第九話 メリークリスマス。そして・・・・・
実際のところこれでこの章は終わりです。
あとは二話くらい短編を入れる予定です。
12月25日晴天、瀬原蓮司、自宅のベッドで茫然なう。
と某SNSサイトで呟いたらなんとフォロワーからのRT数がグングン伸びていくことがあった。
なんだ、人が呆然としているところをそんなに凝視していたい人がいるのか。
まあリア充爆発しろだの、恋人がいないクリスマスなんてただの休日と言っている人が多数。
確かにクリスマスの日、特に夜となれば街中リア充リア充リア充でいるやつらがウジャウジャいるからボッチの人としては当然街に出づらい日でもある。
今年はクラスで開催&エトセトラをまじえたクリスマスパーティーがあるため、彼氏彼女がいるやつは多分参加すると思うけれどさすがの大衆の面前でイチャラブをしていたならば俺は即座にロケットランチャーで体育館を最終戦争の状態にするだろう。
本来なら悪友である俊哉も参加する予定だけれど、何かと文化祭で勢いの告白でOKされ、本人にいわく大事な女性がいるとのことでそんな行動は行えない。
けれど俺もそんな場合じゃないという事は多くの人が今ここで理解をしているはずだ。
聖夜だの聖誕祭だの本来ならキリストの誕生日を祝うものがなぜ恋人といちゃつく日になるのか俺には全く理解得られない今日、というか今年のクリスマスはぼっちである。
いや、街中でリア充どもにあくどい空気を送るんじゃないですよ。
がちの方でぼっちです。
貧血だの過労で学校で倒れ、1日の入院を経て自宅での1週間療養。
学校も幸い冬休みに突入するところだったのでどうにかなったわけだけれど肝心のクリスマス会に参加できない。
いや、別に女子からプレゼントを貰えないと言って他の男子に僻むなどそんなはしたない行動はとらない。
むしろ俺は渡す側であるんだけれども。
帰省してきた兄さんに頼んでデパート内にあるアクセサリー店に行ってもらったからあとは渡すだけだ。
という事で現在の時刻、9:30 晴天なり。
自室のベッドでぼけーっとしていてもただ時間が過ぎていくだけ。
兄さんは彼女の・・・・椿さんと朝から買い物に出かけているため俺は1人である。
朝はなんとか朝食は椿さんの作ってくれたおかゆで腹を満たし少し寝たら喉が渇いたのだけれどこんな寒い日に水道水など飲める度胸なんて俺にはあるわけがない。
度胸もくそもないけれど。
いつも飲んでいるコーヒー牛乳も温めればどうにか体を温められるんだけれど、もう終わってしまったため、水道水なのである。
電子レンジで水道水を温めろだと。やれるものならやってみろ。飲めば味がなく虚しい感じで終わってしまうだけだ。
今頃、早い人はもう学校に着て準備はしているだろう。
『青春乙』の皆は多分俺以外のメンバーはそろっているはず。
そうなればできるとすれば7人で道具の持ち出し。
休み初日は何処の部活もやっていないから日直の先生から鍵を借りることができればいいだろう。
しかしあの面子で大丈夫なのか?
男子は頼りあると言っても・・・・・・・せいぜい佐藤位だな。
田中や大野はまあまあかもしれないけれど俊哉は俺の中では流石に期待の域には入れたくない人物だ。
多分賀川もずいぶんと手を焼いている事だろう。
俊哉の事だからドジは踏むだろうし・・・・・
考えれば考えるだけで胃が凭れそうだ。
実際のところ、全員集合は午後の一時だから時間的には十分間に合うだろ。
他にも頼りになる奴らはいるわけだし。
俺は・・・・・そうだな。終わる時間を見計らって学校に行こうかな。
一番ベストな方法と言えば、プレゼント交換の時に行けばいいんだけれど・・・・・細かな日程を知らされていないからどうしようもない。
あいつも多分用意位はしているんだろうな。
他の男子どもも・・・・・たとえば4組の昌平とか鈴川に何らかのものは用意してそうな感じだよな。
想像したくないけれど。
このクリスマス会が全校規模であったんならおそらく相当な数のプレゼントが押し寄せてくるも違いない。
とりあえず俊哉にでもメールを送ってみるか。
枕元に置いてある携帯を手に取り、俊哉にメールを送る。
作業中だから返信は遅くなるだろうと思っていたけれどすぐに返事が来た。
【件名:RE本日】
【何もねえけど?今休憩中。まだ手伝いに来てくれている人いないからさすがに大変だ。本来なら7人じゃなくて8人だから1人いないだけでも相当来るんですけど】
その一人が休んでどうもすいませんでしたね。俺も無理強いしてまで行きたいところだけれど安全を考慮したところですよ。
それにしてもそんなに大変な作業なんかよ。
数秒後、再び返信が来た。
【件名:RE RE本日】
【ほんとだよ。また入院して鈴川に看病してもらえ】
馬鹿野郎。んなことあってたまるかよ。
ふと脳裏にこの前の出来事がよぎる。
ああ、思い出したくない事を思い出しちまったよ。
さすがにまた入院したら俺のたまった課題を片づけてくれるなら快く入院するけれど。
【件名:RE RE RE本日】
【ばーか。んな事するわけじゃねえだろ】
ですよね。お前がそんなことをするような性格じゃないっていうことぐらい俺も分かるし。
好きで入院する気なんてまず微塵にも思ってはいないけれど。
「さーて、時間まで寝ているかな」
おそらく兄さんたちも帰ってくるのは昼を過ぎたあたりだろうからそれまで寝ていれば帰って来ているだろう。
まだ日差しがかかっていない時間帯で俺はまた眼を閉じた。
12月25日笹野川学園にて。
青春乙の部員たちは学校の体育館にて本日行われるクリスマスパーティーの準備を行っていた。
鈴川をはじめ、男の部員はクリスマスツリーなどの資材を運びだしに周り、他の人たちは食材などの調達をしに行っている。
「やっぱり蓮司いねえと気が回らないな」
「あいつもあいつでバイトで大変だったみたいだからいいんじゃねえか?」
クリスマスツリーの資材を運びながら大野と俊哉は話をしている。
大きさからして15メートルくらいはあるクリスマスツリーを鈴川は何処からか持参してきたことにより、先ほどトラックで届いたものを体育館に運び入れている。
佐藤も田中も同じように後ろから資材を運び入れてきている。
「あいつ今日来るんかや?」
「来るだろ。どっからどう見ても」
実際、来たとしてもプレゼント交換のあたりだ。
「資材の組み合わせは元から間に合っているとはいえ、料理の方がどうにかしなきゃいけないよな。
シェフがいないんじゃどうしもうないし」
シェフとは紛れもなく蓮司の事。
蓮司がいなければ確かに料理と言えるものができない。
下手をすれば黒く、云わば炭素の塊がずらっと並ぶ羽目になるかもしれない。
正直作り置きでもしたいくらいだったと彼らは多少後悔をしていた。
体育館に資材を運び入れた4人は傷つかないようにそっと置き、大きく伸びをする。
「にしても今年の冬は寒いな」
「今日も8度あたりらしいな」
「そんなこと言ったら田舎の方とかどうなるんだよ。もっと寒いだろ」
確かに東京の方は年々、温かい時期となってきている。しかしその反面、長野県や新潟県と言った地域では寒冷な時期へと進行しつつ事態である。
だから都会ではまだ温かい方なのである。
風が少し吹き付ける中、俊哉は露になっている手を擦り合わせる。
「はぁ~~~~~、寒い寒い寒い」
「せめて暖房も用意しないと後から来る非難がものすげえぞ」
「確かに、先生に許可を得て出しておこうか」
佐藤の意見に田中が同情し俊哉たちはヒーターが閉まっている体育研究室へと入る。
いつもなら先生がいるはずなのに今日はいない。
さすがにこの部屋だと寒いからなのか。理由は分からないけれど壁にはヒーター使用割り当て氷とちょうどいいものがあったので其処に俊哉名義で書いた。
「ちょっとなんで俺なんだよ」
「何となく?」
書いた本人はかわいらしく唇に手を当てて疑問形で質問に答える。さすが美青年と言ったところの演技を見せる田中氏。
ヒーターを体育館裏から取出して、そこについている2つのローラーで軽やかに動かす。
「これ4つあれば十分でしょ」
「そうだな。ここから中央に向かって温風が来ればいいんじゃねえか?」
「じゃあ、こうするか」
それぞれの場所にセットされたヒーターは同時に電源が付き、ゴオオオオオと轟音を鳴らしながらすごい熱気を出している。
「あったけえーーーー」
「あと5分はこうしていたいなー」
そんな風に彼らが暖を取っているところに逆方向の扉が盛大に開いた。
「ほっほー、男子ども。よくそんな風に余裕で暖を取っていられるね。寒い中女子たちが重い荷物を持って帰ってきたからすこしは敬うとか考えられないのかな?」
扉からは頭に雪を乗せて体育館に入ってきた学級委員長の春富の姿だった。
もちろん、口は笑っているが目は笑っていない。
そして春富の後ろに控える数人の女子。
もちろんさっきまでいなかった女子たちがいつの間にか増えている事に気が付いた。
俊哉はこの瞬間を3文字で表すとしたらやはりこれだろう。
【修羅場】
うむ、実に達筆。
しかし習字もうまくない俊哉にとって何の嬉しくもないものである。
当然。人にはみんな不得手得手というものがある。
なんてことはどうだっていい。今は目の前にあるものの始末・・・じゃなくて目の前に怒っていることを収集しなければこの体育館に血の雪を降らすことになる。
そして春富の後ろには俊哉の彼女である賀川利華の姿が・・・・・
いつも笑顔を向けてきてくれている彼女は今は何故か氷のように冷たい顔をしている。
「あ・・・・春富・・・・に利華も。なんだ・・・・買い物から帰ってきたんか・・・・寒かっただろ?・・・・・よ、よかったらこっちであったまれりょ!!」
やべ、噛んだ。
口を押さえながら再度賀川の顔を見る。
その顔はさっきよりも冷たくおそらく氷点下をいっているに違いない。
「あら、どうしてそんなに慌てているの?もっと普通に接すればいいのにおかしい子ね。
それに買い物から帰ってくるってついさっきメールで教えたはずなのに無視するなんてひどい彼氏だわ」
そういえば帰り際になったらメールするってあいつに言ってたな。
これは明らかに俺のミスだ。
しかしこれで謝ればどうにかなる問題なのか・・・・・・・
「じゃあ、俊哉だけ集中治療室で他の人たちは瀬原君が使っていたベッドを仲良く4人で使ってね」
なぜか指をバキバキ鳴らす賀川に春富。
気のせいか後ろの女子たちも苛立っているように見えるんですか気のせいですか?
てなわけで1時間作業の時間は遅れたそうです。
◇
起きたら既に時刻はかなりすぎていて、パーティーは始まっていて終わるまであと1時間だった。
起きたのと同時に携帯を開くと俊哉から30分前にメールが来ていてどうにか全員参加らしい。
それはいいんだけれど料理の方は大丈夫なのか。どうにも心配でしょうがない気がする。
まあ、ワイワイやるだけだからたぶん大丈夫だろう。
あとは俺が時間を見計らって向こうに行けばいいんかな。
と言ってもあと1時間足らずで終わるんだけれどな。
今から俊哉にメールで聞いても間に合うのだろうか。おそらく飯を食いながらでのゲームとかで盛り上がっているはずだから携帯が振動しても気づかないはずだ。
一応送るだけ送ってみるか。
あとは返事を待つだけなんだけれどこのままぼうっとしていても無難な事だ。とりあえず着替えておくか。
クローゼットから服を取りに行こうとベッドを降りようとした瞬間。
急な目眩に襲われた。
目の前が真っ暗になるってこういう事か?いや、違うな。単に目眩がしただけだ。ちょっとすれば治る。
けれど急に立ち上がったのが悪かったのか、座っているか寝ている状態とはさなかに遠い状態に陥られる。
立っているだけでぼうっとする。なんだかそのままいればまだ倒れそうなくらいだ。
持ちこたえるにも壁などに手をつかなきゃ支えきれない。
「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」
落ち着いていた呼吸も今ではずいぶんと粗くなっているのが分かる。
なんだよ。こんな時に限ってよ・・・・・・・・
風邪ひいていちゃ尚更じゃねえか。
適当にパーカーなどを羽織り、下へと下りる。
ダメだ・・・・・足が・・・体が思うように動かない。
口の中から何かが出てきそうな感覚手足はガクガクと震え、腕の骨も足の骨も少し曲げればミシミシと音を立てそうな感覚だった。
握力もそこまで残っていない。ドアノブに手をやるだけで精いっぱいなくらいだった。
リビングに入り、椅子にかかっているコートを手に取る。
そして机の上にあるものに気付く。
立方体の箱にリボンがかけられ、そこには紙切れが添えられていた。
おそらく兄さんからだろう。お金も兄さんの律儀な性格が出てくれなかったおかげで何とか自腹で買う事が出来た。
俺は千鳥足のまま椅子をひき座って紙を開く。
『蓮司へ
とりあえず頼まれたものは買って貰った。店員さんが言っていたんだけれどそのネックレスは満天の星の日に思いの人の顔を浮かべればその人と一生離れずに済むらしいぞ。
あと今まで迷惑かけてきてごめんな。改まった言い方で気持ち悪いと思うが一つ報告したいことがある。兄さん・・・・兄ちゃんは結婚します。相手は分かると思うけれど椿さんだ。
お前にはまた迷惑をかけると思うけれどこれからもよろしくお願いな』
なんだよ。こんな時に限って結婚の報告かよ。
メインがどっちなのかわけわかんねえよ。
けれど、迷惑をかけて来たのも俺も同じだ。散々迷惑をかけたのは間違いなく俺だ。
ただ唯一の家族である俺を何をされても慕ってくれた兄さん。
その兄さんが結婚するのか。
また新しい家族が・・・・・。
にしてもクローバーに満天の星って・・・・・・
話の雰囲気をしては面白いけれど・・・・・
ようは行って来いって意味ですね。分かりましたよ。
今更あいつらに連絡するのもめんどくさいし行ってくるか。
間に合うかどうか分からねえけれど。
俺はふらつく足のまま、部屋の明かりを消して目指す場所へと向かったのだった。
そのころ学校では。
「みんなーー!!盛り上がっているかーーーーー!!」
『おおーーー!!』
ステージ上でマイクを手にした春富の声で他の全員はそれに応える。
クリスマスパーティーは大いに盛り上がっていた。
料理の方も飛び入り参加の料理部の人たちが手伝ってくれたおかげで豪勢とは言えないがなかなかよい料理が中央のテーブルに並べられていた。
「やべっ、これ超美味い」
「ちょっと俊君。口にソースついているわよ」
「おい!!誰か俺にクリスマスプレゼントをくれ!!誰もいいから!!」
「ちょっと佐藤うるさいよ!!」
「大野!!照明落として!!」
ガゴン。と照明が落ちる音がした。
そしてステージにはカラフルは色の明かりが照らされるとそこから何人もの女子たちが制服のようなものを着て踊っていた。
ちなみにセンターは春富で他は1年2組の女性陣であった。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
男性陣。歓喜の声。拍手喝采。
まさに何らかのアイドルのライブみたいであった。
そんな暗闇の中、鈴川蘭は端っこでちょこんと座っていた。
「何?瀬原君のことが気になるの?」
声をかけてきてくれたのは親友の賀川利華。
賀川は両手に持った温かい飲み物を一つ鈴川に渡す。
匂いをかぐと乳酸菌飲料の匂い。おそらくホットカルピスと言ったものだろう。
「いつまでそんな顔しているの?別に彼は死んだって決まったわけじゃないのよ」
「そんなことわかっているけれど・・・・・・」
ちまちまとカルピスに口をつける。
いつもは気前が良くて何を考えているのかわからない彼女であるがこういった局面だと素直な気持ちになってしまうのだ。
いつもは奇策で腹黒な彼女であるが。
「まあ、気長に待ちなさいよ。あんたらしくないわよ」
「確かに瀬原君がいないと私の毎日は楽しくないわ。けれどこの楽しくないっていうのはなんか違う。友達として?違う・・・なんか違うのよ」
「あー、そういうのはね。あんたお嬢様だし多分そういう気持ちわからないけれどそれははね、‘恋‘よ‘恋‘」
「恋・・・・・ね」
体験はしたことがあるものの自分からそう言った感情をあらわにした覚えはない。ほとんど無意識だったというのか。
「とりあえず自分の気持ちに正直になりなさいよ」
「そうね」
そう言って立ち上がろうとした時、入口とされている扉が活気よく開いたのだった。
くそっ!!くそっ!!くそっ!!
肺がつぶれそうだ。手足の骨も筋肉もどこもかしこも破壊されてしまいそうだ。
だめだ・・・・・熱が上がったせいで体が言う事を聞かない。
くそ・・・あとちょっとだっていうのにもう息切れかよ!!
喉が痛い。腹が痛い。頭も・・・・ずきずきと痛んでくる。
早く・・・・早くしないと・・・・
今掴めそうなものがどこか遠くに行っちまう。
夜道だからわからないけれど、おそらくここを曲がればすぐ学校だ。
既に体育館から出されていると思われている灯りもここまで届いている。
ここからなら歩きでも大丈夫だ。
人の声もしない。
ここからは・・・・・・ゆっくりとゆっくりと。
俺は箱が拉げないように大事そうに持つ。
正門があいているということはまだパーティーは続いている。
まだ・・・・・・・・・・間に合う。
急がなくていい・・・・あわてるな俺。慎重に行け、逃げない。どこにもいかない。
正門を潜り抜け、体育館の扉の前に立つ。
生徒たちがまだどんちゃんとやっている。それが耳の奥まで伝わってくる。
誰の声までも分かるけれど認識ができない。
今この状況を理解できていない。
おそらくフリータイムだ。そのあとに・・・・・
知らず知らずして俺は引き戸に手をかけていた。
けれど俺は躊躇った。ここまで来てなんて言えばいいんだ?
ここまで来てなんて鈴川に言えばいいんだよ。
プレゼントを渡して帰ればいいんか?
だめだ・・・・・考えている事と今しようとしていることが分かっていない。
けれど躊躇う暇なんてない。
俺は冷たい空気を思いっきり吸い込んで引き戸を思いっきり引き開けた。
ガラララッと言う音でみんな先生が来たと思ったのだろう。
しかし実際は違かった。
中に入ってきたのは瀬原蓮司であった。
驚いて食べ物を口に入れたままの人や踊っている途中でまるで絵のように止まっている人などみんな俺を見て驚愕の表情をしていた。
俺はそんなことお構いなしに鈴川をさがす。
鈴川は・・・・・・・・
隅っこで賀川と話していたようだ。
未だに千鳥足のまま、俺は鈴川に歩み寄る。
何度もつまずく。何度もつまずき立ち上がる。
他の生徒たちはその光景に言葉を発せられるものはいなかった。
鈴川も驚きの表情を隠せないまま立ち竦んでいた。
俺はやっとのことで鈴川の前まで来る。
「なんで・・・・・なんで来たのよ。寝ていなきゃダメなんでしょ?」
「ああ・・・・・1週間自宅療養なんだけれどよ、体が言うこと聞いてくれなくて」
はぁはぁはぁと粗い息を立てながら俺は一生懸命にしゃべる。
ダメだ。目眩が・・・・・・・ひどくなってる。
「そこまでして私に何の用なの?」
おいおい・・・・人聞きの悪いこと言うな。
せっかく人がプレゼントを渡しに来たっていうのによ。
「蓮司!!男なんだから立てよ!!」
頭上から声が降り注いだ。
いや、スピーカーから発せられたものだろう。それは俊哉の声だった。
「男なんだからさっさと立てよ!!何のためにここに来たんだ!!」
そうだよな・・・・・・俺は何のためにここに来たんだろう。
わからない・・・・けれど分かる。
何をしたいのか。
俺は箱を取出しこういったのだ。
「鈴川メリークリスマス。そして・・・・・・誕生日おめでとう」
最後の言葉に彼女の瞳は潤んだ。
そして満面の笑みでこう答えた。
「ありがとう」
それは間違いなく俺にとって一番輝いた顔を見た瞬間だった。
けれど、俺はそこから脱力したように床に突っ伏したのだった。
鈴川の誕生日については後々説明します。




