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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第2章 遊園地とお嬢様
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第一話 遊園地へ行こう

お久しぶりです。なまっている……(笑)

前にも話した気はするが、俺に物心がついたときには両親は他界していた。

 当時幼かった俺にとって、誰かがなくなった悲しみなんてどこにもなかった。だから、なぜこの人たちは泣いているのだろう。お父さんとお母さんの写真が何で飾られているの? と、この程度の考えしかできなかったわけで……

 16になった今、さすがに喜怒哀楽の必要性は分かっている。

 だから、普通にかかわりを持っていた人が突然死を迎えることには、思考回路は働かないし、どんな感情をこめて言葉を紡ぎ出せばいいのか、なんとなくわかる気がする。

 それを失うのが、どれだけ悲しいのかも。

 ここで、同じような風景を見ているということは、所謂デジャヴという現象か。二度と入りたくないと心の中で懇願していたのに、二回も鈴川の昏睡状態を見届けなければならないのが、現実として受け止められない。

 数時間前、俺と一緒に帰っていた鈴川は突然意識を失った。

 幸い、周りが商店街だったから多くの人の助けで何とか一命は取り留めることができた。

 それはよかった。だが、脳の検査をすると意外な結果が出た。

 「鈴川さんの脳の神経伝達物質や、脳に送り込まれる信号をキャッチする基幹が以前検査した時よりも、よくなっていました」

 「それは本当ですか?」

 笹野川大学付属病院にて。

 駆けつけてきた理事長と外内さんを含めて、鈴川の主治医が病室に集まっていた。

 検査が終わるまで、俺たちはそわそわとした状態だった。

 俺が鈴川の体の状態を考慮しないで、油断していたこと。

 俺は必死に理事長に謝った。

 俺がいながらも、鈴川の身が安全でなかった。

 そんな自分が、不甲斐なくて、恥ずかしかった。






 四月の末。GWという大型連休を控えている中、俺らは部室であることを話し合っていた。

 鈴川が入院してから一週間がたち、部員のみんなも落ち着きは取り戻せていた。

 そんな中、みんなで退院した鈴川の気分転換で遊園地へ行こうという提案が出た。

 八王子に新しいテーマパークができたらしい。客入りが激しいとは思うけれど、俺達でも楽しめそうなアトラクションはいっぱいある。

 「ということで、ゴールデンウィーク初日は『八王子フューチャーランド』で決まりな?」

 ホワイトボードに連ねられた文字が、どうにも読みにくい。

 相変わらず俊哉は字が汚い。

 「GW初日って結構混まない?」

 スナック菓子を頬張りながら、春富はその日の混雑を心配していた。

 「まあ、帰省ラッシュのピークだし。八王子だからたぶん大丈夫でしょ? ネズミーランドよりはいないと思うよ」

 「八王子だから大丈夫って、どんな根拠だよ」

 「県境だからじゃね?」

 俺の疑問に、大野が反応してくれた。ナイス。

 でも、それは関係なくね?

 「さっき調べたけれど、初日の混雑予想は他と比べてだいぶ低いよ。四月の頭にオープンしたからピークはまだのようだね」

 今度は俊哉の隣にいた賀川が、手際よくパソコンを使って調べていた。

 「当日の天気はどうなの?」

 「晴れ、降水確率0%」

 「うわ、絶好の遊園地日和じゃん」

 「でもちょっと問題があるのよね」

 混雑、天気共に問題がないように見えたが、なぜか賀川が頭を押さえていた。

 お弁当の分量が合わないとか、下らないことじゃないよな?

 「どうしたの? 利華」

 「チケットよ。当日券買うには開園の三時間前から並んでないとダメらしいのよ。前売り券も、買うなら今日か明日じゃないと」

 なるほど、入る以前の問題が生じたのか。

 「三時間前って……5時くらいから並ぶのかよ」

 「初詣の時より並ぶよな」

 隅っこで話を聞いていた佐藤と田中が口をそろえていった。

 確かに、前売り券を買うなら今日がベストだけれど……・

 「ちなみに一枚いくら?」

 「3500円」

 まずまずの値段だな。

 「じゃあ、私の方で一括購入しておくから後でチケット代渡してくれる?」

 「その必要はありません」

 ガラリと、突然部室の窓が開いた。

 「と、外内さん?」

 あなた、一体そこで何を?

 「瀬原さん、細かいことばかり考えていると人生損しますよ。それより、皆様が計画しているテーマパークのチケットはわたくしの方ですでに手配いたしましたので、ご安心を」

 勝手に人の心を読んだと思いきや、今度はメイド服のスカートの中をゴソゴソしはじめ、チケットを人数分取り出した。俊哉が賀川に殴られていたのはあえて無視しよう。

 「あの、お金は……」

 「必要ありません!」

 あ、はい。

 「ということですので、本日は蘭様が退院なさりました。皆様、大変ご迷惑おかけしましたこと、お詫びします。では」

 外内さんがそのまま消えた。

 ってか、ここ三階だぞ?

 全員その場で沈黙してしまった。

 「え、じゃあ外内さんのお言葉に甘えておきましょうか」

 「そうだな、せっかくもらったんだし」

 「だよな」

 「そ、そうね」

 「びっくりした」

 「メイドって実在したのか」

 そういうわけで、GWは鈴川の気分転換で遊園地へ行くことになった。


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