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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第4章 クリスマスとお嬢様
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第九.五話 あけまして

昨日かいたこの原稿がまさかの寝落ちで全て吹っ飛んだパターンww

夜あとがきを更新します

 一月一日。元旦。新年あけまして。

 新年が明け、また新しい年が幕を開ける。 

 干支も変わり、それにちなんだ年賀状が誰かしらからおくられてくる。

 俺も新年が明けるまでの年末は、とりあえず溜まりに溜まっていたやり事などをこなして、夜には恒例の歌番組を見て年を越そうかと思っていたが、今年はそうにもいかなそうであった。

 訳は、病院にいたからである。

 なんでかって?そりゃ、入院したからに決まっている。

 これ以上線繋ぎに訳を伸ばしていくと限がないから以下を略させてもらうと、クリスマスの夜に気を失い、そのまま入院の訳で。

 無理した自分も悪いけれどさすがに年明けまで入院させることはない。

 とりあえず今日までの六日間、俺はずっと病院で年末を過ごしていた。

 気分は懲役六日の囚人だ。

 医者から家でいてはまた外に出かねないと押されてしまったためどうにも抜け出せなき感じだった。

 俊哉たちが見舞いに来てくれるのはありがたいけれど再度入院した俺を嘲笑うのはさすがに腹が立った。

 鈴川も見舞いに来てくれて、清々しい顔で話せたものはいいものの、ここ最近彼女が変わったようでなんか違和感が感じられる。

 クラスのやつらも来てくれたのはいいものの、騒音が病院中響き渡り怒られたのはさすがに俺は迷惑だった。

 てか、なんで俺も怒られたのか今更だが分からない。

 そういうことで現在、荷物をまとめているところである。

 着替えに見舞い品などバックにしきりに詰めていく。

 これでやっと家に帰れると思うと何かと嬉しい。

 あの量が少なくて味気のない病院食ともおさらばできる。

 このまま家に帰ってやりたいことをやりたかったけれど、先ほど俊哉から初詣の誘いがあったので予定をつぶされてしまった。

 「さてと、行くか」

 荷物を肩に提げ、病室に丁寧に一例をしてから出ていった。

 年始なのか、または入院している人が少ないのかわからないけれど廊下を歩いても人の気配がしない。

 確かに当番医の人しか着ていないわけだからそういう訳にもなるんだけれどさすがに病院に俺一人っていう事は・・・・・

 さすがにねえよな。

 階段で一回まで下りてフロントで部屋番号の札を渡す。

 受付の人に一言言われて俺は病院を出ると新鮮な空気が俺の肺の中を駆け巡った。 

 冷たくて、とげとげとしたものだけれどここからもう一度生活できるとなれば文句はない。

 あとは荷物を置いて集合場所までのコンビニまで行けば済む話だ。

 携帯を開いて時刻を確認する。

 お昼ご飯を済ませてからの方が早いのか、どこか適当なところで買うのか迷うところだったけれどここは敢えてコンビニで買う方に決定した。

 財布の中身がどれくらいあるのか脳内で計算しながら俺は病院通りを歩く。

 そういえば元旦なんだな。となんとなく思う。

 ここから家まで一体どれだけの人が初詣にいったのだろうか。

 人とすれ違うたびに俺はそう思う。

 都内の神社だからたぶん人が多いだろう。

 毎年何百人、何千人と来ているのだからかなりの人だかりと俊哉から聞いている。

 あまり人混みは好きではない方だけれどこうやって人が多いところに行けば何かとトラブルがある。

 たとえば・・・・・・・

 「ひったくりよ!!」

 そうそう、ひったくりひったくり・・・・・・・

 って、はぁ!?

 突然の叫びに後ろを振り向くと前方にニット帽にサングラスをかけている人物がバッグを抱えてこっちに走ってくる。

 そしてその向こうには手を挙げて悲鳴を上げている女性。

 ああ、完全に俺の方へ向かってきているよ。

 ここはあっさりスルーするのか、それか食い止めるか。

 けれど相手は凶器を持っているかもしれない。強盗犯なのかもしれない。

 普通なら余りの恐怖に俺は足をすくむだろう。けれど相手はたかがひったくり、ざれどひったくり。

 「へっ、道を開けてくれてサンキュウな」

 男が俺の横を通り過ぎようとする。

 この瞬間なら周りの人は当然俺のことを完全な社会からの除け者扱いとなるだろう。

 しかし俺は男の足に自分の足を引っかけた。

 条件反射じゃない。本能的だ。

 もちろんひったくりの男は派手に顔面からすっころぶ。

 正直やっちまったなと思った。だってこんなに派手に転ぶなんて・・・・・

 「う・・・・う」 

 痛みを堪えているのか、唸り声で何とか凌いでいる。

 俺はバッグを下げたほうの手で頭を掻きむしる。

 さて、これからどうしたものか。

 もちろんお決まり(?)の展開である。

 「てめぇ!!何しやがる!!」

 公の、というほどでもないがそれなりに人がいる道端で突然男が大声を上げる。

 「何って・・・足をかけただけですよ」

 平然と答えている俺とは対に男はかなり顔が紅潮している。

 何をそこまでかっかしなくてもいいんだけれど・・・・・・・

 これだから強盗犯はとため息を吐いてしまう。

 「お前・・・・・ガキだからって調子に乗るんじゃねえぞ!!」

 そう言って男はポケットからサバイバルナイフを取出し俺に突き付けてくる。

 「これで殺されたくなければさっさとどけ」

 どけも何もお前が俺と逆方向に走っていけば済むことなんだけれど・・・・・

 「俺を殺して罪を問われる前に銃刀法違反で刑務所行だけど」

 どうでもいいことだけれど。

 「その減らず口も今すぐなくしてやるよ」

 にやりと笑って男は俺に向かって走り出す。

 もちろん、聴衆からは悲鳴に嵐。

 俺はその行動に対して動揺もしない。

 俺に二メートル弱に迫ったところで男はナイフをさらに突きつける。

 ビュッと俺の顔面に向かってきたそのナイフは空を切った。

 俺は紙一重のところで避けた。

 もちろん紙一重って言ってもタイミングを見計らってだけれど。

 また転んだ男はナイフを落としてその場に蹲った。

 数分後、駆けつけてきた警備員により引ったくり犯は拘束。

 一件落着・・・・・と言いたいところだけれど・・・・・・・・・

 「君凄い!!どうやったらあんなふうに避けられるの?」

 「どこであんな体術ならったんだ!?」

 「高校生なのにすごいな!!」

 など俺に詰め寄ってきた人が俺に称賛の声を浴びせる。

 正直息苦しい。

 ひったくられてバッグを取り返してもらった人もどうやら俺と同い年のようだ。

 でも手まで握らなくても・・・・・・

 しかも・・・・息苦しいし。

 また、熱が・・・・・・・

 苦し紛れにも俺は輪の中から無事生還して、病み上がりながらもダッシュで目的地の神社まで行った。

 






 確かに元旦なのか人はかなりいた。

 入口どころかそこまでのとおりまでも初詣初詣初詣の人でいっぱいだ。

 振袖を着ている人も少なくなくかなりの人数が通っている。

 俺は集合場所である狛犬のところまで苦もありながら通っていく。

 さすがに歩いている人たちは俺と違う方向に歩いているから波に押し寄せられているから正直歩きにくい。

 狛犬までの距離が長い・・・・・・

 荷物が邪魔なため、人とぶつかるたびに変な視線を向けられる。

 やっぱり家においてくればよかったな。こんなもの持ってくる必要性もないし。

 ひったくり犯が俺の目の前に現れなきゃこんなことにならなかったけれどな。

 ああ、クリスマスの日に体育館まで走りに行った時と同じくらいの汗かいているよ。

 これじゃあ狛犬につく前に倒れるな。

 もちろん行き倒れだ。

 ・・・・・・誰か拾ってくれないのかよ。

 汗だくだくのまま俺は目的地にようやくついた。

 ここまでの道のりが実に長かったことか・・・・・・

 というか誰も居ないのは何故だよ。

 ここ狛犬だよな?そうだよな?

 なんで誰も居ねえんだよおおおおおおおおおおおおおおお!!

 『狛犬の中心で仲間を叫ぶ』

 近日公開!!

 じゃねえ!!

 なんで一人で乗り突っ込みしているんだよ。しかも新年早々に。

 でも狛犬にいないのは明らか俺に対しての当てつけなのか?

 だとしたら俺は世界中の人々を告訴してやる。

 「やっぱりここか」

 「ほら、瀬原君の事だから反対側の方にいたでしょ?」

 「じゃあ、利華、私にサーティーワンをおごって頂戴ね」

 虚しく頭を抱えている俺の元に七人の男女が寄ってきた。

 見覚えのあるその面々は俺が所属させられたの青春乙だ。

 ちなみに先ほどの会話は俊哉、賀川、鈴川の順だ。

 それに俺がここにいるかいないかをサーティーワンのアイスで賭けていたのかよ。

 俺って案外安いものなんだな。

 「それじゃ、メンバーもやっとそろったから行きましょうか」

 先頭を切って鈴川が陣を切る。

 俺と俊哉は最後尾を歩き出す。

 そういえばさっきから妙な視線が・・・・・・

 「さっきから妙な視線感じるだけど」

 「ああ、あいつらの振袖だろ。どうみてもあれは誰の目も引くって」

 そういえば・・・・・あの三人振袖来ていたんか。気づかなかった。

 鈴川は黒を基調とした振袖。帯は紫っぽい色をしたものをつけている。

 賀川は髪の毛とあった振袖を羽織っている。しかも律儀の髪飾りまでしているしすごい奴だな。

 春富は白に赤の細いラインが入って長い髪の毛もしっかりと束ねていた。

 まあ、これだけの美女が三人いればそりゃあ周りの目も引くわけだ。

 けれど賀川の彼氏である俊哉にとってはさすがに目の話すことができない事であると思うんだけれど。

 「いいのかよ。彼女がじろじろ見られても」

 「いいのいいの。こうやって自分の彼女を見せられるのも俺はいいことだから」

 展示品じゃねえんから彼女は。

 「それでもあぶねえんじゃねえのか?」

 「何がだよ」

 「だってほら、欲情して手とか出しそうなやつもいないわけじゃないじゃん」

 「そうなった時はお前に助けを求める」

 「案外他人事のように言うんだな」

 確かにそうだけれどさ・・・・・・

 「なんかなぁ」

 「なんだよ。お前も鈴川とられるのがやだなのか?」

 「とられるって最初から俺の物みたいに言うなよ」

 「最初からお前の物みたいじゃねえのかよ」

 予約したゲームを取りに来たやつみたいに自信ありげに言うな。

 そんなことまずないだろ。高嶺のお嬢様なんだし。

 「あれ?蓮司じゃん」

 振り向くとそこには兄の隆司に・・・・・・

 「椿さん?」

 兄さんの婚約者の涼川椿さん。

 すずかわの名字を聞いたときになんか変な違和感を思ったけれど多分俺の思い違いだろう。

 にしてもこんなところに珍しいお二人がいることで。

 「そりゃ俺たちも初詣位来るよ」

 「蓮司君も蘭ちゃん達と来ているの?」

 「はい、まあ、鈴川だけじゃないですけれど部活のやつらで・・・・・・」 

 って、あれ?

 なんか変だぞ。

 確か俺は椿さんと二回目のご対面のはず。

 一回目にあった時は鈴川の話なんて出し来なかった。

 でも蘭て・・・確かに鈴川の名前だよな。こんな偶然・・・・・・

 「瀬原君、早くしないと・・・・椿姉さん?」

 「姉さん!?」

 「あら、蘭ちゃん。こんにちわ」

 いやいやこんにちわじゃないですって。

 このふたりまさかの知り合い?

 「知り合いも何もこの二人は従姉妹だよ」

 従姉妹?従姉妹ってあれだよね。親の兄弟とかの・・・・・

 じゃあ、涼川って・・・・・・・・

 「ホントなのか?」

 「私がウソついてどうするのよ」

 ですよね。

 それにしても・・・・・・・・

 「あれ?言ってなかったけ?」

 はい、ばっちり言ってないです。

 まさかと思っていたのが・・・・・・

 「まあ、知っていなくても死にはしないんだからいいじゃねえか。それより初詣楽しむぞ!!」

 なんでこんなにテンション高いんだよ。うちの兄貴。

 はぁ、新年早々からいろいろと大変だな。

 「ほら、行くわよ」

 そう言って俺は鈴川に引っ張られながら境内へと走っていった。

 



 「途中まで送るよ」

 帰り道、俺がかけた言葉。

 まだ日は暮れない時間であるけれど兄さんたちは買い物に行っちまったし俊哉たちもどこかに行くと言ったから残された俺と鈴川はとぼとぼと帰り道を歩いていた。

 「別にそこまでだからいいのよ。送りなんて」

 「いいから送るぞ」

 「意地っ張りね」

 お前もだろ。と俺は心の中で呟く。

 にしてもこれ以降会話がない。

 さすがに気まずい気がする。

 なんとか会話を生み出しつなげないと。

 「そ、そういえばさ、鈴川はなにをお参りしたんだ」

 「瀬原君が私のセクシーポーズに悩殺されますように。瀬原君が私のスカートの中を見てくれますように、瀬原君が・・・・・」

 「分かった!!聞いた俺が悪かった!!」

 どれもこれも悪質な事しか願ってねえよな?

 「もっと現実的な事考えろよ」

 「じゃあ、瀬原君がいつか死にますように?」

 「現実味がありすぎだろ!?」

 ってか新年の願いがホント悪質だなこいつ。

 「そういう瀬原君は何を願ったのよ」

 「とりあえず成績がもう少し上がりますようにと、バイトがうまくいきますようにとか」

 「現実味のないお願いだね」

 「お前にいわれたくないよ!!」

 ってか全部現実的なことだろ!!

 「そんな現実的でない突っ込みをしている暇があったら私を安全に自宅まで送りなさいよ」

 「お前さっきから現実的じゃない事しか言ってないか?」

 「空耳じゃないの?」

 可愛くねえ!!

 なんてことを二人でしているうちに鈴川邸に到着。

 したはいいものの、大きな門扉の前に誰かが立ち尽くしている。

 誰なんだあれ?男のようだけれど。

 「なあ、知っているか?」 

 「・・・・・・さあ?」

 なんだよ。知っていそうな顔しやがって。

 けれど・・・・顔や体型も俺たちに近い人だよな。

 あ、こっち向いた。

 するとこっち向かって走り出してきた。

 え?何々?

 ここからナイフを突き出してくるなんてさっき起きたことがまた起きるのか?

 なんて思ったら違かった。

 「蘭!!会いたかったよ!!」

 「・・・・・」

 ただ呆然と立ち尽くす鈴川。

 もちろん俺もだ。

 誰なんだこいつ。

 そしてこの瞬間から、俺の二月の戦いは幕を開けたのだった。


 ~第四章 クリスマスとお嬢様 完~

ええ、瀬原君はチート並ですって?気のせいだ。幻聴だ。幻覚だ!!

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