シークレットナルシズム
どんなに親しい間柄でも、秘密はあるものだ。長年連れ添った仲睦まじい夫婦でも、兄弟でも、親友、でも。いや、むしろ秘密が無い方がおかしいと思う。だから、ちゃんと分かってるんだ。大丈夫。分かってる。…分かっては、いるけれど。
「…すいません。鈴様。今日のところはお引き取り下さい」
「…そう、ですか。失礼します…」
でもやっぱり、少し悲しいよ。
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学校を休んだしーちゃんを心配して、しーちゃんの家…霧雨神社に行ってみたのだが、追い帰されてしまった。いや、別に追い帰されたというわけではないのだが、捻くれている私にはそう感じてしまったのだ。 霧雨神社の階段を降りながら、思う。
私を迎えてくれたのは、おそらく分家の方だろう。いや、本家と分家の違いなんて分からないからアレだけども。でもほら、ちょっとだけ微妙な空気というか…何というか…。はぐらかすのが下手くそだったから何となく分かったんだ。
"お嬢は…外しゅ…違う。ええと何だっけ、風邪…インフルエンザで…すいません"
外しゅ…何だよ。その先を言えよ。気になるだろ。しかも風邪からインフルにランクアップしてるじゃないか。適当だな。隠すならもっとこう、何て言うか、さぁ。
しかもこっちは、しーちゃんが学校を休む度にお見舞いに来ているベテランだぞ。いや、ベテランとか無いけれども、毎回似たような言葉で追い帰されるんだ。不思議に思わないわけが無いだろうが。これがもし本当ならば、しーちゃんはどんだけ体弱いんだよ。そしてどんだけ治りが早いんだよ。追い帰された次の日にはピンピンしているんだぞ。しーちゃん怖すぎ。
だからまぁ、何かを隠してることなんてバレバレ、だ。何を隠してるのかなんて知らないけれども。
「なんだか、なぁ」
無意識に、ため息。やっぱり、しーちゃんは私にとって親友なわけだからさ。教えてくれたって、いいんじゃあなかろうか。
そりゃあ、私だってある。誰にも話さない秘密くらい。知られたくない秘密くらい。それに、踏み込んではいけない領域くらい、分かっている。…つもりだ。
ああ、なんてナルシズム。自分の秘密は教えたくないのに、相手が何かを隠しているのを不快に感じる、なんて。
「馬鹿みたい」
本当にね。
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錆び付いたブランコ、薄汚れた滑り台。家に帰るのも億劫で、私は公園のベンチに腰を下ろした。時刻は四時。まだまだ日差しは強い。携帯を開いて、閉じて、開いて。意味もない動作をした後、目を閉じた。
浮かんでは消える、思考達。深く考えがちな私にとって、煩わしいと感じる時もあるけれども、時間がたっぷりある時は心地良い。思考の海に沈む…とか良く言うよね。まぁ、私の場合、そんな格好良くないからアレだけども。
さて。考えるのは、今日のことだ。衝撃的な転校生がやってきたことや、そいつが、何だかモヤモヤの原因になっているということ。しーちゃんが何かを隠していること。ちょっとだけ自信があった小テストでしくじってしまったこと。
ああ、疲れたなぁ。
何だかいろいろなことがどうでも良くなってきてしまいそうだ。全てを投げ出してしまえたらどんなに楽だろう。しがらみから脱出して、自由になってしまおうか。
…無理ですよね、そんなこと。まあ、どっちにしろ、私は逃げられるほど強いわけじゃあないし、捨てるわけにもいかないから、さ。
「まぁ、いいか」
魔法の言葉で、片付けよう。
夕日で赤く染まり出した公園で、私は立ち上がった。




