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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season15 数字は嘘をつかない、嘘つきは数字を使う  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season15 数字は嘘をつかない、嘘つきは数字を使う
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第3章 裏で動く疋田

[アスペクト・デザイン部管理進行課/夜]



フロアに残っているのは、疋田(ひきた)大輝(だいき)ひとりだった。


時計を見ると、すでに午後21時を回っている。


他部署の明かりはほとんど落ち、遠くで清掃員の足音だけが響いていた。


「……やっと静かになったな」


疋(ひきた)田は、モニターの前で軽く肩を回す。



管理進行課。



名前の通り、進行を管理する部署だ。



案件の進捗。外注先とのやりとり。請求のタイミング。



「裏方」と言えば聞こえはいいが、実際には、誰よりも全体を見られる立場でもある。


疋田(ひきた)は、キーボードに指を置いた。


画面に映っているのは、新しく導入された社内システム。


(……よくできてる)


アークシステムズが構築したシステムは、正直、文句のつけようがなかった。



権限管理。ログ管理。操作履歴。



「普通に使ってりゃ、な」


疋田(ひきた)は、ひとり言のように呟(つぶや)く。


画面を切り替える。


別のウィンドウが、何事もなかったかのように開いた。


そこに表示されるのは、経理システムの裏側。


表には出ない。だが、確かに存在する領域。


「……ま、こんなもんか」


疋田(ひきた)は、淡々と作業を進める。


特別な操作はしていない。



正確には――


“特別に見えない操作”をしているだけだ。



数値が、わずかにずれる。

帳票の段が、少しだけ動く。



翌日になれば、



「入力ミスかな」「システムの不具合かも」



そう思われる程度。


(誰も、細かいところまでは見ない)


疋田(ひきた)は、それをよく知っていた。


経理は真面目だ。


真面目だからこそ、



「自分のミスかもしれない」



と考える。


「……優秀すぎるのも、考えものだよな」


彼は、別のファイルを開く。


そこには、坂辻(さかつじ)陸斗(りくと)の名前があった。


「エースデザイナー、か」


疋田(ひきた)は、鼻で小さく笑う。


「目立つ奴は、便利だ」


坂辻(さかつじ)が前に出れば出るほど、裏は見られない。


報酬の数字を確認する。

本来、支払われるべき金額。


実際に、坂辻(さかつじ)に渡っている金額。


「……半分」


残りは、誰にも気づかれないように、別の口座へ。


「知らないって、楽だよな」


疋田(ひきた)は、感情を込めずに呟(つぶや)く。

坂辻(さかつじ)が悪いとは思っていない。

同時に、助けるつもりもない。


(利用できるものは、利用する)


それだけだ。


「……さて」


疋田(ひきた)は、ログ画面を確認し、慎重に操作を終える。


痕跡は、ない。


少なくとも、“普通の見方”をすれば。


椅子から立ち上がり、部屋の明かりを落とす。


そのとき、ふと、思い出したように呟(つぶや)いた。


「……システム会社、入ったんだっけ」


アークシステムズ。


名前は、聞いたことがあった。


「まあ……大丈夫だろ」


疋田(ひきた)は、そう言って、何事もなかったかのようにフロアを後にした。


だが――


その背後で、“すでに“見られ始めている”ことには、まだ気づいていなかった。

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