の"がしゃどくろ"って例えれば分かりやすいだろうか。取りあえず、外見はそんな感じだ。


 それと、パワーも前より段違いに上がっている。これが、骨魔王の第2形態ってやつか。


「どうした小僧、儂の真なる姿を目にして恐れをなしたか! 今なら泣き喚いてもいいぞ、漏らしていても内緒にしてやるわい、ガッハッハッハ!」


 体が大きくなると、声もすげーデカくなってうるさい。

 変身して粋がっている骨魔王に、俺は平坦な声音でこう言ってやった。


「お前さぁ、何を勘違いしているのか知らないけど、変身したからって俺に勝てると思ってんのか?」

「……あん?」

「どれだけ強くなったって、俺には届かねぇよ。絶対にな」

「……ほう、言うではないか。では、いっちょ試してやるかの」


 本当の事を告げると、骨魔王は舐められて気に食わなかったのか、怒涛の攻撃を仕掛けてきた。

 自分の体よりも大きい骨の拳が、五月雨の如く降り注いでくる。


 ズドドドドドドッっと轟音が上がり、砂煙が舞い散っていく。

 その嵐の中心にいる俺は、当然無傷だ。


「……何じゃと!?」

「こんなもんかクソジジィ」


 骨魔王が繰り出す拳撃を、俺は全て手の平で受け止めていた。

 遅いし、大した重さじゃない。問題なく躱せるが、俺は敢えて受け止めたのだ。力の差を分からせる為に。


「ぐっ……じゃったら、これならどうじゃ! ホーンデッドストリームッ!!」


 効かないと理解したのか、骨魔王が次なる一手を投じてくる。体がバラバラになり、骨の竜巻となって襲いかかってきた。


 俺は腰を落とし低く構え、絶え間なく降り注いでくる骨を避け、いなし、弾きながら躱していく。攻撃の規模は大きく破壊力があるかのように思われるが、自分のライフスペースを侵食する害のみを払いのければ、どうってことない。


 俺の目は迫り来る骨をしかと捉えている。形も大きさも、把握出来ている。神経を研ぎ澄ませ、一つ一つ対処していく。

 俺の体には、カスリ傷一つ存在しなかった。



「そんなアホな」

「今度はこっちの番だ」

「ほげぇええええ!!」


 元の形に戻った骨魔王の頭蓋骨を叩き割る。しかし、奴には不死能力があって、すぐにまた再生してしまった。


「ガッハッハッハ! そうじゃそうじゃ、幾ら儂の攻撃がお前に効かなくても、お前も儂を殺す事はどんなに足掻いたところで不可能じゃ!!」


「必殺――トラウMAX」


「そこでどうじゃ? 今回は決着が着かなそうじゃし、今日のところは引き分けで許してやらんことも――え? 今なんか言ったかの?」


 地球にもいるんだよなぁ、こういう物理的に倒せない面倒くさい奴。

 体そのものを炎とか水とか光に変えられる反則的な能力者。殴っても殴っても効果が無い敵をどうやって倒すのか。


 答えは一つしかない。


「心を壊す」


 精神的に追い詰め、敵の戦意を喪失させる。俺が編み出したトラウMAXとは、そういう技だ。

 そして俺は、この技で骨魔王をとことん追い詰める――徹底的にだ。


「すまんすまん、聞こえなかったわ。儂の太ましい立派な骨を一本やるから、もう一回だけ言ってくぇぇあぎゃああああああ!!?」


 まず、邪魔な体をぶち壊す。

 頭だけ残った骨魔王へと、殴打の嵐を放った。


「や、やめ、やめんかこらーーーーー!」


 何度も破壊していると、やっと元のサイズに戻った。けどまだまだ終わらない、ここからが本番だ。

 俺はさっきと同じように、頭以外の体を木端微塵にする。



「こ、小僧……お前、何をしようと……」


 ポンッポンッと骨魔王の頭を放りながら遊ぶと、俺は高らかに叫んだ。


「超次元バレーボール、はっじまっるよー!」


 頭を空高くへとトスし、助走をつけて渾身のジャンプサーブを撃ち放った。


「ほげぇええええ!?」

「はい、レシーブ!」


 先回りし、拳を重ねてボール(頭)を受け止める。跳ね上がった頭を、手の形を三角形にして上へとトス。地を蹴り、跳ぶ。

 ぐんっと弓のように体を逸らして、


「アターーーークッ!!」

「ほげぇえええええええええええええええええええええ!!」


 おもいっきり腕を振り、頭をはたく。

 俺のアタックを受けた骨魔王は、地面に突き刺さりすっぽりと埋まった。


 歩いて骨魔王の下へ向かい、埋まっている頭を引っこ抜いた。


「おい小僧! 人の頭をぽんぽん叩きおって何のつもりじゃ。少しばかり強いからってイイ気になりおって、ふざけるで――」

「はーい皆集まってー、超次元サッカー始めるよー!」

「おいこら! 何をすびゃあああああああ!!?」



 激怒する骨魔王を無視し、俺は頭を強く蹴り飛ばした。そして、一人で11人分のポジションをこなしていく。


「へーいパスパース!」

「ここは通さないぞ!」

「出たーッバナナロングパスだー!」

「ラスト、お前に託した!行っけぇええええええ!!」

「スーパーミラクルウルトラスーパーシュートッ!!!」



 皆(俺一人だけだけど)の想いを繋げ、ダイナミックオーバーヘッドキックを放った俺のボールは、見事敵ゴール(岩)に突き刺さった。


「ふぅ、いい試合だったぜ」


 額に浮かんだ青春の汗を手の甲で拭き取る。とても良い試合をして満足していると、


「こらーー儂の頭はサッカーボールじゃないぞぉ!!」

「うるさい」

「ほげ!?」


 岩から這い出てきて、声を荒あげる骨魔王をもう一度殴って粉砕する。


「こら、人の話しはちゃんと聞かん」


 殴る。


「お、おい今儂マジで怒ってるか」


 殴る。


「頼むか」


 殴る。


「ご、ごめんなさい……許してくだ」


 殴る。


「やめてぇえええええええ!!!」



 泣き喚いて必死に謝罪してくる魔王へと、俺は"無"の表情で語り掛ける。


「お前が自分から成仏するまで、俺はお前の頭を殴り続ける。何度も何度も何度もっ。泣いたって謝ったって止めない。絶対にだ」


 脅すように言うと、骨魔王は大粒の涙を滝のように流しながら。


「うぅ……分かったわい、成仏する。するからもう殴るのは止めるのじゃ。めっちゃ恐いんじゃ」

「ああ、そう」

「くそったれ、覚えとけよこんちくしょう……次は負けんからなぁ!!!」


 最後にそう叫ぶと、骨魔王の体がさらさらと砂のように崩れ落ちてゆく。魂みたいな、仄かな光が揺ら揺らと空に昇り消えていった。


……どうやら成仏したようだな。


 はぁ……とため息を吐き、うーんと背筋を伸ばすと、俺は空に向かってこう叫んだのだった。





「二度と出てくんなよ、ばっきゃろーーーーーー!!!」

お読み頂きありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ