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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season15 数字は嘘をつかない、嘘つきは数字を使う  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season15 数字は嘘をつかない、嘘つきは数字を使う
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第18章 数字が示す名前

[アークシステムズ・仮設ミーティングルーム]



3日分のデータは、想像以上に“雄弁”だった。



画面に並ぶログ。取引履歴。権限の移動。



凪(なぎ)が、淡々とスクロールしていく。


「……全部、吸い上げ終わりました」


柊(しゅう)は、ゆっくり頷いた。


「整理、できそうか?」


「はい。 むしろ……やりすぎなくらい、です」


凪(なぎ)の声には、感情がなかった。


だが、それが逆に事態の重さを物語っていた。


灯(あかり)は、ログを一つずつ追いながら言った。


「……巧妙ね」


環(たまき)が、静かに聞く。


「どんなふうに……ですか?」


「お金の流れ自体は、一本の線に見えないようにしている」


灯(あかり)は、指で空中に線を描く。


「小さく分けて、複数の名義を経由して、少しずつ動かしている」


「……目立たないように」


凪(なぎ)が続ける。


「しかも、全部“正規の処理”に見える形です」


柊(しゅう)が、ログの一部を指す。


「……名前が、いくつも出てくるな」


そこに並んでいたのは――



デザイン部。

システム部。

経理と関係のある部署。


坂辻(さかつじ)陸斗(りくと)。

八木尾(やぎお)航(わたる)。

胡桃沢(くるみざわ)康平《こうへい》。

富原(みやはら)舞(まい)。



「……なすりつけるつもりだったんですね」


環(たまき)の声が、少しだけ低くなる。


灯(あかり)は、静かに頷いた。


「ええ。 “触れそうな人”の名前を、あらかじめ散らしている」


「一人に集中させないためか……」


柊(しゅう)が呟(つぶや)く。


「疑われたときに、“誰でもあり得る”状態を作るため」


凪(なぎ)は、別の画面を開いた。


「でも」


その声が、わずかに変わる。


「……ここだけは、違いました」


画面に映し出されたのは、振込先口座の情報。


「口座名義は……」


凪(なぎ)が、一度言葉を切る。


「本名でしか、取引できない」


灯(あかり)が、静かに続けた。


「数字は、嘘をつかない。 嘘をつくのは、人だけ」


画面の中央に、一つの名前が浮かび上がる。



――疋田(ひきた)大輝(だいき)。



環(たまき)は、息を呑(の)んだ。


「……やっぱり……」


柊(しゅう)は、しばらくその名前を見つめていた。


「まだ、口には出さない」


静かだが、確かな声。


「だが――もう、逃げ道はない」


凪(なぎ)が、小さく頷く。


「名義を変えなかったのは、 “最後まで自分は見えない”と 思っていたからですね」


「自信」


灯(あかり)が言った。


「それが、この人の最大の弱点」


室内に、しばし沈黙が落ちる。


誰もが、“答え”を理解していた。


だが、まだ誰も、それを外に出さない。


「……次は?」


環(たまき)が、そっと聞く。

柊(しゅう)は、環(たまき)を見る。


「次は――本人が、動く番だ」


「焦りが、必ず次の一手を打たせる」


灯(あかり)が、静かに締めくくる。


「その一手が、自分の名前を、表に出すことになる」


画面に残されたのは、ただの数字。


だがその数字は、もう一つの“真実”を、はっきりと指し示していた。


まだ、名前は呼ばれない。


それでも――


もう、誰の目にも、答えは見えていた。

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