第十四話 新入部員
お花見会は無事終了し、数日たったある日。
「だから、なんであんたがここに入部するっていうのよ!! バスケ部には入らないの!?」
「いいじゃねえか!! 俺がどこの部活に入ろうが、お姉は関係ねえだろ」
おいおい、一体何の騒ぎだよ。
部室に入るなり、口論し合う男女が二人。
よく見れば、賀川の弟だった。
何をしに来たのやら、この一年坊主。
だが、一番意固地になっているのは紛れもなく俊哉のほうだった。
いいからシャトーボクシングしてなくていいから。
「あれ? 浩太君じゃん。何しに来たの?」
空気が読めないのか、または読んでいないのか素っ頓狂な行動をする春富が迷いもなく聞いた。
「あ、春富先輩。お久しぶりです」
「お久」
なんだ? 知り合いなのか?
「で、愛しのお姉さんと何の口げんかかな?」
「い、愛しじゃねえよ!! ただ、お姉の入っている部活がどんなのか見に来ただけです!!」
「ほう、相変わらずお姉さん思いなんだねえ。で、華佳ちゃんは?」
華佳……どうやら、賀川のもう一人の妹らしい。
「あいつはバスケ部に行きました。俺とは違って、推薦で入ったので」
ようは姉を追いかけてきた、超絶シスコン弟なわけか。
賀川もまた面倒な弟を学校に入れたもんだな。
「あんた、一般でも入ったらバスケやるって言ったじゃない!!」
「だから、俺がどの部活に入ろうが勝手だろ!!」
「なあ、弟君よ。君はこの部活に入りたいのか?」
「誰だよこいつ」
先日あったばかりなのに、もう忘れている。
ってか俊哉、馴れ馴れしすぎじゃね?
「あー、それ? それね、利華の彼氏だよ」
「それってなんだよ!? 俺はモノなのか?」
「これがお姉の彼氏?」
あ、完全に忘れている。
馴れ馴れしく組まれた肩は振りほどかず、訝しげな表情で俊哉をみる。
賀川は、はぁとため息をついた。
彼氏と弟をいっぺんに相手するなんて、大変だな。
「この前のお花見で、最初に歌を歌った人よ」
「あー、いたな。そういえば」
「忘れていたんかよ!! なぁ? 利華のスリーサイズを教えてくれたらこの部活に入ってやってもいいぞ?」
「誰が教えるか!! あと、勝手にお姉の名前で呼ぶな!! 変態!!」
ずいぶんと言葉のとげでグサグサ刺されても、賀川弟に縋る俊哉。
別に、スリーサイズなんて聞かなくたっていいだろうに。
「あの、みなさん何しているんですか?」
「お、鈴川か。いや、賀川の弟がうちの部活に入りたいらしいんだけれど、賀川本人がどうしてもだめって言っているんだけれど……」
「それは大変ですね……」
ああ、やっぱり調子狂うよな。
「ねえ利華。別に入れてやってもいいんじゃない? 今年はうちに部員が入らなそうだし」
春富の言うとおり、部活動勧誘会でほとんどの生徒がほかの部活へ流入している。うちの部活は部員が入る見込みは無し。
もともと、何をやるのか分からない部活なわけだし。
「でもねえ……一人だよ? この子一人はさすがに」
「じゃあ私が入るわ」
突然、後ろから聞きなれぬ声がした。
振り返れば、賀川と似ている少女が立っていた。
「え……? 利華が……ふ、二人?」
俊哉がパニクっている。殺した方がいいのかな?
「ちょっと、華佳!? あんたまでなんでここにいるのよ!?」
「ここの部活動に興味があるから」
「バスケは? あんた推薦組でしょ? 浩太と違って」
最後のは余計だったんじゃないか? 弟が後ろで項垂れているぞ。
「膝痛いからバスケは出来ないって言ってきたから大丈夫」
おいおい、それで通用しちゃったのかよ。
どうみても、姉、弟と正反対の性格だな。
「はぁ、もうあんたたち」
賀川は堪忍しきれず、諦めがついたのか肩の力を抜いて言った。
「じゃあ、この二人の入部は決定ね」
春富はうれしそうに、二人の肩をつかんだ。
「よろしくな、弟さん」
「ふん」
ははは。
先は随分、長くなりそうだ。
「まさか、二人も入ってくるなんてな」
「そうですね。私も少しびっくりしました」
帰り道、いつものように俺は鈴川と一緒に帰る。
日が長くなったから、週に三回ほど送り迎えをすることになっているから、こうして学校で起きたことを他愛のない会話で済ませている。
「この前のお花見、楽しかったですよね」
「ああ、まさかお前の親父さんがあんな豪華なところを貸し切ってくれるなんて、思ってもいなかったよ」
新宿御苑はもういけないな。あんなところ俺の懐じゃ無理だな。
「うちのお父さん。結構大胆な人ですからね」
「ははは。大胆……ね」
「瀬原君は私のお父さんと会ったことあるんですか?」
「ああ、頻繁ではないけれど、会ったことは何回かあるよ」
ついこの前会ったばかりだけれど。
「そういえばお父さん、昔の話をしてくれたことがあるんですよね」
「本当か? で、何か思い出したか?」
「それが……」
「そうか……」
まあ、無理もない。リハビリも少しずつだけれどこなしているから焦る必要はない。
「その時、瀬原君の話も……」
「そうか、俺の話も」
ドサッ。
え……
「鈴川? 鈴川!? おい!!」
なんで……なんでこんなことに。
これで第二部の第一章は終わりです。
これを境に、更新は一度止めます。
執筆はしますが、投稿は早くて1月の終わり。週に二回から三回のペースで更新する予定です。




