四騎士
短めです
「アルメリアッ!!」
「はいっ!!」
エリザがアルメリアの名を叫び、視線を交錯させ合図を送る。そんな丸腰の彼女へと、兵士が猛然と斬りかかった。
「覚悟!」
「悪いが、こんな所で死んでやる覚悟は持ち合わせていない」
兵士が繰り出す剣撃を容易く回避したエリザは、兵士の腕を掴むと背負い投げをして地に叩きつける。昏倒する兵士から剣を奪うと、背後から追撃してきた兵士の腕を振り向き様に斬り落とした。
アルメリアもエリザ同様、倒した敵の兵士から剣を奪い迎撃している。
「はっ、この程度で私を殺れると思っていたのか」
「舐められたものですね」
瞬く間に五人もの兵士を亡き者にしたエリザとアルメリアの二人に、他の兵士が恐怖を抱いて足が止まる中。ピエールは狼狽えるどころか、一度たりとも笑みを崩していない。
その様子を不気味に感じたエリザは、「はん」と鼻を鳴らすとピエールに挑発する。
「私兵が役に立っていないのに、余裕じゃないか」
「ふっ……貴女が魔力を使わずして、ここまでやれるとは思いませんでした。が、想定の範囲内ですよ。私は心配性なのでね、予め準備をしているのです」
「……どういう意味だ」
ピエールの意味深な発言に、エリザは怪訝な表情で疑問を浮かべる。
エリザとアルメリアが兵士を圧倒しているというのに、ピエールは全く動揺を見せない。という事は、まだ奴の手札に優秀な駒がいると考えられる。それも、エリザとアルメリアよりも実力が勝る者。
(こいつに着くような奴で、私を倒せる者など――まさかッ!?)
エリザの脳内に、平太の顔がよぎった。
平太は闘技場での勝負でエリザに勝利している。もし、その情報をピエールが知り得たのならば、平太と接触を図っていてもおかしくはない。
取引か何かで、もし平太がピエールに付き敵対するのならば、エリザが生き延びれる可能性は絶望に近いだろう。
(いや、だが……)
エリザは浮かんできた自分の推測を否定する。いや、否定したかった。
愛する妹を救いだし、自分の全力を受け止めてくれた少年。そんな少年と、本気の殺し合いなどしたくなかった。
と、エリザが思考を巡らす中。
二人の人間が、この場に現れた。
「……お前達だったか」
「まさか、そんな……」
新たに現れた人物を見て、エリザとアルメリアは目を見開いて驚愕する。
まさかこの二人がピエールに寝返るとは、露ほども思わなかった。
「よう王様。見て分かると思うが俺達はこのおっさんに付いたわ」
「……残念ですが」
勝気な顔つきに、太陽を彷彿させる髪の男の名はクライン。眼鏡を掛けていて、知的な雰囲気を醸し出す、空色の長髪を靡かせる男の名はジド。
帝国の剣であり、盾であり、象徴である、
帝国最強を誇る部隊、『四騎士』。
帝国に心臓を捧げた四騎士の内の二人が、主君であるエリザと相対していた。
「……」
本来味方である存在のクラインとジドが、己に剣を向ける。その意味が分からない程愚かではないが、一つだけ解せない事があった。
「何故裏切った。私はこれでも、お前達を信頼していたのだがな」
彼女の純粋な疑問に、クラインが躊躇なく答える。
「俺は戦いたいんだよ、王様。戦って戦って、そして勝つ。この手で強敵を踏み潰し、ギリギリの戦いで命を迸らせ、勝利の余韻を感じたいんだ。んでよ、戦うには戦場が必要不可欠ってもんだ。戦場を手っ取り早く作るのには、戦争を起こすのが一番早え。だけどよ王様、アンタが王になってから戦争は一度も起きてねえ。それじゃ困るんだよ、俺が。だからアンタには、ここで消えて貰う事にした」
クラインが理由を述べた後、次いでジドが静かに口を開く。
「言う事は出来ないですが、私にも目的がありましてね。目的を達成するには、貴女が邪魔なのですよ」
「……そうか」
二人の理由を聞いたエリザはそう呟くと、真紅の眼光で四騎士を睨めつける。
「お前達が出て来れば私を倒せると……浅はかな考えだな。この結界内にいる限り、お前達だって魔力を使えないんだぞ」
「貴女こそ勘違いしている」
「……何だと?」
「アンタが俺達より強えのは、圧倒的な魔力量の差だ。純粋な剣技なら、日々研鑽を積んでいる俺達が、毎日椅子に座って紙と睨めっこしているアンタに負ける道理は無えって事だよ」
クラインの強気な発言に、エリザは剣を彼に向けると、
「そう思うのならやってみればいい。胸を貸してやるぞクライン」
「言われなくてもやってやるよ。ジド、お前はアルメリアをやれ。王様は俺の獲物だ」
「了解した。しくじるなよ」
「アルメリア、私がクラインを倒すまでジドを抑えていてくれ」
「承知しました」
両者臨戦態勢。剣を構え、敵を見据える。
敵の出方を窺い、刹那の静寂が場を包む中。
ピエールの一言で、戦いの幕が上がる。
「クライン、ジド……やれ」
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